ゼレンスキー氏が突如、米国とNATOに無視され始めた最大の理由

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NATOサミット 戦争

ゼレンスキー氏が突如、米国とNATOに無視され始めた最大の理由

米国もNATOも兵器が底をつき始めていて、これまで投入した兵器が役に立たないことを証明してしまった。この袋小路から抜け出す算段は?

孤独の総統

7月11日、リトアニアの首都ヴィリニュスで行われていた NATO 首脳会議で、これまでは熱狂的に歓迎されることもあったウクライナのゼレンスキー大統領が、「各国の首脳たちに無視されている」光景が報じられていました。

冒頭の微笑ましい写真がそれですが、しかしその後、この写真をよく見てみますと、ゼレンスキー大統領の左隣にいる青い服を着た女性は、大統領の奥さまであるオレーナ・ゼレンシカさんではないのかなとも思いましたが、まあ、確証は持てないです。

仮にこのブルーの服の女性がゼレンスキー大統領の奥さまだとすると、奥さまと思しき女性は、彼女の知人らしき女性と談笑していまして、ゼレンスキー大統領は、その談笑を終えるのを待っているという感じなのでしょうか。

ただ、いずれにしても、「ゼレンスキー大統領のもとには誰も寄ってこなかった」という図式においては同じです。

ネット上では、以下のような創作画像も投稿されていましたが、秀逸だと思いました。

海外の SNS 上に投稿されていた編集画像

 

この会場の別の写真でも、憮然とした表情のゼレンスキー大統領の姿が写されていましたが、少なくとも 1年前などは、西側諸国から常に熱狂的な歓迎を受けていたゼレンスキー大統領が、

「なんで、こんなことになったのか」

ということに関しては、いろいろな理由はあるのでしょうけれど、最近その理由の「ひとつ」を最も的確に推測している記事を読みました。

ドミトリー・オルロフ (Dmitry Orlov)さんという人の記事で、ただ、このドミトリー・オルロフさんというのがどんな人なのかは、まったくわかりません。名前からは、ロシア人のようにも思えるのですが、正確なところはわかりません。ただ、オルロフさんのブログのトップページに、「私の著作とエッセイをダウンロードして下さい」と英語で書かれてありましたので、作家ということなんですかね。

記事は大変に長いもので、冒頭は、以下のように始まります。

「信じられないほど縮小し続ける NATO」より

The Incredible Shrinking NATO
Dmitry Orlov 2023/07/15

2023年 7月11~12日にリトアニアのヴィリニュスで開催された NATO 会議でウクライナのマスコット大統領であるゼレンスキー氏がなぜ、あのような不遇をかこったのか。わずか 1年前にスター扱いで取り上げられていた彼は、突然この組織から不評を買ってしまった。

その明白な理由を誰が指摘するのか私は待っていた。

確かに、ウクライナはいつか NATO 加盟という長く困難なプロセスを開始するよう招待されるかもしれないが、それは不特定多数の NATO 加盟国が「NATO基準」に準拠するのに十分な行動をとったと判断した後でなければならない。

2018年9月20日、ウクライナ議会が NATO と EU への加盟を中心目標および主な外交政策目標とする憲法改正を承認したことを念頭に置くと、このような出来事の展開はウクライナにとって、そして、マスコット大統領とその支援者たちにとって最も恥ずかしいことであるといえる。

 

そして、ここからドミトリー・オルロフさんは長く理由を書き始めるのですが、他にもいろいろと理由はあるだろうとはいえ、私が非常に納得したのは、

 

「ウクライナは、この1年半で、NATO の武器が全部ジャンクであり、ロシアにまるで歯が立たないことを証明してしまった」

 

ということです。

アメリカが満を持してウクライナに送った高機動ロケット砲システムの「 HIMARS (ハイマース)」、あるいは、高性能戦車「 M2ブラッドレー歩兵戦車」、または、ドイツが満を持してウクライナに送った戦車レオパルド2

そして、米国が誇るパトリオット・ミサイル

それらは全部ロシアに破壊されました。

NATO は総力を挙げて、あらゆる武器と弾薬をウクライナに送り続けたという現実があります。

戦争の場所はウクライナでも、兵器の面から見れば、「 NATO 対 ロシア」の全面戦争であり、そしてこれは、

 

