グレートバリントン宣言が当局から完全に無視されても、米スタンフォードの医学博士は主張し続ける。「ロックダウンは害悪でしかない」と
宣言は風のように抜けていってしまったけれど
欧米の医師や科学者たちが、ロックダウンを止めるようにと提言した「グレートバリントン宣言」にふれたのは、10月の以下の記事でした。
もうコロナは終わることがない事態へと : ヨーロッパの各国でパンデミック開始以来最大の新たな感染者数を記録中。その中で良心ある科学者たちは封鎖の停止を訴え続ける
投稿日:2020年10月10日
6000人以上の科学者と医師がロックダウン停止請願書に署名し、その後、一般市民を含めて、8万人以上の署名が集まったはずですが、結果として、この提言は、
「まったく当局に届かなかった」
ことになります。
それどころか、ヨーロッパの各国は、その後、二度目、三度目のロックダウンを繰り返すという状況になっており、科学者たちの真摯な嘆願は無視されたようです。
先日、グレートバリントン宣言の中心的存在のひとりである米スタンフォード大学医学部教授で感染症疫学者のジェイ・バタチャリャ (Jay Bhattacharya)博士が、米メディアに記事を寄稿していました。
それはグレートバリントン宣言の内容と同じことで、「ロックダウンが及ぼす被害はあまりにも大きなものだ」ということを述べているものでした。
もはや何を言っても当局もメディアもこのような主張に振り向くことはないでしょうが、今回その記事をご紹介させていただこうと思います。
その後に、「グレートバリントン宣言」そのものの日本語訳もご紹介します。
なお、なぜ、
> 当局もメディアもこのような主張に振り向くことはない
と断定できるかというと、「すでにロックダウンを行った」からです。
すなわち、今から「あれは間違いだった」と述べることは、自らの政策を否定することになり、飛び飛びとはいえ、10ヶ月近くもロックダウンを続けてきた欧米の国や地域の当局者がそのこと自体を否定することは考えられません。
「最後」まで、ロックダウンの正当性は主張され続けるはずです。
ここからです。
なお、バタチャリャ博士のこの記事では、ロックダウンにより生じた被害の報道やデータを非常に細かくリンクしとていますが、そのうちの重要なものに関しては、オリジナルと同じにリンクさせていただいています。
すべて英語ですが、こちらの過去記事「サバイバル時代の情報取得のために : 英語などの外国語ウェブサイトをそのまま日本語で読む方法」などご参照にご覧いただくのもよろしいかと思います。
恐れではなく「事実」がパンデミックを食い止める
Facts – not fear – will stop the pandemic
The Hill / スタンフォード大学医学部教授 ジェイ・バタチャリャ 2020/12/03
メディアは今もコロナウイルスに対してのネガティブなニュースを好んでいる。ニュースでは、毎日ウイルスの蔓延を強調し続け、その犠牲者たちの何人かの悲しい話を伝えている。
しかし、多くのメディアは、コロナウイルス患者の治療が改善していることや、感染した場合の死亡率の改善などの良いニュースに十分な注意を払っていない。アメリカのマスコミは、良いニュースがあったとしても、COVIDの報道において容赦なく否定的な面だけを伝えている。そのネガティブ性は、アメリカの地方、州、連邦の政治家たちと彼らが下す決定に影響を与える恐怖の文化を煽るものの一部だ。
現実には、伝えるべき良いニュースはたくさんある。
コロナウイルス感染症の致死率は 3月以来大幅に低下しており、感染した患者たちの生存率は、70歳以下で 99.95%、70歳以上の高齢者でも 95%だ。人工呼吸器の方法論や外来患者の管理と新しい治療戦略の救済により、治療のための装備や状況は改善し続けている。さらに、世界中で進行中の複数の臨床試験のおかげで、安全で効果的なワクチンが間もなく登場する可能性がある。
メディアがコロナウイルスによる死亡に焦点を当てているのとは対照的に、パンデミックを遅らせるために使用されているロックダウン(封鎖)による莫大な医学的および心理的危害にほとんど注意を払っていない。
ロックダウンで、莫大な巻き添え被害が引き起こされたにもかかわらず、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、その他のヨーロッパ諸国はすべて、再びロックダウンを強化している。
ここ数ヶ月でアメリカの社会と市民生活は、ロックダウンの言葉に象徴されるようになってしまった。閉鎖された学校や大学、閉鎖された遊び場や公園、静かな教会、破産した店や企業が普通の光景となってしまっているのだ。
