防衛費増額のために不要な「増税」…財務省にまんまと乗せられた岸田首相の失策
岸田首相には税知識がないことが浮き彫りになった防衛増税!
増税を主張するための「試算」のカラクリ
岸田首相は、12月5日夜、今後5年の防衛費として43兆円とし、あわせて財源措置の検討も指示した。
防衛費のGDP比2%は、先の参院選で公約になっていた。かつて仮想敵国が一つだった時期でさえ防衛費はGDP比1%だったわけで、今や北朝鮮、中国、ロシアと3つあるのだから、GDP比3%でも不思議ではない。NATOという世界最強の同盟でさえGDP比2%なので、日米同盟だけに頼る日本ではそれ以上の防衛力が必要なのだ。しかし財務省は、防衛省要求の48兆円から43兆円へ防衛費を減額した。
いずれにしても岸田首相指示は43兆円であり、その財源で現実的かどうかが議論になっていた。 先週の本コラムで、予算作りの一般論として、新規予算があるとき、(1)他の歳出カット、(2)建設国債対象、(3)その他収入(埋蔵金)、(4)自然増収、(5)増税で対応する必要があることを紹介した。検討される順番は、それぞれの番号通りだ。 ところが、政府内では、とんでもない「試算」が一人歩きしていた。
防衛費について、5年後の2027年度に防衛費と関連する経費を合わせてGDP比2%とするが、今年度のGDPの見通しをもとにした試算では、その2%は11兆円規模になる見通しというのだ。
その試算では、追加の財源として5年後にはおよそ4兆円が必要で、歳出削減のほか、年度内に使われなかった「剰余金」を活用しても1兆円程度が不足するとしている。1兆円くらいは、実際の予算編成では増税なしでできる程度の話なのだが、あくまで増税を主張したいのだろう。それは次の増税に繋げるためだ。
この試算を、筆者が先週示した予算作りの一般論に照らし合わせると、(1)他の歳出カット、(3)埋蔵金の一部、(4)自然増収は、一応形式的に考慮されているだろう。
まともに検討されなかった「埋蔵金」
しかし、先週本コラムで指摘したことだが、肝心なのは(2)建設国債対象、(3)埋蔵金である。今回、それはまともに検討されていない。なにしろ、5年先のGDPでなく現在GDPで2%を計算しているのだ。それが根拠とは、聞いて呆れてしまう。
(2)建設国債対象は、生前の安倍元首相が提唱していた「防衛国債」のことである。安倍元首相が亡くなってから、財務省は官邸に有識者会議を作り、防衛国債議論を封じて増税への地ならしを行ってきた。この有識者会議は東日本大震災後の復興会議とやり方がそっくりだ。
なお、先週の本コラムでこれまでの建設国債対象経費を列記してきたが、こうした前例をみると、防衛関係が対象であっても当然だ。
(3)埋蔵金にしても、小物ばかりで、外為特会(外国為替資金特別会計)の評価益(30-40兆円程度)が含まれていない。これを持ち出すと、財務省は為替介入になるというが、実際に財務省は為替介入下ではないか。米政府が許さないというが、これは財務省のカウンターパートの米財務省と口裏をあわせている可能性もある。
他の先進国では外貨準備が少ないが、これは、為替介入後にドル債の売却か償還を行なっている証拠である。日本もドル債の償還なら良くて、売却は不可というのもロジカルでない。そもそも、数兆円程度の為替介入をしても、1日150兆円程度の取引がある外為市場ではほとんど効果ない。 埋蔵金は必ずしも外為特会に限らない。一般会計に計上されている債務償還費(2022年度15.6兆円)は、他に流用しても国債償還にはまったく支障がない。そもそも債務償還費を予算で計上しているのは先進国では日本だけだ。
筆者の個人的な話だが、恥ずかしい思いをしたことがある。かつてある国際会議で政府の公式答弁として債務償還費を計上しているから日本国債の信認があると説明したら、会議後各国担当者からそんなことをしているのは日本だけだと諭されたのだ。実際、これは一般会計から国債整理基金特会への繰入だが、過去にも停止したことがある。これも、埋蔵金の一種である。
セオリーを無視する財務省
財務省はこうした埋蔵金の「大物」をやらずに、小物ばかり手をつけて「やった感」を醸し出している。それは「剰余金」という言葉にも出ている。あくまで「余りが出たら出します」といっているだけで、余りを出すかどうかは財務省の意向次第だ。マスコミは会計知識もないので、財務省の言い分を垂れ流すだけとは情けない。
また財務省は、財源を確保するため、国有資産の売却などによる税金以外の収入を活用する「防衛力強化資金」という新たな枠組みをつくることも検討していると報じられている。こうした資金は、防衛費を区分経理するための常套手段であり、財源確保のために増税の一歩手前だ。かつて、東日本大震災のとき、復興特会を作り、復興増税に持っていった手法に類似している。
自民・公明両党の協議会は12月7日、歳出削減などを行ったうえでも不足する部分は税制措置を含めて対応する方針を確認した。自民党内で安倍派などは反発したが、岸田首相は8日、与党に所得税を除く形で税制措置を検討するよう指示した。
岸田首相は過去の前例さえ無視し、財務省のシナリオ通りに動いて不要な増税に走った。防衛費増を参院選で公約したのは事実だが、防衛増税は公約していない。
岸田首相は、10日の会見で、「国債でというのは、未来の世代に対する責任として採り得ない」と述べた。むしろ、防衛はインフラと同じで将来世代まで便益があるのだから、国債に相応しい。 東日本大震災後、大震災が稀に起こるのであれば、課税平準化理論から復興費用は長期国債で賄うのが、財政学からの結論だ。これと同様に考えれば、有事が稀に起こるのであれば、防衛費用を長期国債で賄うのが筋だ。課税平準化理論からも防衛国債を正当化できる。
東日本大震災についで今回も財務省はセオリーを無視した。しかし、財務省のポチである財政学者からは声も出ていない。
今回の防衛費の議論の進め方は、東日本大震災後の復興増税に瓜二つで、ともに間違っている。1兆円程度だという増税を強調するのは、東日本大震災後、ホップの復興増税のあと、ステップの消費増税第一弾、ジャンプの消費増税第二弾を惹起させる。
残念なことで認めているわけではないが、筆者は「これは、防衛建設国債や埋蔵金なしというわけで、財務省の勝ちだなあ」と呟いてしまった。
髙橋 洋一(経済学者)
マイコメント
今回の増税に関しては自民党内の会合で怒声が飛び交うほどの反対に遭ったということだが
それくらい、防衛費1兆円を国民負担で賄うことがおかしいと気付けない岸田首相はおかしい。
何らかの弱みを財務省に握られていて彼らの意のままに動かされているという感が否めない。
安倍前総理はこうした財務省のやり方に徹底して反対してきたが、岸田首相にはそれが出来ない。
このままでは増税に次ぐ増税で国民負担が増し、物価高も重なり日本は沈没してしまうだろう。
いったい、そのときになったとしても財務省は責任を取るだろうか?
