ワクチンを接種すると感染増強抗体が産生される
大阪大学
日本医療研究開発機構
研究成果のポイント
新型コロナウイルスに感染すると、感染を防ぐ中和抗体ばかりでなく、感染を増強させる抗体(感染増強抗体)が産生されることを発見した。
感染増強抗体が新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の特定の部位に結合すると、抗体が直接スパイクタンパク質の構造変化を引き起こし、その結果、新型コロナウイルスの感染性が高くなることが判明した。
感染増強抗体は中和抗体の感染を防ぐ作用を減弱させることが判明した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者では、感染増強抗体の高い産生が認められた。また、非感染者においても感染増強抗体を少量持っている場合があることが判明した。
感染増強抗体の産生を解析することで、重症化しやすい人を検査できる可能性がある。また、本研究成果は、感染増強抗体の産生を誘導しないワクチン開発に対しても重要である。
概要
大阪大学の荒瀬尚教授を中心とした微生物病研究所・蛋白質研究所・免疫学フロンティア研究センター・感染症総合教育研究拠点・医学系研究科等から成る研究グループは、COVID-19患者由来の抗体を解析することにより、新型コロナウイルスに感染すると感染を防御する中和抗体ばかりでなく、感染性を高める感染増強抗体が産生されていることを初めて発見しました。本研究成果は2021年5月24日(月)に米国科学雑誌Cell誌に掲載されました。
研究の背景
新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合部位(RBD)*1に対する抗体は、ヒトの受容体であるACE2*2との結合を阻害することにより、新型コロナウイルスの感染を抑える中和抗体として重要な機能を担っている(図1)。実際、最近の様々な変異株が中和抗体の認識部位に変異を獲得したことから、抗体がウイルスの排除に非常に重要な機能を担っているために、ウイルスが中和抗体に認識されない変異を獲得したと考えられる。一方、COVID-19患者においては、中和抗体以外にスパイクタンパク質に対する多くの抗体が産生されるが、これまでそれらの抗体の詳細な機能は明らかでなかった。
前述の通り抗体はウイルス感染防御に重要な機能を担う一方で、
ウイルスに対する抗体によって感染が増悪する現象が知られており、
その現象は抗体依存性感染増強(ADE)*4と言われている。
ADEはデングウイルス等で知られており、一度デングウイルスに感染した後、異なる型のデングウイルスに感染すると、最初の感染によって産生された抗体によって重症化する場合がある。また、コロナウイルスの一つである猫伝染性腹膜炎ウイルスにおいても、ウイルスに対する抗体が増悪因子になることが報告されている。これらの抗体による感染増強には、ある種の免疫細胞が発現しているFc受容体が関与していると考えられてきた。すなわち、ウイルス粒子に結合した抗体が細胞のFc受容体に結合すると、Fc受容体を介してウイルス感染が引き起こされる。しかし、これらのFc受容体を介した感染は、Fc受容体を発現した特定の免疫細胞に限定されるため、体の中の多くの細胞の感染にはあまり関与していないと考えられてきた。
ウイルスに対する抗体によって感染が増悪する現象が知られており、
その現象は抗体依存性感染増強(ADE)*4と言われている。
ADEはデングウイルス等で知られており、一度デングウイルスに感染した後、異なる型のデングウイルスに感染すると、最初の感染によって産生された抗体によって重症化する場合がある。また、コロナウイルスの一つである猫伝染性腹膜炎ウイルスにおいても、ウイルスに対する抗体が増悪因子になることが報告されている。これらの抗体による感染増強には、ある種の免疫細胞が発現しているFc受容体が関与していると考えられてきた。すなわち、ウイルス粒子に結合した抗体が細胞のFc受容体に結合すると、Fc受容体を介してウイルス感染が引き起こされる。しかし、これらのFc受容体を介した感染は、Fc受容体を発現した特定の免疫細胞に限定されるため、体の中の多くの細胞の感染にはあまり関与していないと考えられてきた。
そこで、本研究では、COVID-19患者で産生される抗体の機能を解明するために、COVID-19患者の免疫細胞からクローニングされたスパイクタンパク質に対する抗体遺伝子をヒト細胞に発現させて用意した76種類のスパイクタンパク質に対する抗体の機能を詳細に解析した。
その結果、今までに知られていたFc受容体*5を介した抗体依存性感染増強とは全く異なり、
ウイルス粒子に結合するだけで感染性をFc受容体非依存性に高める抗体が存在することが
明らかになった。
その結果、今までに知られていたFc受容体*5を介した抗体依存性感染増強とは全く異なり、
ウイルス粒子に結合するだけで感染性をFc受容体非依存性に高める抗体が存在することが
明らかになった。
マイコメント
簡単に言うと、コロナワクチンはコロナウイルスを防御する中和抗体も産生するが、
同時に感染をさらに悪化させる感染増強抗体も産生することがわかったというものです。
このことはこれまでにも多くの研究者によって指摘されてきたことですが、今回の
記事は日本で行われた研究であるのでその確実性は高いと言えます。
つまり、今年の冬にもしインフルエンザが流行したりすると防御できなくなり重篤化
するケースが相次ぐということです。
コロナに対しては中和抗体が働くので少しは緩和されるが、症状が長引けば悪化すると
いうことになります。
こんなこと今頃ワクチン接種が進んでいる段階で言われても困惑するばかりだろう。
少なくともワクチン接種前からわかっていたことだったので、国民に周知しその上で
ワクチン接種を選択するよう注意しておくべきだったものと思います。
ワクチン接種者は今年の冬は体力を温存し出来るだけ出歩かない方が良いようです。
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