「 NATO はすべての破壊能力をウクライナに送ったが、ウクライナは結果をまるで出せなかった」

 

という「現実」です。

このことは、世界に対して、「 NATO は、兵器の面ではロシアに歯が立たない」ことを証明してしまったようなものとなっていて、1年半もその状態が続いている。

「そろそろウクライナに対しての忍耐も限界」ということになるのでしょうか。

軍産複合体とか、あるいは武器兵器により富を築いている人は、西側の政権内やその近い人たちにたくさんいると思われます。しかし「弱いと証明された武器は売れなくなる」ということは自明で、そのあたりも関係ありそうです。

 

そもそも、高い機能の兵器は、メンテナンスも操作そのものも専門的な訓練を受けていないと何もなされないものです。

以下の記事で、イラクでブラッドレー戦車を扱っていた退役兵士の投稿から抜粋しています。

(記事) ドイツ外相のロシアへの宣戦布告を聞きながら、全体集団催眠の中で目覚める場所は天国か、それとも地獄か
 In Deep 2023年1月26日

 

しかし、ウクライナの現実は、最近の以下の記事でも取り上げましたように、「手当たり次第に町中の若者を強制的に徴兵している」のが現状です。

 

(記事) 「ウクライナでの非人道的で腐敗した強制徴兵」というハンガリーの報道
 地球の記録 2023年7月17日

 

専門的な訓練も何もない状態で送られている兵士が多いと見られます。

そのようなウクライナの素人兵士たちが、米国と NATO から送られた、まさに大量の武器を使い放題に使い、少なくとも現時点までは「勝てなかった」と。

 

しかも、このこととは別のことですが、最近のエポックタイムズが、軍事情報系の報道を引用して、

「 NATO の武器の在庫が著しく低くなっている」

ことが明らかになったと報じています。

 

こうなることを考えていたのか、考えていなかったのか…

以下は、冒頭部分です。

エポックタイムズ「米国とNATOの武器備蓄は​​「危険なほど低い」レベルだと空軍トップ将軍は述べる」より

米国と NATO 同盟国の武器備蓄は​​「危険なほど不足」しており、「短期的な」解決策はない、と米空軍トップ司令官は語った。

米ヨーロッパ空軍とアフリカ空軍の司令官ジェームズ・ヘッカー大将が、ロンドンで開催された空軍参謀長の世界航空・宇宙長官会議で発言したとブレイキング・ディフェンス紙が報じた

空軍司令官は NATO 同盟国に対し、備蓄について真剣に考えるよう促した。

「 NATO 加盟 32カ国の中で、我々が兵器保有国でどのような状況にあるのかを棚卸しすることが非常に重要だと思うが、我々は以前に比べて、かなり武器備蓄が低下している」とヘッカー大将は講演中に語った。同紙が報じたところによると、会議では英国とスウェーデンの空軍司令官らとパネルディスカッションを行ったという。

同氏は 7月12日の会合で、「おそらく状況は、少なくとも短期では改善しないだろう。だが、長期的には我々が持っているものを増やすことができる産業基盤を確実に確保しなければならない」と語った。

Epoch Times 2023/07/16

 

ウクライナに送りすぎたせいで、NATO 全体に「武器がなくなってきた」ようなのです。

昨年の秋の時点で、ドイツは「自国で戦争が起きた場合、1日か 2日分の弾薬しかない」と報じられていたことがありました。以下に翻訳しています。

(報道) ドイツは弾薬が尽きた (2022/10/11)

 

アメリカも昨年の時点で、先ほど出てきました「 HIMARS (ハイマース)ロケット」を「ウクライナに送りすぎて、全部なくなっちゃった」ことが、報じられていました。

これは軍事分析メディアのディーガルが、ロシアの報道を引用したもので、以下に翻訳しています。

(報道) 米国はHIMARSロケットを使い果たし、ウクライナへの供給を停止した (Deagal 2022/10/23)

 

何も考えていなかったのか、「考えてこうなったのか」は知らないですが、昨年の時点で判明していた武器不足は、ついに「米軍のトップが直接言及する」ほどの武器枯渇の危機となっているようです。

