「宇宙の法則を解き明かした瞬間、この世は消えて別のものに置き換わる」
思考の現実化のひとつのパターンだと思います。
パラダイムシフトと言ってもいいでしょう。こうしたことが現実的にあり得ると
科学者が言い出したことは大変興味深いものです。
パラレルワールドの存在も確実
人生は選択の連続だが、あの時に別の選択をした自分がいる“パラレルワールド”はあるのだろうか? 気鋭の理論物理学者によれば、パラレルワールドは確実に存在するという――。
■気鋭の理論物理学者「パラレルワールドは存在する」
SF小説やアニメの設定としてもよく用いられるのが“パラレルワールド”や“並行世界”だが、これは空想の世界だけの存在なのだろうか。
パラレルワールドの“元ネタ”は、1957年に発表されたアメリカの物理学者ヒュー・エヴェレットの論文にさかのぼるといわれる。エヴェレットは「多世界解釈(many-worlds interpretation)」という概念を持ち出し、この世界は刻々と枝分かれして今のこの瞬間にも無数のパラレルワールドが生み出されているのだと説明している。
別の意思決定を下した“自分”が今も別の世界で生きている(死んでしまった可能性もあるが)と考えるのはなかなか愉快なことであるかもしれないが、なにぶんにも“枝分かれ”してしまった世界にいる状態から、パラレルワールドの存在を証明するのは理論上は不可能だ。物証があるとすればそれは“別世界”ではないからだ。
したがってパラレルワールドの有無を考えるのはナンセンスなことで、もしあるにせよ今の自分にはまったく関係しない話ということにもなる。
しかしそれでも、SFやアニメで魅力的なスト―リーが展開されるように、ある時不図、パラレルワールドのことが気になるかもしれない。物証は挙げようがないが、はたしてパラレルワールドは存在するのだろうか。
新進気鋭の理論物理学者の答えは“イエス”だ。米・カリフォルニア工科大学物理学部の理論物理学教授で、これまでに5つの著作を持つショーン・キャロル氏はきわめてシンプルにそう答えている。
昨年9月に出版された著作「Something Deeply Hidden: Quantum Worlds and the Emergence of Spacetime」の中でキャロル氏は、一般的な物理学と量子力学を“統合”する必要はないと示唆している。それはなぜかと言えば、量子力学はこの世の“真実”であるからだという。
「私たちが現在知っている限りにおいて、量子力学は真実に近いものではなく、真実そのものです」(キャロル氏)
“シュレーディンガーの猫”や“2重スリット実験”など、何かと不可解な量子論の世界だが、キャロル氏によれば量子力学の観点に立てばパラレルワールドが存在しなければならないのだという。
「想像した世界が存在するということではありません。(パラレルワールドが生まれるためには)従わなければならない方程式、物理的ルール、パターンがほかにもまだあります。従うことで存在が可能である代替世界(パラレルワールド)が実現します。しかし、そのすべてが生成されるわけではありません」(キャロル氏)
我々がまだ知らない量子論に属するメカニズムで、一定の条件がそろった時にパラレルワールドが形作られるということなのだろうか。ともあれパラレルワールドが存在すると断言している著名な理論物理学者がいるのは興味深い。
■「現代の物理学は立ち往生している」
キャロル氏は現代の物理学は誤った方向へ力を注いでいると指摘している。現在の物理学はビッグバン理論をはじめとするこの宇宙の成り立ちと、一方で自然法則の解明という2つに注視するあまり、この2つを結びつけようとしてばかりで袋小路にはまり込んでいるというのである。
キャロル氏は新しい視点から宇宙論の全体像の問題に取り組むべき時だと主張する。
「物理学は、自然とビッグバンの基本を理解しようとして立ち往生しています。今は一歩後退してその基礎を理解する時です。すなわち量子論の世界の理解に取り組むべき時です」(キャロル氏)
物理学では基本的に何か不可解な現象に対して仮説を立てて検証し物理法則に当てはめようとするのだが、キャロル氏はその態度は正しくないと主張している。現実がどのように“見える”のかが問題なのではなく、どのように“見る”のかが量子論の観点からの問題であるというのだ。
宇宙の成り立ちを研究するのではなく、量子力学の分野の研究を具体的に深めていかなければならないということだ。そして最近の技術的進歩により、不可解な量子論の世界も少しずつではあるが観測が可能になってきていることも追い風になっているという。
ではこうして我々がこの世界と、パラレルワールドについての知見を深めていった暁には何が待っているのだろうか。
「宇宙が何のためにあるのか、そしてそれがなぜここにあるのかを誰かが発見した場合、それは即座に消え、さらに奇妙で不可解なものに置き換わるという理論があります。そしてこれはすでに起こっていると示唆する別の理論もあります」(キャロル氏)
2011年の「TEDトーク」の壇上でキャロル氏は、この宇宙の成り立ちを検証すると、ビッグバンがなぜ起こったのかは説明できないが、何度も起こっていると考えられるという理論を展開している。そして宇宙ははるかに複雑であり、我々が生きている世界はほとんど偶然に近い確率で生まれた領域であるというのだ。
そのような狭隘な場所から宇宙を理解することなど、どだい無理な話であるともいえそうだが、科学者たるものは広大な宇宙に想像力を膨らますのではなく、将来性という点で最も有望である量子力学の研究を地道に積み重ねていくべきであるということが提言されているようだ。それでも、今この瞬間にもパラレルワールドに別の自分が確実に存在していると考えるのは少しばかり“心の支え”になるかもしれない。
参考:「NZ Herald」、ほか
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