やっぱり「カラオケ」が認知症に効果…歌うと予防になる「歌謡曲の名曲」ベスト20を大公開
歌うことで過去を引き出し記憶の再生力が強まる
歌で記憶が引き出される
認知症を防ぐためには、面倒な「脳トレ」や運動をしなければいけない。そう思い込み、がんじがらめになってはいないだろうか。
そんな義務感を抱えながら行動してもストレスがかかり、かえって逆効果になる。実は、なによりも簡単で、かつ有効な認知症の予防法がある。
それは、カラオケで思い切り歌うこと。
これだけで認知症を防ぐ効果が期待できるのだ。
「音楽を聴くだけではなく、自分が歌うことで認知機能を向上させる。これを『能動的音楽療法』と呼びます。
歌を歌うと、集中力がアップするエンドルフィンや記憶力が高まるオキシトシン、活力が湧くドーパミンの分泌が促されます。その影響で血流がよくなり、脳が働くためのエネルギー源である糖が運ばれる量も増える。結果、安静時よりも脳が活発になるのです」(横浜鶴見リハビリテーション病院の吉田勝明院長)
今回、週刊現代は認知症治療に詳しい複数の専門医の意見を基にして、「歌うと予防になる名曲ベスト20」を作成した。
認知症を防ぐカラオケ曲には、2種類がある。「回想法に効く曲」と、「脳活性に効く曲」だ。
まずは回想法からみていこう。
「回想法は、なにかを引き金にして自分の歩んできた人生を思い出すことで、脳に刺激を与える方法です。青春時代や壮年期、自分がどこで何を考え、どんなことをしてきたのか。それをできるだけ細かく思い出すだけでも、認知症の予防に繋がります。その『引き金』として、カラオケ曲はもってこいです」(吉田院長)
この回想法には、いくつかのポイントがある。
・カラオケを歌う人が、10~20代の頃にヒットしていた曲
・具体的な地名が入っていて、曲の風景を想像できること
あまりにテンポが速すぎる曲は、自分の思い出を掘り起こす前に終わってしまい、ついていけない。ひとつひとつの歌詞をしっかり歌うことで、記憶が呼び戻される。
具体的な目安として、カラオケの際は歩くのと同じ程度のテンポの曲を選ぶのがいいだろう。テンポとは、1分間の拍数を指す。60代の男性が歩く速度は、おおよそテンポ80~100ほど。日本のムード歌謡や演歌には、まさにこのくらいのテンポの曲が多い。
曲のテンポを知りたいときは、曲名をカラオケのタッチパネルに打ち込めば出てくる。それを利用すれば一目瞭然だ。
「他にも、具体的な地名が出てくる曲は自分の記憶と結びつきやすい。学生時代に京都へ旅行した、新婚旅行に北海道に行ったなど、人の思い出は土地と直結しています。自分が行ったことのある地名が入っている曲を歌うのもおすすめです」(吉田院長)
手拍子で効果は倍増
たとえば、’63年に発表された坂本九の名曲『見上げてごらん夜の星を』は、回想法に最適だ。この曲のテンポは84で、メロディーもゆったりしている。歌詞もロマンチックで、歌っていると曲の世界に没入できる。
同じカテゴリーで言えば美空ひばりの『川の流れのように』(’89年)も、この条件に当てはまる。
具体的な地名が入っている曲という視点では、石川さゆりの『津軽海峡・冬景色』(’77年)もぴったりだ。この歌は男女の切ない恋を歌っているので、自分の青春時代の恋愛も蘇ってくる。
他にも回想法に効く曲としては、ガロの『学生街の喫茶店』(’72年)やかぐや姫の『神田川』(’73年)も推したい。’70年代に学生時代を過ごし、これらの曲に同時代感を覚える方も多いだろう。
もうひとつ認知症の予防に効果的なのが、「脳活性に効く曲」だ。このカテゴリーに入る曲として、こんなポイントが挙げられる。
・手拍子や足踏みなど、歌いながら「動作」をしやすい
・男女や同性同士でデュエットやコーラスがしやすい
・歌詞の中に英語が入っている
さらに脳の活性化を図りたいならば、ぜひ立って歌ってみてほしい。立位で歌うときの肺活量は、安静時の2倍になる。それだけ有酸素運動としての効果もアップする。有酸素運動は脳細胞を活性化させ、認知機能も向上させる。
もちろん、足腰や膝の調子が悪く、立って歌うことができない場合もあるだろう。そんなときは音楽に合わせてリズムを取り、手拍子をするだけでも高揚感が増し、脳に活力が与えられる。
「加えて、曲の中に長く声を伸ばせる部分があるとなお良いです。腹式呼吸をすることで脳血管の血流が改善され、下垂体、視床、視床下部、脳幹、中脳などが刺激されるからです。
歌詞についても、自分が経験したことを重ね合わせなくても大丈夫です。曲の主人公になりきってしまえばいい。歌の世界を上手に表現できたと思えれば、満足感で幸せホルモンのアドレナリンやドーパミンが分泌される。心地よいリズムに身をゆだねることも、開放感や幸福感に繋がります」(南越谷健身会クリニックの周東寛院長)
「脳活性に効く曲」としては、水前寺清子の『三百六十五歩のマーチ』(’68年)をカラオケで歌ってほしい。
「この歌は大ヒット曲ということもあって、誰もが知っている。みんなで歌うことで一体感を味わうことができ、さらにホルモン分泌が促進されます。歌詞も前向きで、歌いながら足踏みをすることもできる。脳活性のために必要なあらゆる要素が揃っています」(周東院長)
懐かしいところでは笠置シヅ子の『東京ブギウギ』(’47年)も、口ずさむだけで心が浮き立ってくる。サビで一緒にいる人と掛け合いができるという点では、ピンキーとキラーズの『恋の季節』(’68年)や氷川きよしの『きよしのズンドコ節』(’02年)も推奨したい。
そして、曲のイントロが流れた瞬間に気分が盛り上がる曲といえば、ジュリーこと沢田研二の『TOKIO』(’80年)もおあつらえ向きだ。
他にも、あえて英語の歌詞にトライすることで、脳に刺激がいきわたる。思い切ってエルビス・プレスリーの『ラブ・ミー・テンダー』(’56年)をカラオケに入れてみるのもいいだろう。もちろん、すべて英語で歌い切る必要などはない。心の赴くままに歌えばいい。
「他にも、お気に入りの曲の歌詞の丸暗記に挑戦するのも効果的です。年齢を重ねるほどに、何かを覚えるのが億劫になるもの。それは当たり前のことです。ですが、好きな曲ならば苦にならないかもしれない。『失敗してもいいから、やってみよう』と思う姿勢が大事なのです。人の前で歌うなど、目標があるとより続けやすいでしょう」(周東院長)
楽しくカラオケを歌うだけで、認知症が予防できる。こんな効果があるならば、試してみない手はないだろう。
認知症の発症リスクを減らす生活習慣はまだまだある。『認知症を防ぐ「意外な食べ物」13品を大公開!カレーやヨーグルトも効果が』では、食生活による予防についてを専門家が解説する。
『週刊現代』2022年4月23日号より
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