23日午後1時15分頃、北海道・知床半島の沖合で運航会社「知床遊覧船」(北海道斜里町)の観光船「KAZU(カズ) I(ワン)」(定員65人)から「船首が浸水して沈みかけている」と118番通報があった。

 第1管区海上保安本部(北海道小樽市)によると、乗客・乗員は計26人で、うち乗客は子ども2人を含む24人。通報を受け、同本部は船舶と航空機を派遣して捜索しているが、同日午後8時半現在、同船を発見できていない。

 同社などによると、観光船は同日午前10時に斜里町ウトロを出航し、知床岬で折り返す3時間のコースを予定しており、通報時は半島西側の「カシュニの滝」付近を航行。118番の後、連絡が途絶えた。

 国土交通省などには、「同船のエンジンが故障し、自力航行できていない」との情報が入っている。乗客・乗員は、いずれも救命胴衣を着用していたとみられる。関係者によると、2人の子どもは、男児(7)と女児(3)との情報がある。

 同町では同日午後1時現在、気温が平年並みの5・8度、風速は秒速1・7メートルだった。同町のウトロ漁業協同組合によると、現場の沖合は同日昼頃から波が高くて視界も悪く、漁船は午前中に引き返していた。

 現場付近は断崖絶壁が続く海岸で、陸路からの接近は難しい。同本部は船舶6隻と航空機4機の態勢で捜索した。

 同社は読売新聞の取材に対し、「情報が入っていないのでお答えできない」と語った。今回、連絡が途絶えた観光船は、昨年6月にも航行中に座礁事故を起こしていた。知床半島沖では、観光船による事故がたびたび発生している。

 知床は2005年、豊かな海や生態系が評価され、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産に登録された。知床半島は車で通行できない場所も多く、観光船は、海上からヒグマや滝など国内有数の自然や景観を楽しむことができるため、観光客から人気を集めている。