過去に行っても歴史は大きく変わらない? バタフライ効果は存在しないことが量子タイムトラベルのシミュレーションで判明
あなたはついに過去へとタイムトラベルする技術を完成させた。期待に胸を膨らませ、過去の世界へ。最初なのでほんの1分ほど過ごして、また現在に戻ってきた。ところがだ。どういうわけかあなたが目にした現在は、それまでのものとはまったく違うものになっていた。
この歴史のバタフライ効果は本当に起こるのか?
ある物理学者が量子コンピューターでタイムトラベルをシミュレーションしてみたところ、バタフライ効果は発生しないらしいことが判明したそうだ。
バタフライ効果とは?
ブラジルの熱帯雨林にいる1匹の蝶が羽ばたいた。それによって生み出されたわずかな空気の揺らぎは、連鎖的な変化を引き起こして、やがてはテキサスで竜巻を作り出した――。
実際に蝶が遠く離れたところに竜巻を作り出すかどうかは分からないが、この話はカオス運動の予測の難しさと初期値鋭敏性を表す寓話として気象学者エドワード・ローレンツが述べたものだ。
こうした力学系のわずかな変化が、その後の状態を大きく変化させる現象のことを「バタフライ効果」という。
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量子コンピューターでタイムトラベルを再現
バタフライ効果は、タイムトラベルものの映画やドラマにもよく登場する。過去に与えたわずかな影響が現在を大きく変えてしまうなんてことが本当にあるのかどうか、今のところ過去に行くことができない私たちには確かめられない。
そこで、ロスアラモス国立研究所(アメリカ)の理論物理学者ニコライ・シニツィン氏らは、それを量子コンピューターのシミュレーションで試してみることにした。「量子コンピューターなら問題なく、時間の進化を逆にシミュレーションできます」と、シニツィン氏は話す。
もちろん私たち人間やその歴史ほど複雑なものではない。それでも相関した量子状態でなる連続したシーケンスは、小さな変化がその後の未来に及ぼす影響を再現する上でかなり有効だ。
量子シミュレーションでタイムトラベル実験 / Pixabay
過去の量子ビットを確定すると現在はどうなるか?
シニツィン氏らが知りたかったのは、不確定な量子(ここでは重ね合わせ状態にある「量子ビット」)にもつれを作り出す相互作用を逆転させ、そこにバタフライ効果のタネを組み込んだら一体どうなるのかということだ。”その後”の未来は”元々”の未来と変わってしまうのだろうか?
具体期にはIBMが開発した量子コンピューター「Q」を使い、論理ゲートにいくつものもつれた量子ビットを通過させ、その現在の結果を確定する。
次いでそれを逆にシミュレーションして過去にさかのぼり、どこかの時点で一部だけを観測。こうすることで過去の量子ビットを部分的に確定してしまう。
もし量子の世界にバタフライ効果があるのならば、再び現在へ向かってシミュレーションしたときに、部分的な変更はさらなら変化を生み、最初の状態には戻らないはずだ。
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量子ビットは未来を保存している
ところが、このシミュレーションの結果、量子の世界ではバタフライ効果などないことが判明したという。
研究グループの推測によれば、量子ビットのもつれた歴史は、すぐに撹乱されてしまうデリケートな変数の集まりなどではなく、正確に未来を保存している。過去への旅が複雑なものになるほど、量子ビットはすでに起きた未来の情報はそのままに、断固として元々の現在へと戻ろうとするのだそうだ。
もちろん、現在の科学では過去に行くことなどできないが、少なくとも未来の人間がタイムスリップし、図らずも歴史を大きく変えてしまう――そんな心配はどうやらいらないようだ。
この研究は『Physical Review Letters』(7月24日付)に掲載された。
マイコメント
これまでの私の考えでは過去に戻り、歴史を変えるようなことをすればその時点で
未来は大きく変わってしまうと思っていましたがそうではないようです。
先日のセミナーでさくやさんが私たちのタイムラインは変わらないと話していましたが
そのことだったと思います。
つまり、過去に戻って未来を変えるようなことをしても、時間の経過とともに修正
され、数年後には今までたどった歴史に戻るということです。
したがって、私たちのタイムラインは過去の影響は受けないということです。
ただし、私たちのタイムラインと違うタイムラインも存在するので、そちらは影響を
受け大きく変化する可能性はあると思います。
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