蚊を撲滅するために「子孫が繁殖できないように遺伝子組み換えした蚊を野生に放つ」という実験の結果は?
報告書では実験は上手くいったとされているが、実際にはその遺伝子は数世代後には消えているので失敗に等しい
蚊は黄熱・デング熱・ジカ熱・マラリアといった感染病を媒介するため、「歴史上最も多くの人間を殺した動物」ともいわれています。そんな蚊を撲滅するための技術を開発するバイオテクノロジー企業のOxitecが、「子孫が繁殖できないように遺伝子組み替えした蚊を野生に放つ」という実験の結果を報告しました。
Biotech firm announces results from first US trial of genetically modified mosquitoes
https://www.nature.com/articles/d41586-022-01070-x
感染症を媒介する蚊の個体数を減らす1つの解決策として、近年は「子孫が死ぬ遺伝子を組み込んだ遺伝子組み換え蚊を野生に放つ」という方法が注目されています。イギリスのバイオテクノロジー企業であるOxitecが開発したオスの遺伝子組み換え蚊(ネッタイシマカ)は、メスの子孫にとって致命的な遺伝子を持っており、野生のメスと交配して生まれた次世代のメスは繁殖前に死亡し、オスのみが成長することができるとのこと。この方法で交配を繰り返すことにより、メスにとって致死的な遺伝子を持つオスが多く誕生する一方で大量のメスが死亡し、結果としてネッタイシマカの個体数を減らすことができるとされています。
Oxitecは開発した遺伝子組み換え蚊の効果を確かめるため、アメリカ・フロリダ州南端に連なる列島であるフロリダキーズで、2021年4月から実際に遺伝子組み換え蚊を野生に放つ実験を開始しました。研究チームは遺伝子組み換え蚊の卵が入った箱を設置し、遺伝子組み換え蚊が移動した範囲や子孫に致死的な遺伝子が受け継がれる期間、繁殖した個体が産んだ卵などのデータを収集しました。一連の実験は7カ月間に及び、合計500万匹の遺伝子組み換え蚊が野生に放たれたとのこと。
遺伝子組み換えした数千万匹の蚊を放つ大規模な実験がアメリカで実施へ – GIGAZINE
そして2022年4月、Oxitecはフロリダキーズで活動する蚊の駆除団体であるFlorida Keys Mosquito Control District(FKMCD)が開催したウェブセミナーの中で今回の実験結果を報告し、「肯定的な結果が得られた」と述べました。
実験の結果、設置した卵からふ化したネッタイシマカのオスは箱の設置場所の周囲1ヘクタール(100メートル四方)の広さを飛び回り、野生の個体群と交配したことが確認されたとOxitecは主張。また、研究チームが箱の周囲に産み付けられた2万2000個の卵を持ち帰り、実験室内でふ化させて経過を観察したところ、致死遺伝子を受け継いだすべてのメスが大人の個体になる前に死亡したことが確認されました。
さらに、致死遺伝子はフロリダキーズの野生個体群において2~3カ月間、あるいは約3世代にわたって存続し、その後消失したこともわかりました。致死的な遺伝子を持つネッタイシマカは、最初の世代から数世代が経過しても、箱を設置した地点から400m以上離れた場所では見つからなかったとのこと。Oxitecは今回の実験で、最後に致死的な遺伝子を持つ蚊が発見されてから10週間にわたり継続調査を続けたと述べています。
カリフォルニア大学デービス校の昆虫学者であるトーマス・スコット氏は、「私はOxitecが行っている実験手法を気に入っています。彼らは体系的で思慮深い方法で実験しています。私はこれに励まされていますが、彼らには多くの仕事が待っています」とコメントしました。
今回の実験は、遺伝子組み換え蚊を放つ方法が野生個体群をどれほどうまく制御するのかを示すものではなく、Oxitecはフロリダキーズでより大規模な調査を行うことでデータを収集する予定です。また、カリフォルニア州バイセイリアでも遺伝子組み換え蚊を放つ実験を行う予定だとしています。
しかし、これらの拡大研究も「Oxitecの方法がネッタイシマカによって運ばれる感染症の広がりを減少させるのかどうか」を評価するものではないとのこと。スコット氏は、「Oxitecはこれが実際に公衆衛生に影響を与えていることを示すための試験を行うことはできません」「フロリダキーズには、ネッタイシマカが媒介するウイルスが十分ではないからです」とコメント。フロリダキーズを含めてアメリカにはこの種の研究を行うのに適した場所がないため、正確な評価を行うには他の地域で高価な投資を行って研究する必要があるそうです。また、単純に「ネッタイシマカの個体数が減れば感染症の媒介が減る」とも言い切れないほか、ネッタイシマカ以外の種類の蚊も多く生息していることをスコット氏は指摘しています。
それでもFKMCDのエグゼクティブディレクターを務めるアンドレア・レアル氏は、「私たちは複数の病気の発生に対処してきました。そのため、地元の人々と経済を守るためにできるだけのことをしなければなりません。私たちは、感染症を防ぐ役に立つ可能性があるツールを検討しています」と述べ、Oxitecの方法に期待を寄せています。
FKMCDによると、フロリダキーズでは2010年に68人がデング熱に感染する局所的事例が発生したほか、2020年にも72人が感染する事例があったとのこと。Oxitecの実験に際しては地元コミュニティの意見も求めており、2016年には住民投票も実施したとのことで、FKMCDとOxitecがコミュニティと交流する努力をしてきたことが特に重要だとスコット氏は主張しました。
マイコメント
文中で、報告書は
(1)箱の周囲に産み付けられた2万2000個の卵を持ち帰り、実験室内でふ化させて経過を観察したところ、致死遺伝子を受け継いだすべてのメスが大人の個体になる前に死亡したことが確認されました。
(2)致死遺伝子はフロリダキーズの野生個体群において2~3カ月間、あるいは約3世代にわたって存続し、その後消失したこともわかりました。
という二つの結果を報告している。
これから判断すると、自然は最初の数世代は致死遺伝子が働き蚊が亡するが数世代を経ると自然の子孫保存の法則が働き致死遺伝子は排除されるということを示している。
つまり、自然は私たちが人為的に捜査しても無意味だということです。
これはアシュタールやさくやさんが毎回話していることと同じことです。
もし、この実験を成功させるためには毎回定期的に遺伝子操作した蚊を自然に放出しないといけないことになり非現実的であることもわかります。
なぜなら自然界に存在する蚊の方が圧倒的に多く放っても必ず元に戻るからです。
コメント