クレベリンと類似品を販売している他メーカーはお咎めなしの不思議
なぜ消費者庁は「クレベリン」だけをターゲットにするのか?
消費者庁が、大幸薬品の空間除菌剤「クレベリン」を露骨に潰しにかかっている。
1月20日、「空間に浮遊するウイルス・菌を除去」などの表示に合理的根拠がなく、消費者に誤解を与えるおそれがあるとして、消費者庁は、景品表示法に基づく措置命令を下した。
対象となったのは、スティックペンタイプ、スティックフックタイプ、スプレー、ミニスプレーという4商品で、定番である「置き型」タイプ2商品は含まれていない。昨年12月、消費者庁から措置命令の事前通達を受けた大幸薬品は東京地裁に差止訴訟を提起しており、「置き型」に関してはそれが認められているからだ。ただ、消費者庁は即時抗告しており、高裁の結果ではこの2商品も対象となる可能性が高い。
このような流れを聞くと、「潰しているとは人聞きが悪い、われわれ消費者のために誇大広告で儲ける企業にお灸を据えてくれているんだろ」と消費者庁を応援したくなる人もいるかもしれない。しかし、実は今回の一連の動きには、「消費者のため」という話では説明できない、おかしな点がたくさんある。
まず、大型ドラッグストアに行けばわかるが、除菌コーナーの「クレベリン」の隣には同じような空間除菌剤がたくさん並んでいて、措置命令を受けていないものもかなりある。
例えば、その中のひとつが興和の「ウィルス当番」。こちらのパッケージには「空間除菌」「ウイルス除去」という言葉が並び、「空間に浮遊する」という表現こそないものの、「身近にひそむウィルス・菌に」という言葉の横で、クリアポットから放射線状に二酸化塩素を放出しているイメージ図が描かれている。消費者にほぼ同じイメージを訴求していてこちらはお咎めもなしで、「クレベリン」は「大幸薬品株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」(消費者庁ホームページ)と名指しで吊し上げられる。
「有名人・有名企業を晒し者にして、社会全体に注意喚起」というのは中央官庁、自治体、警察が好む定番の手法だとしても、これはさすがにちょっと度を超えた不公平さではないか。
行政がなりふり構わず措置命令、消費者も混乱
さらにおかしいのは、司法の判断を待つことなく措置命令に踏み切った点である。とにかく「空間除菌に根拠なし」という結論にもっていくため、なりふり構わず措置命令をゴリ押ししているようにも見える。
先ほども申し上げたように、大幸薬品側は仮の差し止めを勝ち取っているのだが、これはかなり異例のことだ。だから、大幸薬品は自社HPで、司法によって「消費者庁に提出している試験結果などが、二酸化塩素による除菌・ウイルス除去効果の裏付けとなる合理的根拠に当たることを認め」られたと胸を張っている。
しかし、消費者庁はその事実をもみ消すかのようにすぐさま4商品の措置命令を出した。「消費者庁の命令は、東京高等裁判所での審理が開始される前に行われたものであり、極めて遺憾」と大幸薬品側が恨み節を述べていることからもわかるように、こんな形で措置命令を出しても、対立と混乱を招くだけで、消費者にメリットもない。
筆者が、先ほど近所の商店街をのぞいてきたら、措置命令に従ってペン型やスプレー型を引っ込めた大手チェーン店があった。一方で、数百メートル離れた別のドラックストアでは、一番目立つ場所に「クレベリン」専用の棚を設けて、置き型はもちろん、ペン型、スプレー型など今回対象の4商品すべてを売っていた。つまり、措置命令は出したものの、大幸薬品側が全面対決の姿勢を崩さないことで、店側も対応が定まらないのである。当然、消費者も混乱する。
こういう事態を避けるのも消費者庁の役目のはずだが、「そんなもん知るか」とばかりに措置命令に執着している。とにかく1日でも早く措置命令のリリースを出して、マスコミに「ウイルス除去 根拠なし」(NHK政治マガジン1月20日)『クレベリン、「空間除菌」根拠なし』(毎日新聞1月21日)という印象のニュースを流させたかったとしか思えないほど強引だ。
さて、そこで次に疑問に浮かぶのは、消費者庁はなぜそこまで「クレベリン」と「空間除菌」を目の敵にしているのかということではないか。そして、なぜこのタイミングでの措置命令にこだわったのか、ということも気にならないか。
「日本除菌連合」という存在が今回の騒動の一因か
マスコミの解説によれば、コロナ感染を防ぐ効果があるとか、空間の殺菌・除菌効果があるなどとうたう製品の相談が多く寄せられていることを、問題視した消費者庁が、「空間除菌市場」を牽引するリーダー的な存在である「クレベリン」に狙いを定めたという。
一見、説得力のあるストーリーではあるが、個人的にはちょっと引っかかる。
空間除菌関連製品の広告表示を適切な方向へ指導したいのなら、今回のように企業との「全面対立」を避けるべきなのは言うまでもない。もし裁判で負けでもしたら、消費者庁のメンツは丸潰れで、不当な広告表示をする業者がさらに勢いづいて手がつけられなくなってしまうからだ。
