太陽光を必要としない新しいソーラーパネルって?「紫外線を可視光に変換」
新しいソーラーパネル
クリーンエネルギーの要であるソーラーパネルには、1つの大きな欠点があります。太陽光が雲に遮られることで、生産性が大幅に低下してしまうのです。
ところが最近、フィリピン・マプア大学電気工学部の学生Carvey EhrenMaigue氏は、可視光に依存しない新しいソーラーパネルを作成し、James Dyson Sustainability Award(ジェームズ・ダイソンの持続可能性賞)を受賞しました。
その新しいシステムでは、最初に紫外線が可視光に変換され、次いでその可視光がエネルギーへと変換されるとのこと。
新しいソーラーパネルに含まれる2つの変換
新しいソーラーパネルのシステムは、AuREUS(Aurora Renewable Energy and UV Sequestrationの略)と呼ばれており、2つの変換が行われるようになっています。
1つ目は、UV光(紫外線)の吸収と変換です。これはソーラーパネルに含まれる有機発光粒子によって行われます。
有機発光粒子は果物や野菜の作物廃棄物から作られたものであり、これを樹脂と混ぜることで、紫外線を吸収し可視光へと変換するプレートになるのです。
EhrenMaigue氏によると、このメカニズムは「私たちが酸素を吸い込んで二酸化炭素を吐き出す方法に似ています」とのこと。
そして2つ目の変換は、可視光のエネルギー変換です。
この変換は通常のソーラーパネルと同じメカニズムであり、薄いソーラーフィルムによって可視光を電気エネルギーに変換してくれるのです。
2つのメカニズムを組み合わせることで、全体として紫外線を電力へ変換できるというわけです。
柔軟かつ透明で、曇りでもエネルギーを生む
太陽光は、紫外線、可視光、赤外線などの様々な波長の光によって構成されています。そして一般的なソーラーパネルは主に可視光によって発電します。そのため、曇りでは極端にエネルギー生産率が落ちるのです。
しかし、新しいソーラーパネルは曇りでも太陽から注がれている紫外線で発電できます。
しかもこのソーラーパネルは防弾ガラスに使用されるのと同様の樹脂で製造されており、頑丈で柔軟かつ半透明です。そのため、窓や建物の外壁にも利用可能とのこと。
そして実際にEhrenMaigue氏が行ったテストでは、窓に設置した90cm×60cmから1日当たり携帯電話2台を充電するのに十分な電力が得られました。
EhrenMaigue氏によると、これをスケールアップさせるなら「建物全体の電力を生成できるようになるかもしれない」とのこと。
また素材の高い柔軟性により様々な形に対応させることができます。効率を低下させることなく、湾曲した部位や複雑な形状の場所に設置できるのです。
この利点はクリーンエネルギー生産と建築の芸術性を両立させるものとなるでしょう。
今後、彼は新しいソーラーパネルを大規模に使用したテストを行う予定です。
最初のテストは、フィリピン本土からボートで4時間離れた離島の診療所で行われます。嵐により電力供給が途絶えた場合でも、診療所としての機能を保たせることを目標としているようです。
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