ハワイ山火事 乾燥と強風で急拡大 「条件がそろえば日本でも」
東京都は水不足、新潟では土が枯れ稲が変色。格好の舞台が揃いつつある日本。乾燥で山火事が起こされる可能性があります。
米ハワイ・マウイ島の山火事は、住民の避難もままならないほど急速に広がった。現地報道では、そのスピードは1分間で1・6キロに上ったとの情報もあり、非常に強い乾燥状態に強風が重なったことが要因とみられている。日本でも年1000件の山火事が起きており、研究者は「条件がそろえば大規模なものになる可能性がある」と警鐘を鳴らす。
森林火災に詳しい日本大の串田圭司教授(地球環境学)によると、マウイ島では例年5月ごろから降雨がほとんどない乾期に入る。さらに、串田さんが現地の平均風速のデータを調べたところ、8月に入ってから平年よりも強い状況が続いていた。植物の周辺にある湿度の高い空気が飛ばされると乾燥が進みやすくなるため、近年にない乾燥状態だった可能性がある。
串田さんは「乾燥度合いが、一定の値を超えると、山火事は一気に広がる。特に現地は、サバンナに生えているような草地で、燃えやすい植生だったと考えられる」と話した。
今夏は乾燥条件が整っていたことで、急速に乾燥が進み、その度合いも強まることを示す「フラッシュ・ドロート」が起きていたとの現地報道もある。峠嘉哉・京都大特定准教授(水文学)によると、仮にこの現象が起きていたとすれば、火災が起きやすい状況が長く続いていた可能性がある。今後、乾燥度合いや植生の状況など、詳細な調査で明らかにする必要があるという。
この状況で、ハワイの南側をハリケーンが通過し、北側に高気圧があったことによる気圧差で強風に見舞われた。峠さんは「乾燥状態で強風がマウイ島の山から吹き下ろすことで、より火災を拡大させる要因になったとみられる」と強調した。
地球温暖化に伴って、山火事のリスクが上がるという懸念もある。今年に入ってからもカナダで大規模な山火事が起き、米ニューヨークにまで大気汚染が及んだ。「気温が上昇すると空気中に含むことができる水分量が増し、蒸発しやすくなる。ハワイのように山火事が頻発してこなかった地域でも、起きる頻度が上がってきているのかもしれない」(串田さん)という。
日本では春先を中心に山火事が年1000件程度発生する。2021年2月には栃木県足利市で山林167ヘクタールを焼き、付近の住民に避難勧告も出た。峠さんは、条件がそろえば大規模な山火事は起こりえると指摘し、「たき火やたばこ、野焼きなど人為的な要因で出火することがほとんどで、冬場から春先は山林に火を持ち込まないようにすることが大切だ」と話した。【渡辺諒】
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