そんなリスクがありながらも「全面対立」に踏み切ったのは、もっと切実な目的があったからではないか。これは筆者の想像だが、シンプルに「空間除菌」というものの社会的信用を失わせることではなかったかと思っている。
「おいおい、役所がそんな風に民間企業のビジネスを邪魔をするわけがないだろ」と思うかもしれないが、役所だからこそ、それを必死にやらないといけない「オトナの事情」があるのだ。
実世間一般ではまだあまり知られていないが今、厚労省、経産省、そして消費者庁に対して「空間除菌の科学的根拠を認めろ」と強く迫っている団体があるのだ。「日本除菌連合」である。
この団体は、「除菌の力で新型コロナウイルスの感染を防ごうという技術を持ったメーカー、業界が大同団結する有志連合」(ホームページより)で、主に加盟しているのは、「次亜塩素酸水」による除菌機器を扱うメーカーが多くを占めており、そこに大幸薬品の名前はない。
だが、目指すところは空間除菌剤メーカーとも微妙に重なっている。「政府のアクションプランに除菌を加えること、国の空間環境除菌への全面的バックアップ、政府機関によるエビデンス取得、研究技術開発の支援、研究補助金、普及補助金、海外展開助成など」を求めていくということだからだ。
その「日本除菌連合」が昨年秋、医療界で話題になったことがある。《2021.10.27 厚労省から次亜塩素酸の空間噴霧を認める通達が出されました》というプレスリリースを出したのだ。
厚労省と「日本除菌連合」のすれ違い
実は厚生労働省は「次亜塩素酸水の空間噴霧」については国際的に評価方法は確立されていないとして、「推奨できません」という立場であり、コロナ関連の情報をまとめた厚労省サイトにもそう明記されている。WHOをはじめ医療界も同様のスタンスで、医療関係者の間では、効果に否定的な意見が多い。
そこで、Buzzfeedニュースが厚労省に確認したところ、このリリースを「ミスリーディング」と見解を示した。
が、今度はそれを除菌連合に伝えると、「感染対策としての次亜塩素酸水の活用については厚生労働省、経済産業省、消費者庁の代表と度重なる打ち合わせの結果今回の事務連絡の通達となっています」と回答して、このように主張が返ってきたという。
「次亜塩素酸水の活用におけるリスクとベネフィットにつきましては当然ベネフィットの方が勝っているというのが事実です。過去20年以上にわたり酪農業、農業、食品加工業、ホテル、介護施設、病院、学校、保育園、家庭などで使われてきた次亜塩素酸水は除菌消臭の効果で社会に貢献してきている一方で人命や健康に関わるリスクはほとんど報告がありません」(『厚労省が「空間除菌」を認めた? 業界団体が誤情報を発信。専門家は改めて注意喚起』21年12月14日)
つまり、Buzzfeedに対応した担当者の見解が間違いであり、「次亜塩素酸水の空間噴霧による除菌」は、厚労省、経産省、消費者庁もその効果と安全性を認めているものだ、というのだ。
そう聞くと、「空間除菌」というものに否定的な方は、「こういう主張をするメーカーの製品にもクレベリンにやったようなガツンと措置命令を出せばいいのでは」と思うかもしれないが、消費者庁にはそれが簡単にできない事情がある。
片山さつき議員も「応援」、日本除菌連合の政治的な後ろ盾
実は日本除菌連合は、「感染対策を資材と方法から考える超党派議員連盟」(本稿では「空間除菌議連」と呼びたい)と連携しているのだ。「次亜塩素酸、オゾン、光触媒などの技術を活用した空間除菌を行うことがウイルス対策として有効であること」という考えのもとで設立されたこの「空間除菌議連」は21年5月時点で、自民党が24名、公明党が8名、立憲民主党が10名、日本維新の会3名、国民民主党が1名が名を連ね、会長を片山さつき参議院議員が務めている。
片山氏と言えば、議連発足時の昨年5月、こんなツイートをして医療関係者から批判を受けて話題になった。
《感染症対策を資材と方法論から考える超党派議員連盟、この状況下まだまだやれる事があります!自民、公明、立民、国民、維新の5党約50名の衆参国会議員で発足!空間除菌、空気除菌、O3 、HOCL 、光触媒、他三重大教授から全体像の講演。東工大からもご参加。政府機関が有効性を科学的に認定を》(21年5月12日)
除菌連合が厚労省、経産省、消費者庁の名を挙げて「空間除菌」の有効性を主張できるのは、エビデンスへの絶対的な自信もさることながら、片山氏を筆頭とした「空間除菌議連」という政治的な後ろ盾が、まったく同じ主張をしてくれているからなのだ。
さて、ここまで説明をすれば、筆者が消費者庁の露骨な「クレベリン潰し」が、「空間除菌」というものの社会的信用を失わせるという目的のために行われたのではないかと考える理由がわかっていただけのではないか。
「クレベリン」は流れ弾にあたった?
