中国の強力な「健康コード」の使い方 スマホ持たない高齢者トラブルも勃発
健康コードでリスクを表示する色は緑色、黄色、赤色の順
スマホを利用して個人の健康状態、行動情報を入力すると、さまざまなデーターベースと照合され、感染リスクの大小が3段階で表示されるツールだ。ユーザーは地下鉄やバスに乗る時、商業施設に入場する時、健康コードを提示し、感染リスクのあるユーザーは制限される。
ところで、市中ではこの健康コードをめぐって予期せぬ事態が起きている。高齢化が進む中国では65歳以上のネット普及率が1ケタ代で、スマホを所持していない高齢者も多い。このような中、駅員やバスの運転手との間でトラブルになるケースが増えているのだ。
スマホで感染リスクを証明 健康コードは政府が開発し、今年2月に浙江省杭州市が初めて提供し、その後急速に中国全土に普及した。 まず、スマホにインストールされているメッセンジャーアプリのウィーチャット(微信)やアリペイ(支付宝)を通じて健康コードにアクセスする。
登録方法は身分証で本人確認を行った後、健康に関するいくつかの質問に答えて自己申告する。質問項目は、「健康状態に異常がありますか」、「過去14日以内にウイルス感染者もしくは感染の疑いのある人に接触しましたか」、「家で隔離中ですか」などで、中国語のほか英語、日本語、韓国語にも対応している。
この自己申告に基づいてアプリに搭載されているAIで政府が保有するデータやデーターベースと照合して分析して、リスクを緑色、黄色、赤色の
QRコードで表示する。緑色は「感染リスクがない」、赤は「感染のリスクがある」、黄色は「現在、隔離中」で、感染発生の(国・地域)から来たばかり人のスマホには黄色のQRコードが表示される。
健康コードはどのように使われているかというと、地下鉄、公共バスに乗車する時、オフィスビルや商業施設に入る時、ホテルに宿泊する時などに入り口に設置された読み取り機にスキャンして提示しなければならない。機械のないところでは警備員に見せて確認してもらう。
この時、QRコードが緑色の人はそのまま入場できるが、赤や黄色の人は入場できない。 政府は健康コードのダウンロードは任意というが、事実上、これらの施設に入場するとき健康コードの提示は必須になっており、提示しないと駅員やバス運転手、場合によっては他の乗客にとがめられて入場できないことになる。
公民身分証の個人情報から接触者追跡
公民身分証というのは、中国が発行している統一の身分証明書で、そこに書かれている18桁の数字はすべての中国人が誕生した時に与えられるもので終生変わらない。番号を決めるのは戸籍を管理する公安(警察)で、戸籍登録地、住所地、性別などから決める。 中国人が社会生活を行う時、公民身分証が使われる場面は実に多い。
銀行で口座開設するとき、飛行機や高速鉄道の切符を購入するとき、搭乗・乗車する時、納税のとき、また家の賃貸契約時など様々な場合で利用されており、1枚のカードに個人の公的サービス利用履歴、購入履歴が吸い上げられているといえる。
コードが提出できずバスに乗れない高齢者
ところで、健康コードに関連して中国のポータルサイト「百度」に次のような記事が掲載されていた。
今年7月下旬、遼寧省大連市で地下鉄に乗車しようとした一人の高齢者が、駅員に健康コードの提示を要求されたが、何のことかわからず、「健康コードとは何ですか。あなたからもらっていませんし、どこからももらっていません」と答え、再度要求する駅員との間で押し問答になった、という。
これより前の3月には江蘇省でバスに乗車しようとした何人かの高齢者がスマホをもっておらず健康コードを提示できなかったため、バスに乗れなかったという出来事が起こっている。この時、別の人がスマホをもっていたが、健康コードの表示方法がわからなかった。それを見た乗客の一人の高齢の女性が助け舟を出したが、長い時間かかっても登録が完了できず、その間約20分間バスは停まったまま。
他の乗客はついに我慢の限界がきて、バスの発車を遅らせる原因をつくった当の高齢者に罵声を浴びせ始めた。最後にその人はよろよろとバスから下車したという。 ちなみにホテルにチェックインする時にも健康コードの提示が求められる。8月27日付のインターネットの封面新聞によると、四川省自貢市に旅行で訪れた75歳を含む高齢者30数名のグループがフロントで健康コードを提示できず、ホテルはチェックインができなかった。ホテルの規約では健康コードの提示があって初めてチェックインの手続きをすると定められているからである。しかし、気分を害した客とホテルとの対立が延々と続き、ホテル側はやむをえなく派出所に助けを求めた。
世代間普及率の格差 紙の証明書を検討?
