日本は侵略などされない。脅威を捏造し「防衛費倍増」する国民ダマシ
日本を参戦に持ち込むことが目的でウクライナと同じように彼らは高みの見物となる。
周辺国による脅威の高まりを理由に、大幅に増額されることとなった防衛費。現在政府・与党内ではその財源を巡る駆け引きが激しさを増していますが、そもそも日本が直面しているという「周辺国の脅威」とは、一体どれほどのレベルなのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、我が国にとって最大の脅威とされる中国や北朝鮮について、「両国が日本に上陸侵攻し直接軍事占領を目論むという事態は200%ない」と断言。その単純にして明快な理由を記しています。
※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年12月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
日本は一体どういう「脅威」に直面しているのか/その基礎の基礎を蔑ろにして防衛費を倍増することの嘘くささ
およそ一国の防衛の戦略・政策・予算を論じるについて、第1ページをなす出発点は、その国が一体どういう軍事的な「脅威」に直面しているのかという、軍人用語で言う「脅威の見積り」である。
それは具体的には、「どこの国の、どの部隊が、どういう様態で侵略してくる蓋然性が高いか?」ということの、冷静、かつ可能な限り科学的・客観的な分析でなければならない。もちろん、その蓋然性には複数の可能性があり、従っていくつも脅威シナリオがあり得るけれども、可能な限り数学的な確率計算を適用し、優先順位を付けなければならない。
こんなことはごく当たり前のことで、或る戦士が誰かから狙われているらしいことを察知したとして、その相手が誰で何人なのか、柔道家もしくはキックボクサーが素手で襲ってくるのか剣術の達人が刀を抜いてくるのか、どういう条件の下でどのタイミングで立ち現れる公算が大きいのか等々を大まかにでも推測し読み切ることなくして、身を守る作戦など立てられるはずもない。
政府はことあるごとに「日本を取り巻く安全保障環境はますます厳しさを増しており」という決まり文句を繰り返し、そうするとマスコミも「ますます」というのが、いつから比べて(量的に)、どのように(質的に)、脅威が増しているのかの中身を何ら問うことなく、その表現を鸚鵡返しに垂れ流す。それを毎日にように繰り返されると、一般の人々は「そうか、ますます脅威が差し迫っているのだな」と、根拠不明の不安感を上から上から刷り込まれていくのである。
冷戦時代にはあった「旧ソ連の脅威」
冷戦期の日本は、ソ連極東に陸軍部隊45師団=50万人と海空戦力が配備されており、そのうちでも最強と言われた2つの機甲師団が先頭となって北海道に渡洋強襲上陸し、それを陸上自衛隊の戦車600両が迎え撃ち北海道の原野で戦車戦を展開。そのうちに青森県三沢の米空軍の対地攻撃機や沖縄県の米海兵隊が来援してソ連vs日米連合軍の全面対決になる――という「中心シナリオ」を持っていた。しかし冷戦終結と共にソ連はいきなり1/3~1/5の規模に激減させ、そのため「ソ連はもはや脅威ではない」ということになった。
《脅威の潜在性と現実性》
冷戦時代の終わり近くには、レーガン米大統領が旧ソ連を「悪魔の帝国」などと罵るのに悪乗りした米日のマスコミは「米ソ新冷戦が始まった」と煽り立て、今でも覚えているけれども『週刊現代』が「ある日突然、札幌のあなたのお宅の庭先にソ連の戦車が!」などという与太記事を毎週のように繰り出していた。そのせいで、青森の娘さんが稚内の若者のところに嫁に行く話がまとまっていたのに、青森の親が北海道は危ないからと言い出して破談になったという笑えない実話まであって、当時の北海道JCの会頭に「高野さん、この『東京発ソ連脅威論』の公害を止めてくださいよ」と懇願されたりもした。