通常の武器が枯渇し始めたからこそ、クラスター爆弾をウクライナに送るというような、国際ルールも何もない行動をアメリカがとったり、核搭載が可能な F16戦闘機をウクライナに提供するといったり、もはや、「米国と NATO は、どうにもならないところまで来ている」ということだと思います。

 

ロシアとウクライナの戦争の結果はわかりません。

しかし、ウクライナには残された時間はほとんどなさそうです。西側から支援を受けられる期間はさほど長くないと見られるからです。良くて年内とか。

先ほどのドミトリー・オルロフさんの記事から抜粋してご紹介します。オルロフさんはいろいろなことを語っているのですが、武器に関しての部分の抜粋です。


 


信じられないほど縮小し続けている NATO

The Incredible Shrinking NATO
Dmitry Orlov 2023/07/15

 

…では、NATOの本当の目的は何だったのだろうか? この質問に答える方法はたくさんあるが、ウクライナの突然の失墜は、おそらく最も生々しい説明を提供している。

戦争が予想より長引いたというこだろうか?

いいえ、ゆっくりと抵抗することは、まさに米国防総省が命じたものであり、それはロシアの多忙な武器と弾薬の配達ペースに追いつく機会を与えるためだ。

ウクライナが戦争に負けたということだろうか?

いいえ、ウクライナは負けていなかった。ただ勝てなかっただけだ。特に、ロシアの防衛線に対する攻撃は、ウクライナ側に莫大で無駄な損害を与えたため、ロシア軍が「肉攻撃」と呼んでいたが、かなり無駄に思えた。

ウクライナが敗北寸前だったということだろうか?

いいえ、ロシア軍はあちこちに数キロ前進しただけだ。その主な目的は、ウクライナ砲兵が現在のロシア民間地区への砲撃を停止するのに十分な広さの緩衝地帯を確立することだった。

NATO がウクライナ人に与える武器や弾薬が足りなくなったのだろうか?

いいえ、ウクライナ人に引き渡される可能性のある…それは半時代遅れのジャンクにしても、まだかなりたくさんある。

では、ウクライナ人は何をしたのか、なぜ、突然、米国防総省の怒りを買い、その直接の結果として NATO への不興を買うことになったのか?

要するに、ウクライナ人は NATO の兵器がすべてジャンクだということを証明してしまったのだ。

この証拠は時間をかけてゆっくりと蓄積されていった。

まず、対空スティンガーや対戦車ジャベリンなど、米国製の肩から発射するさまざまなジャンクは、現代の戦闘では役に立たないというよりも、むしろ悪いことが判明した。

次に、M777 榴弾砲と HIMARS (ハイマース)ロケット複合体はかなり壊れやすく、現場では保守できないことが判明した。

 

ウクライナ問題に投入された次の驚異の兵器はパトリオット・ミサイル砲台であった。これはキエフ近郊に配備されたが、ロシアはすぐにそれをからかい始めた。

ロシア軍は超安価なゼラニウム5 の「空飛ぶ原付」ドローンで攻撃し、アクティブレーダーをオンにして位置を明らかにし、100万ドル相当のロケット弾に発射した。その後、パトリオット・ミサイル砲台は覆面もなく無防備にただそこに鎮座していたが、ロシアの精密ロケット弾一発で消滅した。

このことは、ロイド・オースティン米国防長官を激しく怒らせたことは間違いない。オースティン長官の主な個人的ドル箱は、たまたまパトリオット・ミサイルのメーカーであるレイセオン社だった。

そう、パトリオットは第一次湾岸戦争ですでに役に立たないことが証明されており、イラクのスカッドミサイルからイスラエルを守ることができなかった。そして後に、イエメンのスカッドミサイルからサウジアラビアの石油施設を守ることができなかった。これらにより、それは役に立たなかったことが判明していた。しかし、その事実は(オースティン米国防長官にとっては)宣伝されるべきものではない。

そして今度はこの(ウクライナの)一件だ。

おまけに、愚かなフランス車輪の非戦車は言うまでもなく、ドイツから寄贈されたレオパルト2戦車と米国から寄贈されたブラッドレー歩兵車両は、最近のウクライナによる防衛の第一線でロシアの戦車に接近しようとする試みの中で、まったく悲惨な成績を収めた。

