夢は現実を反映、日常生活の延長上にあることが、アルゴリズムを使った分析で明らかに
夢とは一体何なのか? 人は昔からこの神秘的な現象の意味を知ろうとしてきた。
夢が神や悪魔など、超自然的な存在からのお告げであると考えた文化はいくつもある。たとえば、古代ギリシャでは神々からの信託だとされ、旧約聖書にも神のお告げとして人々が見た夢について触れられている。バビロニアでは夢の解釈法が発達し、またユダヤの法典には夢を解釈する専門家がいたという記述もある。
少し前だとフロイトが、夢は人の内面や体験を反映したものであると考え、深層心理を知る手段としてその分析を試みた。最近では、夢は現実世界で起きたことの延長であるという仮説が一般的だ。
そこでイタリアとイギリスの研究グループは、アルゴリズムを用い、夢に関するこの仮説の検証を試みた。
現実を反映した日常生活の延長としての夢
フロイトが夢には夢を見る人自身が映し出されていると考えたのと同じように、「夢の連続性仮説(continuity hypothesis of dreams)」 でも、夢は現実世界で起きたことの延長であるととらえている。
この仮説によれば、日々の暮らしで経験したことは夢に影響を与え、その反対に夢もまた普段の暮らしに影響を与える。
そのため、自意識を向上させ、潜在的な感情を特定し、あるいは人生における重要な出来事やトラウマに患者が向き合う手助けにするなど、同仮説は心の治療の基礎にもなっている。
アルゴリズムで夢を分析
ローマ・トレ大学とノキア・ベル研究所のグループは、この仮説をアルゴリズムを使って実際に確かめてみようと考えた。
そのアルゴリズムは、24,000を超える様々な人から報告された夢の内容を、そこに使われている言葉に基づいて分析することができる。
夢の中に誰が登場し(登場人物)、どのようなことを行い(社会的相互作用)、それをどのように感じたのか(感情)——これら3要素は、夢の筋書きのバックボーンとなっているために、夢を解釈するにあたって最重要とされる。
そこでアルゴリズムは、夢の記述に使用されている名詞や動詞を検出し、それらが友好的なものか、侵略的なものか調べることで、夢の内容を分析する。
夢にはその人の日常が反映していた
夢が夢を見る人の日常を映し出したものだとすると、女性が見る夢ならば、現実世界と同じように男性よりも友好的なやりとりが多く、侵略的な要素は低い傾向にあることだろう。
あるいは軍人が見る夢ならば、一般人では見られないレベルの侵略的な夢になる傾向があるかもしれない。1960年代のアメリカは高い犯罪率に悩まされたが、こうした状況で暮らしていた人たちなら、やはり侵略的な夢を見たのではないだろうか?
開発されたアルゴリズムで、夢バンクに登録されている24,000を超える夢(1930年代から2017年までに集められたもの)を分析したところ、予想通り、こうした夢の連続性を裏付ける証拠が得られたという。
「ほとんどの夢の報告は、夢を見た人が現実で体験した可能性が高いこととひと続きになっていることを発見した」と、『Royal Society Open Science』(8月26日付)に掲載された研究では述べられている。
最近、悪夢ばかりだという人はいるだろうか? それはもしかすると、日々の生活を少し変える必要があるという夢のお告げなのかもしれない。
Our dreams, our selves: automatic analysis of dream reports | Royal Society Open Science
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.192080
References:iflscience / sciencealert/ written by hiroching / edited by parumo
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