姑息な自公政権。財務省が返せぬ6千億円の借金を自賠責保険料に上乗せの卑劣
自動車やバイクの所有者に加入が義務付けられている自賠責保険ですが、到底納得できない理由で値上げされることをご存知でしょうか。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、理不尽極まりない保険料引き上げの裏事情を誌上で公開。さらにその決定を「密室」で行った自民党と公明党を強く批判しています。
リセット感と大臣折衝
年が明けてお正月を迎えると、昨年までの嫌な出来事、悪い出来事が全て自動的にリセットされ、まっさらな気持ちで新たにスタートを切ったような気分になります。特に今年の場合、日本だけは不思議なことに新型コロナの感染拡大が少し落ち着き気味なので、感染爆発の最中に迎えた昨年のお正月と比べると、この「リセット感」もひとしおです。
しかし、多くの人々が覚えるこの「リセット感」を利用して、国民など二の次の我田引水の悪政を続けて来たのが、今の自公政権なのです。
2019年10月、当時の安倍政権は、消費税率を8%から10%へ強引に引き上げ、その分、バーターで大企業へ優遇措置をバラ撒き、ようやく回復の兆しが見えて来た庶民生活を泥沼へと引きずり戻しました。しかし、安倍政権にとっては、夏の参院選が終わり、あと少しで年が改まるというこのタイミングでしか、国民の批判を買う政策を強行するチャンスがなかったのです。
そして、年が明けて2020年を迎えたとたんに新型コロナが始まったため、安倍政権は景気悪化の原因を全て新型コロナに転嫁し、消費税増税という根本原因を国民の記憶から忘却させることに成功したのです。これが、年が改まることによる「リセット感」の効果です。
今回も、アベスガ政権の「やってるふり政治」を見事に踏襲した岸田政権は、昨年12月6日から僅か16日間しか開催しなかった臨時国会の大半を「クーポン券だ」「現金だ」と、多くの国民にとってはどうでもいい公明党の公約などのために無駄遣いしました。そして、目の前に山積された重要課題は片っ端から先送りしたくせに、過去最大の35兆9,895億円という補正予算だけはちゃっかりと強行採決し、逃げるように21日に閉会しました。
これほど自公政権が好き放題できるのも、年が改まれば多くの国民が「リセット感」によって、自公政権の悪行三昧を「過ぎ去ったこと」にしてしまうからです。しかし、自公政権の真の悪質さが分かるのは、この臨時国会ではなく、臨時国会の閉会直後なのです。国会の審議は議事録が残りますし、映像もアーカイブされるので、後から確認することができます。しかし、閉会後の閣僚同士の協議は、詳細を確認することができません。それが「大臣折衝(だいじんせっしょう)」です。
国会議員の仕事は、国民から徴収した税金を正しく再分配することなので、国会では「予算委員会」が行なわれます。今回の臨時国会の「予算委員会」では、過去最大の約36兆円もの補正予算が、自公政権の数の暴力によって強行採決されました。
しかし、これは、各省庁によるザックリとした「税金の奪い合い」であって、細かい内容はほとんど決まっていません。そして、それを決めるのが、国会の閉会直後に行なわれる「大臣折衝」なのです。簡単に言えば、各府省の大臣が、財務大臣と個別に協議をして、奪い取った予算の細かい調整を行なうわけです。
で、今回は、臨時国会が閉会した12月21日の翌日22日の午前中、さっそく公明党の斉藤鉄夫国交大臣と自民党の鈴木俊一財務大臣との大臣折衝が行なわれました。今回の国交省の最大の課題は「自賠責の運用益6,013億円の未返済問題」です。知らない人のためにサラッと解説すると、国交省が車やバイクのオーナーに加入を義務づけている自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)の運用益の大半は、政府、つまり財務省に貸しているのです。
大臣折衝でケツまくった自民党の鈴木俊一財務大臣
現在、財務省の借金の残債は6,013億円ありますが、これは20年以上も前に一般会計の補填として、自賠責保険の運用益から借りた1兆1,200億円の残りです。通常、予算は単年度決裁なので、こうした借金は一括返済が基本です。しかし、財務省は、安倍政権下の2017年まで、この残債6,013億円の返済に全く応じず、ずっと先送りして来たのです。
そして、2018年に、ようやく返済が再開されましたが、財務省が返済したのは僅か23億円だけ、一般の消費者金融なら利息分にもなりません。2022年度の返済額は54億円に増額されることが決まりましたが、このペースで返済していたら、完済までに100年以上かかってしまいます。
