残念なお知らせ。タイムトラベルで過去を変えても未来は修正されない(オーストラリア物理学者)
もしタイムトラベルで過去に戻り親を殺したら・・・
現在の自分は過去の積み重ねである。過去に干渉すれば現在や未来が変わっていくと考えるのが普通だろう。だがここで矛盾が生じる。
もしタイムトラベルで過去に戻って自分の親を殺したらどうなるのか?親がいなければ、自分はこの世に生まれていない。生まれていないなら、タイムトラベルだってできないことになる。
この矛盾は「親殺しのパラドックス」といい、かねてより議論されてきた。ある人が過去に戻ってそのタイムトラベルを不可能にするよう行動したとしたらどうなるのか?
オーストラリアの物理学者はこの矛盾に数理物理学を使って答えを導き出した。結論から言えば、過去を変えても未来は自動修復されてしまうという。
親殺しのパラドックス
「親殺しのパラドックス」は、タイムトラベルにまつわるパラドックスで、SF作家のルネ・バルジャベルが著作「Le Voyageur Imprudent(軽はずみな旅行者)」(1943年)で描いたものだ。
英語では 「grandfather paradox(祖父のパラドックス)」と呼ばれており、「ある人が時間を遡って、血の繋がった祖父を、祖母に出会う前に殺してしまったらどうなるか」というものである。
そうすると、タイムトラベラーの両親のどちらかが生まれてこないことになり、結果として本人も生まれてこないことになる。
ということは、存在しない者がタイムトラベルをできるはずがなく、祖父を殺すこともできないから祖父は死なずに祖母と出会い、彼が生まれる。
すると、やはり彼はタイムトラベルをして祖父を殺すと、堂々巡りになってしまうという論理的パラドックスだ。
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過去を変えても、未来は元通りに自動修復される
『Classical and Quantum Gravity』(9月21日付)に掲載された研究でも、この親殺しのパラドックスが扱われている。
オーストラリア・クイーンズランド大学の物理学者によれば、過去を変えてもその後の出来事によって修正されてしまうという。要するに、過去で何かをしても、その後の歴史は変わらないというのだ。
一般相対性理論は「時間的閉曲線」を予言している。それによると、出来事は同時に過去と未来に存在することができ、物体は時空をループすることで出発した時点に戻ってくることが可能なのだという。
つまり理論上、観測者は過去へ戻り、過去に干渉することできるということになる。ゆえに親殺しのパラドックスは、ただの思考実験というわけではない。
ジャーメイン・トバー氏らは、このパラドックスを解決するために「ビリヤードボール・モデル」を利用した。このモデルは、因果関係をぶつかり合うビリヤードの球に、円形のビリヤード台を時間的閉曲線にたとえたものだ。
あなたが円形の台の上にある球を1つ突いたとする。すると球は勢いよく転がり、特定のパターンでほかの球と衝突するだろう。
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もし、どこかのタイミングでこの球に干渉して進路を乱してやったとしたらどうなるのか?
トバー氏らの計算によれば、ほかの球との衝突によっていずれは元の進路に修復され、やがては同じ位置と速度に戻るのだという。結局、あなたの干渉などなかったことになる。
過去に戻っても、未来が変わるほど重大な変更はできない
このモデルが示しているのは、過去にタイムトラベルできたとしても、未来が変わってしまうほどに重大な過去の変更はできないということだ。
親殺しのパラドックスについて言うなら、あなたが過去で親を殺そうとどんなに頑張ったところで、何らかの邪魔が入り、親は絶対に助かるということになる。
例えばコロナパンデミックについてトバー氏はこのようにコメントする。
感染者が出ないよう食い止めようとします。ところが、そのせいで、その人は感染してしまうわけです。あるいはゼロにできたとしても、ほかの人が感染するでしょう
なんかもう、運命の定めに従うしかなさそうだ。過去のことは振り返らず、未来へ向けて今何ができるかを考えた方が得策なのかもしれない。
タイムリーにも私は今、「東京卍リベンジャーズ」というタイムスリップ系漫画にハマっているのだが、主人公が中学時代に何度も戻って過去の修正を試みており、まだ連載中なのでどうなるかはわからないが、できることならフィクション作品では、明るい未来に変更されることを望む今日この頃の私なんだ。
Reversible dynamics with closed time-like curves and freedom of choice – IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6382/aba4bc
References:fox5ny / indiatimes/ written by hiroching / edited by parumo
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