財務省の改ざん問題などを見てもわかるように、官僚というのはどうしても政治家の顔色をうかがいながら仕事を進めなくてはいけない。有力議員に逆らえば簡単に島流しにされてキャリアはパア、逆に忖度ができれば異例の出世もある。
そういう世界で生きる消費者庁幹部のもとに、「自民党総務会長代理」という重い看板を背負い、50人近い議連を率いる元官僚の議員が、「空間除菌の科学的有効性を認めよ」と迫ってきた、としよう。
先ほども申し上げたようにこれに関して医療界は否定的だが、国会議員が首を突っ込んできた以上、厚労省も経産省も、そして消費者庁も「そんなの認められるわけないでしょ」と、あしらうこともできない。そうこうしているうちに議連とガッチリ手を握る業界団体が、「厚労省が次亜塩素酸の空間噴霧を認めた」とまで主張してきた。このままいけば、押し切られてしまう恐れも出てきた。
政治力学とエビデンスの板挟みで、消費者庁幹部は頭を抱えたはずだ。しかし、そこは受験勉強で鍛えた優秀な頭脳である。片山氏や空間除菌議連の顔を潰すことなく、除菌連合を敵に回すことなく、どうにかしてこの無理筋の要求をのらりくらりとかわす方法がひねり出される。それが「クレベリン」を利用して、「空間除菌」の社会的信用を貶めるというスピンコントロール(情報操作)ではなかったか。
「空間除菌」を代表する「クレベリン」にとにかく措置命令を下して、マスコミに「空間除菌、根拠なし」と書かせれば、世論は空間除菌にネガな印象を抱く。自分たちの手を汚すことなく、除菌連合や片山氏たちの「空間除菌の有効性を認めよ」というロビイングの足を引っ張ることができる。「選挙に落ちればタダの人」の政治家は結局、人気商売なので、あまりに「空間除菌」に対して世論の逆風が吹けば、沈黙せざるを得ない。つまり、「クレベリン」の社会的イメージを貶めるだけで、厚労省や消費者庁は除菌連合と議連に対して「戦わずして勝つ」ことができるのだ。
おりしも、「クレベリン」と大幸薬品は昨年から、さまざまな医療機関に無償提供したり、その功績が認められて政府から紺綬褒章を授与されたりして、一部の「空間除菌」に否定的な人々から批判されていた。「空間除菌」のネガキャンには、まさにうってつけの存在だ。
もちろん、これはすべて筆者の想像である。しかし、今回の措置命令のタイミングといい、不可解なまでの強引さは、このような「官僚の事情」があったと考えれば、つじつまは合う。
いずれにせよ、コロナ禍が続く中で、「空間除菌」の有効性をめぐるバトルも続いていく。今回、流れ弾に当たったのは、「クレベリン」だが、近いうちに他の除菌・殺菌製品、ウィルス対策製品も否応なしにこの「不毛な戦場」の最前線に駆り出されていくのではないか。
二酸化塩素の新型コロナウイルスに対する不活化効果を確認
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私もクレベリンをコロナウイルスが広がった当時10個ぐらい買いましたが、クレベリンの
持つ塩素臭に耐え切れなくて数個使い残りは他人に売ったりして処分しました。
でも、効果があることは確かです。
厚生労働省はそのことを知られたくないので一番売れていて知名度も高いクレベリンを攻撃し
効果がないということを国民に浸透させたかったのではないかと思います。
イベルメクチンと同じことです。
こんなのを日本国中使われてコロナ感染者が増えなければ製薬会社から訴えられ莫大な賠償金
を払うことになりますからね。
それを何としても嘘をついてでも避けたかったと考えれば納得の話です。
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