そういうこともあり、自衛隊北部方面司令部の幹部に「週刊誌はこんな風に煽っているが実際はどうなの」かと問うたことがあった。彼はまことにスマートな論理派の軍人で、こう語って私を納得させてくれた。
▼ソ連の脅威は確かにあって、それに備えるのが我々の任務だが、「ある日突然、札幌に」ソ連の戦車が現れるなどということはあり得ない。
▼まず、脅威を語る場合に大事なことは、「潜在的脅威」と「現実的脅威」を峻別することだ。単にソ連極東にこれこれの部隊が配備され、これこれの装備をしているというだけではそれは「潜在的脅威」にすぎない。第1に、政治指導部において軍事のみならず政治、経済、文化などあらゆる要素を考慮したうえでそれでも日本を「侵略」することにメリットがあるとする「戦略的意志」があるかどうか。脅威=戦力×戦略的意志である。
▼第2に、基本的な地政的な環境ということがある。米ソ冷戦の「正面」はあくまで欧州であり、そこでは米欧のNATOとソ連・東欧のWPOが「いつでも来い」とばかり睨み合っている。その「西部戦線」が「異常なし」なのに「東部戦線」でいきなり「異常あり」ということは考えられない。西部先・東部後が基本である。
▼第3に、ソ連極東の前線部隊に予定された作戦を実行に移すだけの実体的(サブスタンシャル)な準備が整っているかどうか。実は、ウラジオストクにもナホトカにも、ソ連機甲師団を北海道に敵前上陸させるだけの輸送船がほとんど1隻もない。我々は、極東に輸送船の集結が始まったら、潜在的脅威が現実的脅威に「転化」したと判断し、臨戦態勢に入るだろう。
それで思い出すのは前原誠司のことである。彼は旧民主党の中では外交・防衛通ということになっていたが、2005年12月に訪米してジョージタウン大学CSICで演説、「中国の軍拡は現実的脅威」などと言って米軍産利権マフィアから絶賛を浴びた時、私は「何が外交・防衛通だ。脅威の潜在性と現実性の区別もつかないくせに」とボロクソに批判した。「現実的脅威」なら戦争準備に入るということだが、彼はもちろんその覚悟を持ってこの言葉を吐いていない。そこに彼の軽々しさが露呈していた。
旧ソ連じゃなければどこなんだ?
冷戦の終わりと共にソ連の脅威が消滅して、しからば冷戦後の極東情勢の中で、上述のように「どこの国の、どの部隊が、どういう様態で侵略してくる蓋然性が高いか?」が改めて問われることになった。が、日本はこの根源的な問いかけに真面目に立ち向かおうとはせず、何とはなしの「北朝鮮が怖い」「中国は危ない」というマスコミが醸し出す気分に身を委ねるばかりで、本当に日本が直面する軍事的脅威があるとすればそれは何なのかを分析することを怠ってきた。
《脅威の横滑り》
まず何よりも、北朝鮮や中国が「脅威」だと言っても、そのどちらかもしくは両方が軍事力の総力を挙げて日本に上陸侵攻し直接軍事占領を目論むという事態は、100%どころか200%もあり得ない。理由?彼らがそうすることに何のメリットも何の意味もないからである。
そこで外交・防衛当局は、「そうは言っても奴らは危ないんだ」という理由を苦心惨憺探し回って、「北朝鮮が国家崩壊した場合に、一部は武装した難民が日本の離島に押し寄せる」とか、「中国は台湾有事の場合に必ず尖閣諸島を獲りに来るに決まっていて、そうなると与那国島も石垣島も宮古島も攻められるに決まっている」とか、ありもしない脅威シナリオを世に振り撒いて、それを口実に防衛予算の大幅増額を要求し続けてきた。仮に難民が押し寄せるとか尖閣が巻き込まれるとかいうことがあったとしても、それは、誰が考えても分かることだと思うが、精鋭機甲師団による正面切った渡洋上陸作戦とは全く量も質も異にする低レベルの脅威でしかない。
それで当時私は、このような「ソ連は敵でなくなっても、ほら北朝鮮が怖いだろう、中国も危ないだろう」という情緒にのみ訴える非科学的な脅威論の心理操作を《脅威の横滑り》と呼んで揶揄した。
《K半島事態対処計画》