ロックダウンによって失われた命は COVID 感染によって失われた命と同じくらい重要であり、ロックダウンによって引き起こされた危害についての報告が相対的に非常に少ないことは奇妙だ。メディアは、ロックダウンによる被害や危害についてほとんど注目していない。
ロックダウンによる被害は壊滅的だった。
心理的な危害を考慮してみてほしい。この記事を読んでいる多くのアメリカの人たちは誰でも、間違いなく、社会的相互作用のための典型的な人との繋がりが断ち切られることにより、これらの政策が引き起こす可能性のある孤立と孤独に関係している可能性がある。
今年 6月、米疾病予防管理センター(CDC)は、アメリカの若年成人の 4人に 1人が自殺を真剣に考えたと報告した。オピオイドおよびその他の薬物関連の死亡は、驚くべき上昇傾向にある。
これらのロックダウン政策の負担は、最も脆弱な人たちの間に理不尽にのしかかっている。
たとえば、ロックダウンでの隔離により、高齢者の認知症関連の死亡が 20%増加したことが報告されている。さらに、アメリカでのロックダウンに関する遡及的分析では、ガン検診をおこなう人たちが減り、小児期の予防接種を受けられない人たちが増加し、糖尿病管理のための訪問が減り、さらには心臓発作の治療さえも飛ばされたことが報じられている。
国際的には、ロックダウンにより 1億3000万人が飢餓の危機に瀕しており、8000万人の子どもたちがジフテリア、はしか、ポリオのリスクにさらされ、180万人の結核患者たちが死亡のリスクにさらされている。
先進国でのロックダウンは、貧しい国の貧しい人々を荒廃させている。世界銀行は、ロックダウンが推定で 1億5000万人々を極度の貧困に追いやる可能性があると伝えている。
メディアには、コロナウイルスについてバランスの取れたアプローチが必要だ。そうでなければ、一般の人々は、学校の閉鎖など、COVID の方針について情報に基づいた選択をすることができなくなってしまう。
ロックダウンを続けることの意味について、市民たちが情報に基づいた選択と判断を行うことができるように、メディアは、ロックダウンの意味と被害の両方の情報を示す義務がある。
COVIDに対しての良いニュースを無視するとパニックと恐怖が生まれるが、これは公衆衛生戦略として良いものではない。国民は、パンデミックが永遠に続くわけではないことを知るべきだ。
今は困難な時代であり、多くの家族にとって、人生が変わってしまったような時代だが、人類の歴史における他のすべてのパンデミックと同様に、COVID-19 パンデミックは終わる。
賢明で情報に基づいた政策の選択により、私たちはその最終的な死者数と人間の悲惨さを減らすことができるはずだ。
ここまでです。
グレートバリントン宣言は、現在、ウェブサイトで、43カ国語で掲載されています。
もちろん、日本語版グレートバリントン宣言のページもあります。
そこに少し手を加えたものをご紹介します。内容そのものは同じですが、口調をソフトに変えています。
ここからです。
グレートバリントン宣言
私たちは感染症疫学者および公衆衛生科学者として、現行の新型コロナウイルス政策により人々の身体的および精神的健康が害されることを深刻に懸念しています。そのため、ここに、「集中的保護」という手法を提言します。
様々な場所、そして世界中で、私たちは人々を守るために専門性を捧げてきましたが、現行のロックダウン政策は、短期的および長期的公衆衛生に破滅的影響を与えます。
その結果として(ごく一部の例を挙げれば)、子供の予防接種率の低下、心疾患の状態の悪化、がん検診の減少、および精神衛生の悪化などがあり、以後何年にもわたって、過剰死亡率が上昇し、労働者階級や社会の若者たちが最も重い負担を負うことになります。学生たちを学校に行かせないのは重大な不正義です。
ワクチンが利用できるようになるまでこれらのロックダウン政策を実施し続ければ、修復不能な損害となり、特に貧しい人々が不平等に被害を受けることになるのです。
幸い、私たちはウイルスに対する理解を深めています。
新型コロナウイルスによる死亡に対する脆弱性は、若者に比べて、高齢者では 1000倍高くなります。事実、子供たちにとっては、新型コロナウイルスはインフルエンザなどの他の多くの脅威に比べ危険度が低いのです。
人々の間で免疫がつくにつれて、ウイルスに対する弱者も含め、社会全体の感染リスクは下がります。すべての集団において、最終的には集団免疫を獲得する(つまり新規感染率が安定する時期に到る)ことは周知のことであり、これはワクチンにより補うことができます(ワクチンに頼るという意味ではありません)。
集団免疫を獲得するまでの間、死亡率と社会的損害を最小限にすることを目標にすべきです。