プーチン大統領は、傷口に塩を塗り込みながら、「西側の鎧は古いソ連製のものよりも燃えやすい」と即答した。

最新の必死の策は、ウクライナ空軍(ちなみに、現在は存在しない)に旧式の F-16戦闘機を供与することだろう。これらは最長 50年前のもので、空気取り入れ口が地面に非常に近いという特徴があり、離陸時の「滑走路掃除機」としてなら非常に効果的だ。

ウクライナによくある汚れた穴だらけの滑走路からは、破片がエンジンに吸い込まれて破壊されてしまうため、 F-16戦闘機がウクライナの飛行場から飛行することはできない。

ウクライナが F-16戦闘機のための新しい滑走路を舗装しようとすると、ロシアはウクライナ領土に永久に向けられている静止衛星から即座にこれを発見するだろう。

これらの新しい滑走路に新しい爆弾クレーターをいくつか置くのではなく、もっと巧妙なことをすることもできるだろう。

その方法のひとつは、超安価なゼラニウム2 (無人攻撃機)を使用して、F-16 のエンジンに金属の削りくずをまき散らし、真空にし、飛行中に燃え尽きさせることだ。F-16 は単発飛行機なので、残ったエンジンで足を引きずりながら帰還する可能性はなく、パイロットは脱出しなければならず、飛行機は墜落する。

しかし、ウクライナに F-16を供与するという考えが実行不可能であるさらに重要な理由がある。

これらの航空機は核爆弾を搭載することができ、ロシアはすでにこの措置を核エスカレーションとみなすと発表している。しかし、ロシアとの核紛争を誘発することは禁じられているため、F-16の使用は禁止されている。

なぜ、容赦なく宣伝された西側兵器の失敗が、ますます悲惨になる西側財政の状況、反ロシア制裁のばかばかしい失敗、卑劣なほど膨大な数のウクライナ人死傷者、あるいはあらゆるものに対する西側全体の疲労などより何が重要なのか。

それはは簡単なことだ。NATO は防衛組織ではない (ソ連が消滅して 30年以上が経過していることを思い出してほしい)。また、攻撃的な組織でもない(セルビアやその他の比較的無防備な国々を爆撃したことはあるが、ロシアやその他の十分な武装国と対決することなど考えられない)。

むしろ、NATOは米国製兵器の購入者クラブだ。これが、ウクライナが NATOへの加盟に招待される価値があるとみなされる前に従わなければならない NATO基準のすべてだ。

これらの基準に従うためには、武器のほとんどが米国製でなければならない。それが、セルビアからイラク、アフガニスタン、リビア、シリアに至るまで、様々な戦争が選択された理由でもある。

これらは米国兵器のデモンストレーションプロジェクトであり、武器と弾薬を使い切って国防総省と軍需品を使い果たすというさらなる目標もあった。

NATOの残りの国々はそれらを再配列する必要があるだろう。こうした軍事紛争の地政学的な根拠は単なる合理化にすぎない。たとえば、1964年から 1973年の間、米国は 58万回の爆撃出撃で 250万トン以上の爆弾をラオスに投下した。

これは 9年間、1日24時間、8分ごとに航空機から爆撃したことに相当する。この地政学的な根拠は何だったのか? かつてそんなことがあったかどうかさえ誰も思い出せないのが現実だ。

しかし、当時、それらの爆弾の使用期限が近づいており、資金の流れを維持するには使い切って再注文する必要があった。

…欧州は米国に恐怖の視線を向けているが、米国は依然として武器供給国であり、安全保障の保証人でもある。しかし、米国は、かろうじて機能している老衰の老人がトップを務めており、その激怒のせいで閣僚が大統領執務室を敬遠しており、後任は彼の唯一の可能性である…愚かで、くすくす笑い声を上げているカマラ氏だけだ。

一部のより明晰なヨーロッパの指導者たちは、自分たちが今陥っているロシア嫌悪の袋小路から抜け出す方法を何らかの方法で見つけなければならないことに徐々に気づきつつあるかもしれないが、彼らには、面目を大きく失うことなくそれを達成するための方法が見つからない。

もう一年待って、その時までに彼らにまだ救える顔があるかどうかを見てみよう。

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