警察官がホテルに駆けつけたところ、ロビーには旅客たちが集まっていた。警察官が聞いてみると、高齢者たちは健康コードが何かということがよくわからず、スマホすらもっていない人もいた。警察官は旅客たちに健康コードについて穏やかに説明し、現場を鎮静化する一方で、警察の管理・専門部門で、社会の安定や住民の安寧などのを扱う「公安大队」に連絡して相談した。
まもなく「公安大队」の協力の下に、観光局や疾病管理センターなど関係部門に連絡をとり、健康コードを登録できなかった旅客の足取りを審査。10分後にすべての旅客の審査が終了した。
ホテルはチェックインの手続きをすぐに開始した。当の警察官たちはホテル側と客から感謝されたとのことだ。
若年層と高齢者のネット普及率の格差大
2019年の中国国家統計によれば、中国のインターネット人口は約9億人、インターネット普及率は64.5%に達している。残り35%に相当する5億人がまだインターネットを利用していない。また、中国では高齢者が増えており、60歳以上の人口が2億5000万人で、全人口の18%を占める。
しかし、高齢者のインターネット普及率は若年層に比べて非常に低く、10代から40代のネット普及率が90~100%に対して、55歳~64歳が20%台、65歳以上では8%台にとどまる。(2018年知研コンサルタント会社) 健康コードの提示が事実上義務化されるようになってから、高齢者が通院や買い物などで外出する時にトラブルに巻き込まれるケースが増えている。
先の百度の記事で紹介したバスから降ろされた高齢者に対して、市中からは同情の声が高まっており、「健康コードに代わる、紙の健康証明書を提示するようにしたらどうか」という代案も挙がっているという。
海外からの渡航者のため健康コード国際版の運用
一方、海外からの感染リスクを防ぐために、健康コードの国際版「防疫健康コード国際版」(ウィーチャットミニプログラム)が開発運用されている。中国行き飛行機に搭乗する乗客はウィ―チャットミニグラムを通じてオンライン申請により健康コードを取得し通関手続きを行わなければならない(7月29日中国政府告示) 登録内容は、氏名、パスポートナンバー、搭乗便名、連絡先などの情報のほか、いくつかの健康に関する質問に答える。
質問は、「14日以内にウイルス感染者や疑いのある人に接触したか」、「発熱、呼吸道に異常がある患者に接触したか」、「職場や家庭で発熱、呼吸道に症状がある人が二人以上でたか」、「発熱、咳、喉の痛み、頭痛などの症状があったか」、「コロナウイルス感染検査を受け、陰性結果が出たか」などだ。
なお、海外から中国へ渡航する際の感染防止のアナウンスメントは変更になることもあるので、搭乗前に航空会社のHPをチェックされたい。
廣田壽子
マイコメント
日本ではまだこのような健康コードの導入がされていないが、マイナンバーカードの早期普及を
図ろうとする政府の狙いもおそらくここにあることだろう。
お隣韓国では非常に厳しく、コロナウイするに感染して隔離中に無断外出などの違反が発覚
した場合、行動把握のために電子リストバンドを装着する施策をとっています。
電子リストバンドは、GPS内蔵のスマートフォンのアプリと連動し、スマートフォンと一定の
距離が離れたり、バンドを傷つけたりすると、管理者に自動的に通知される方式です。
あまり知られてないが、韓国は日本以上に国民の監視が進んでいる国です。
ある意味、日本はまだその規制は緩いということです。
今後の日本での導入はどうなるかは不明ですが中国や韓国、オーストラリア、シンガポール
ではすでに同様のシステムが稼働していることを知っておいてもいいだろう。
しかし、これらの事実から不安に陥ることでではなく知っておくことで拒否することも
対策として可能であることを認識しておくべきです。
コメント