集団免疫を獲得する利点と欠点のバランスをとる最も思慮深い方法としては、死亡リスクが低い人々には普段の生活を許可して、自然感染を通してウイルスに対する免疫を獲得する一方で、リスクが最も高い人々を保護するのがよいでしょう。私たちは、これを「集中的保護」と呼びます。
ウイルスに対する弱者を保護する対策をとることは、新型コロナウイルスの公衆衛生対策の重点項目であるべきです。
例として、老人ホームでは獲得免疫をつけたスタッフを雇い、その他のスタッフや訪問者には頻繁に PCR 検査を実施します。また、スタッフの入れ替わりは最小限にします。
自宅に住む退職者などの高齢者たちは、食料品やその他の生活必需品を配達してもらうことが望ましいです。可能であれば、家族との面会も室内より屋外で行うようにしたほうがいいでしょう。
包括的で詳細な(複数の世代からなる家庭での対策を含む)対策方法リストを実行するのもよく、それは公衆衛生専門家の監修のもとで行うのが望ましいでしょう。
ウイルスに対する弱者ではない人々は、即急に普段の生活に戻るべきです。
手洗いや風邪をひいたときの自宅待機などの簡易的な衛生対策を社会全体で行うことで、集団免疫しきい値を下げることができます。学校や大学は開校して対面授業を再開すべきです。スポーツなどの課外活動も再開すべきです。
リスクが低い若い成人たちは自宅からのオンラインではなく、通常通りに働くべきです。レストランやその他の商売も再開するべきです。美術、音楽、スポーツなどの文化活動も再開すべきです。
リスクが高い人々も希望すればこれらの活動に参加してもよいでしょうが、社会全体としては、集団免疫を獲得することによりウイルスに対する弱者を保護するのがよいでしょう。
本宣言は2020年10月4日に米国グレートバリントンにて以下の3名により記述、署名された。
マーティン・クールドルフ博士
ハーバード大学医学部教授、生物統計学者および感染症疫学者
スネトラ・グプタ博士
オックスフォード大学教授、感染症疫学者
ジェイ・バタチャリャ医学博士、博士(経済学)
スタンフォード大学医学部教授、医師、感染症疫学者、医療経済学者および公衆衛生政策専門家
ここまでです。
まったくこの通りだと思うのですけどね。学校、会社、娯楽、音楽、スポーツ、飲食を閉鎖する意味がわからないです。
以下は、最も厳しいロックダウンを続けているイギリスの 7月からの感染確認数の推移ですが、「ロックダウンするたびに感染確認数が増えている」ことが明確に示されています。
Daily New Cases in the United Kingdom
英国の新規感染者、最多更新 ロックダウン実施も変異株拡大、歯止め利かず
英政府は12月31日、新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者が5万5892人に上ったと発表した。29日発表分の5万3135人を抜き過去最多を更新した。
国内の広範囲でロックダウン(都市封鎖)を実施しているが、従来よりも感染力が強いとされる変異株の拡大に歯止めがかかっていない。累計感染者は約249万人となった。 (毎日新聞 2021/01/01)
ここには「歯止めがかかっていない」とありますが、それどころか、上のグラフを見ていてもわかる通り、ロックダウンが状況を悪化させていることは明らかです。
それでも、先ほども書きましたけれど、ここまできてロックダウンの正当性を否定することは当局が自らを否定することになるので、この状態は続きそうです。
日本でも「東京都と首都圏3県 緊急事態宣言の要請」という報道がありましたが、このようなヨーロッパ各国の数値の推移を一度冷静に見てほしいと思います。社会の閉鎖には害しかないことを考えてほしいと思います。
イギリスのようにほぼ完全なロックダウン下で、ほとんど誰も外に出られない状態でも、ものすごいペースで感染拡大が続いているわけです。
つまり、社会を閉鎖することは感染拡大抑制にまったく意味がないか、あるいは逆効果しかないということを、当局が認識していただければなと思うのですが。
春の緊急事態宣言で日本の感染者数が減少した理由は、気温が上昇したというだけです。今はそういう季節ではないですので、同じようにはなりません。
マイコメント
日本でも明日以降、関東4県による緊急事態宣言要請を受け何らかの自粛要請が取られると
思いますが、今回紹介したInDeep氏の記事にあるように感染抑制にはつながらず、逆に
経済的困窮による自殺者を増やす結果となってしまいます。
それにしても、小池知事の政府攻略の度が過ぎるような気がします。
彼女はおそらく東京を経済的に沈下させたいのかもしれません。
二階氏とも仲が良いようなので隠れ親中派かもしれないですね。
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