それでも、保険制度が破綻せず、保険加入者の負担が増えなければ、特に問題はありません。しかし、現状は赤字なのです。自賠責保険制度では、交通事故で障害を負った被害者の治療やリハビリを請け負う療護センターの運営などの救済事業を行なっています。こうした救済事業には、年間約144億円の運営費が掛かっているのですが、自賠責保険は金利が低くほとんど運用益が得られないため、毎年、保険制度の原資である積立金を取り崩した「持ち出し」で穴埋めして来たのです。
昨年2021年度は、144億円のうち半分の77億円を積立金で穴埋めしました。この積立金の残高は約1,500億円なので、現在の状況のままなら、約20年後には積立金がゼロなり、保険制度は破綻します。それもこれも、財務省が借金の一括返済に応じず、返済を引き延ばし続けていることが原因で、サクッと6,013億円を返済してくれれば、全ては丸く収まるのです。しかし、この借金返済の引き延ばしは、過去5回にわたり、国会閉会直後の国交大臣と財務大臣との大臣折衝で、無条件で繰り返されて来ました。
自公政権での国交大臣と言えば公明党の指定席ですから、言わば「自民党と公明党による国民無視のお約束」というわけです。そして、今回の大臣折衝でも、返済期限も決めずに、マッハのスピードで6回目の引き延ばしが決まったのです。ま、ここまでは前回と同じ「お約束」ですが、1つだけ前回までと違ったことがありました。それは、自民党の鈴木俊一財務大臣が「こんな巨額な借金、とてもじゃないけど返済は無理だ!」とケツをまくったのです。
議事録など作成しませんので、実際にどのような言葉づかいだったのかは知る術もありませんが、とにかく財務大臣は「借金返済は不可能だ」と言い、国交大臣が「でも、このままじゃ約20年で積立金がなくなってしまう」と返すと、財務大臣は「じゃあ保険料を引き上げて保険加入者に負担させろ」と言い、国交大臣が「オッケー!」と答えたのです。そして、本来は借金をした政府(財務省)が返済すべき残債の6,013億円が、全国の自賠責保険の加入者に丸投げされたのです。
自賠責保険制度の救済事業の運営費の不足分を「賦課金」という形で保険料に上乗せする、ということが、国会の審議も経ずに、密室の中で、自民党の財務大臣と公明党の国交大臣によって決められたのです。「賦課金」などと名目を付けて上乗せしても、実質的な「保険料の値上げ」に変わりありません。それなのに、大臣同士で取り交わされた覚書には、次のように明記されたのです。
賦課金制度について、2023年度以降の可能な限り速やかな導入に向けた検討を行い、早期に結論を得ることとする。
そして、国交省は、大臣折衝の5日後の12月27日の検討会で、とりあえず賦課金を年100億円とする案を提示しました。国交省は、今年の秋まで検討会を重ねて最終案を取りまとめ、秋の臨時国会が閉会した翌日の大臣折衝で、これまた公明党の国交大臣と自民党の財務大臣が「阿吽の呼吸」で決定するわけです。
なぜ車やバイクのオーナーだけが負担を強いられるのか?
百歩ゆずって、自賠責保険制度の中で大きな赤字が出て、それを保険加入者が負担させられると言うのなら、まだ理解はできます。しかし、今回の場合は、自賠責保険の運用益から莫大な借金をした財務省が、自賠責保険とは無関係な予算にバラ撒いた挙句、返済できないとケツをまくったのです。
あくまでも一般会計の補填のための借金なので、残債の6,013億円が何に使われたのかは特定できませんが、防衛予算の一部として米国の欠陥兵器を大人買いした可能性もありますし、経産省の予算の一部として欠陥原発の新設に使われた可能性もあります。
それなのに、どうして車やバイクのオーナーだけが負担させられなければならないのでしょうか?借金の主旨から考えても、これは国民全員に平等に振り分けるべき案件ではないでしょうか?そして、それ以前に、6,013億円もの国の借金を国民に肩代わりさせるのですから、国会の閉会後に自民党と公明党だけでコソコソと決めたりせず、ちゃんと国会で審議を尽くし、国民の見ている前で正々堂々と決めるべきだと思いませんか?
年が改まり、それなりに「リセット感」を覚えたあたしですが、この公明党の斉藤鉄夫国交大臣と自民党の鈴木俊一財務大臣による大臣折衝だけは、あまりにもムカついたので1ミリもリセットできません。だから、こうして新年最初の「前口上」に書いたのです。
最後に皆さんにお願いがあります。それは「国の借金6,000億円を財務省が返済できなくなり、自賠責の保険料に上乗せして全国の保険加入者に負担させると自民党と公明党が勝手に決めたので、来年から自賠責の保険料が値上げされる」ということを、夏の参院選まで、周りの車やバイクのオーナーに言いふらしてほしいのです。どうぞよろしくお願いします。
(『きっこのメルマガ』2022年1月5日号より一部抜粋・文中敬称略)
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