その典型が、1994年に政府・防衛庁がまとめた「K半島事態対処計画」である。この前年、北朝鮮が核不拡散条約から脱退して核開発を推進すると表明したことで米国との関係が一気に悪化。米クリントン政権は当初熱り立って、北の核関連施設への先制爆撃や金正日総書記の爆殺ないし謀殺に至る軍事作戦の発動を検討したが、韓国の金泳三大統領の「そんなことをしたら南北全面戦争、引いては第3次世界大戦になりかねない」との体を張った抑制でブレーキがかかり、米朝枠組み合意によるKEDO設立へと流れることになる。
しかし、この第1次北朝鮮核危機の間に日本政府は、米軍がそのような強硬策に出た場合、韓国から22万人、北朝鮮からは5万人の避難民が日本に向かって押し寄せる可能性があると想定。実際にありうるシナリオとして、北朝鮮の難民に特殊部隊が紛れ込んで離島を占拠し、そこを前進基地として本土のインフラ破壊などのテロを働いたらどうするのか、その場合に日本国内の朝鮮総連系の活動グループが呼応するのではないか――といった妄想世界に彷徨ってしまい、それを「K半島事態対処計画」という形で文書化までするのである。
私の見るところ、細川政権から村山政権にかけてのこの時期、一方では……、
▼田邉誠社会党委員長による「21世紀の国連と日本の安全保障」で自衛隊縮少3分割提案(92年11月)
▼前田哲男・山口二郎らの「平和基本法」下での「アジア・太平洋地域安保」の提唱(『世界』93年4月号、94年12月号)
▼経済同友会「新しい国家像」委員会(堤清二委員長)の国連中心の総合安保提唱
▼細川護煕首相の諮問機関「防衛問題懇話会」のいわゆる「樋口レポート」での日安保依存脱却模索(94年8月に村山富市首相に提出)
――など、冷戦の遺物である日米安保体制の呪縛を断ち切って行こうとする戦略論的な営みが盛んになったのに対し〔注〕、他方では、外務省・防衛庁を中心により一層日米安保にしがみ付いて既存の枠組みを死守しようとする傾向が深まるという、二極分解が起きた。後者の典型が「K半島事態対処計画」で、これによって日本はポスト冷戦の到来を自分の頭で安全保障を考えるようになるためのきっかけとすることに失敗したのである。〔続く〕
〔注〕東アジア共同体研究所編『なぜ、いま東アジア共同体なのか』第2章の高野稿「リベラル派の21世紀戦略としての『東アジア共同体』構想」、P.126~参照
マイコメント
現在の世界情勢において日本が他国から侵略を受けることは著者が言うように100%あり得ない。
それよりも現在は情報戦が主であり、また、現実的に問題となっているようにC国による国内の
土地の買い占め、あるいはハニートラップによる政治家の抱き込みの方がはるかに大きい。
これはトロイ戦争におけるトロイの木馬と同じやり方です。
知らず知らずのうちに内部からその国を侵食し手中に収めるというやり方です。
すでに日本は近隣2国に内部から間接支配されてしまっていて動きが取れなくなってきている。
だから、もし、彼らが攻め込んでくるときと言うのはトロイの木馬が成功したときに最終的な
作戦として行われるものです。
今はまだそういう時期ではないのであり得ない話なのです。
ただ数百年後はどうかと言われればあり得なくもない話です。
何とかして日本を戦争に引きずりこんでズタズタにしたいという目論見がそこにあり、そのために
周辺国に脅威を与える様な軍備増強策を進めているのです。
台湾にC国が攻め込めば日本に波及してくる可能性がありますが、米国の軍事力と台湾の持つ隠れ
兵器が存在するのでうかつに攻め込めない状況であり国際世論も看過しないでしょう。
それにコロナ政策がやりすぎで国内が揺れているのでそういう余裕はないでしょう。
だから、他国が日本に攻め込んでくることは現状ではあり得ない話なのです。
むしろ米国に言われれば命令を聞かないといけない日本の現状の方が問題です。
そして、日本弱体化を画策する財務省です。
コメント