否、さらに増税を求めてくるだろう。それが財務省です。この際財務省を解体するしか手が
なくなるだろうと思います。
コメント
ねこです。お久しぶりです。家庭や自分自身の都合で、しばらくコメントできませんでした。
それにしても財務省の姑息さと言ったら、どうしょうもないですね。
こちらへコメントできなかった間に、動画で三橋貴明さん、藤井聡さん、高橋洋一さん、
森永康平さん、西田昌司さん、武田邦彦さんらの動画を見てましたけど財務省のほざく
プライマリーバランス黒字化のアホさと、消費税を財源にしてはいけない事、企業が
内部保留を始めた原因など、この半年くらいで2000年以降の日本の劣化の原因などが
大体理解できました。
他に、森永卓郎さんが言ってましたが、財務省と戦ったのが首相は安倍元首相だけだった
ことや積極財政派の一人で「自民党は17%しか国民の支持がない政党だから偉そうな事を
言ってはいけない」と言ってたこと、2013年は財政出動によってこの年だけ景気が良く
なってたことなど、驚くことばかりでした。当時は、そんなこと調べる余裕がなかったです。
それと補正予算の件、まだ決まってもいないのに、鈴木財務大臣と手下が予算が
決まったかのように岸田首相に報告して、岸田首相の口から待機していたマスコミに
かなり低い予算発表させたけど、これに違和感を感じた首相が電話で政調会長に電話して
予算のについて電話して確認したら「まだ決まっていない」と。
その後撤回して、予算は増額されたようですけど、積極財政派は50兆円の予算を求め、
政調会長は「30兆円からだ。」と言ってたそうですね。
財務省は、こんな稚拙なやり方が通用すると思ったんですかね ? それとも誰かの指示で
やったのか ?
鈴木財務大臣の答弁と財務省の答弁を聞いてると、民間の会社で仕事や対人関係で
修羅場を経験したことのない、緊張感のない子ども爺さん、子供おじさんみたいなの
ばっかでしたね。
財務省は仰るように解体ですね。即刻強制解体です。
国家と日本の国民生活の衰退の原因、諸悪の根源、国民の生活と安全を脅かしているのは、
財務省及び、一部の官僚政治家、親中派の与野党議員、反日勢力でしょうけど、弱く
なったとは言え、まだアメリカの一部の勢力が動いていますか・・・。
そういえば、若い人はテレビを見なくなっているし、動画で金融、財税のことなどを
理解して、ネットの情報がない自分の祖父母らにまともな知識と情報を伝えていって
もらえれば・・と。
まぁ、今は動画をテレビで見れるけど、検索できない年配の人も多いからネットが
当たりまえの若い世代が、いろいろとできることも多いかと思うんですが・・・・。
国債の仕組みを知ると、1000兆円借金のウソや増税不要のこと、53.8円のガソリン税が
不要な事なども全部分かってしまいますね。
ここ数年、漫画形式で、「こうなったらいいな」と簡単にコマ割りして日本や世界が
今とは全く違う方向に向かう内容のものを製作して、毎日それらに目を通していったら
そのようになっていく事が多くなりましたね。
頭の中で想像したものを現実化させることって、そくんなに難しく考える必要はないのかも
知れません。
文字だけ見てるより、映像と動画を上手く利用すればもっと効果がありますね。
結局、個々の想いや想像力、ブレない信念なのかも知れないのですけど・・。
ねこ 様
お久しぶりです。
お元気そうで何よりです。
まだ決まってもいないのに、鈴木財務大臣と手下が予算が
決まったかのように岸田首相に報告して、岸田首相の口から待機していたマスコミに
かなり低い予算発表させた
ということは初めて知りましたが、もちろん財務省の差し金ですね。
いかに予算を削るかが最大命題でそれのみです。
その嘘がバレたと言うことは岸田総理はそのようにして何度も
騙されてきたのでしょう。
故安倍元総理はそのことを知っていたので財務省の言い分はほとんど
聞かなかったと言われているようです。
しかし、安倍氏が銃撃を受けたのはその前から国債を増発しても
日本は困らない発言を何度もしていたのであのようになったのだろうと
内心思っています。
しかも、未だに真相はやぶの奏であれ以来話題にもなりませんから
徹底して暗殺の隠ぺいを図ったこということですね。
これから先は国民が真実を知り賢くならない限り日本は今のまま
だろうと思います。