「アセトアミノフェンによって子どもが自閉症で生まれた」とした数万人の母親たちによる大量訴訟が米国で発生中
アセトアミノフェノンは解熱剤でその副作用。
カロナールと同一有効成分のタイレノールが大訴訟に直面
日本にもありますが、アメリカに「タイレノール」というポピュラーな解熱鎮痛薬があります。これは要するに、アセトアミノフェン製剤であり、日本でいうカロナールと同じです。
> タイレノールはカロナールの成分と同一の市販薬です。通常、薬局・ドラッグストア・オンライン薬局で購入できる解熱鎮痛剤で、成分はアセトアミノフェンです。(k-pharmacy-drugstore.jp)
これは、アスピリンやイブプロフェンなどの、いわゆる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とは異なるもので、「比較的安全」と日本などでも言われることが多く、コロナ社会の中で、日本では、大人子ども問わずに多量に処方されていたと見られます。
しかし、薬は薬ですから、副作用はあります。
わかっている副作用のひとつで重大なもののひとつが、
「妊婦さんが服用すると、赤ちゃんに神経障害や自閉症の可能性が出る」
というものです。
あるいは小さな子どもの服用でも同じと言えると思われます。
以下の In Deep の記事でも、論文などを取り上げてご紹介したことがあります。
(記事)アセトアミノフェン(日本名:カロナール)の妊婦さんと乳幼児の服用は「子どもの自閉症や神経発達の問題の原因になる」エビデンスが示された論文が発表される
In Deep 2022年8月1日
どうやら、アセトアミノフェン(カロナール)には、子どもに対して強い神経毒性がある可能性が高く、最近(2023年6月)の論文でも、以下のようなものがありました。
アセトアミノフェンは感受性の高い乳児や子供に神経発達障害を引き起こす
Acetaminophen causes neurodevelopmental injury in susceptible babies and children: no valid rationale for controversy
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov 2023/06/14概要
アセトアミノフェンは小児科の分野で必要な薬として世界中で受け入れられているにもかかわらず、幼少期のアセトアミノフェンへの曝露が感受性の高い乳児や小児に神経発達障害を引き起こすというエビデンスが 10年以上増加している。
産前産後の証拠が考慮され、産前期のリスクのみを示す限られた証拠のみを考慮することによって引き起こされる論争を回避しても、他の問題の中で、アセトアミノフェンの使用と神経発達障害の有病率との間の経時的な関連性が考慮されている。
…系統的レビューにより、小児集団におけるアセトアミノフェンの使用は決して注意深く追跡されていないことが明らかになったが、この薬物の使用に影響を与えた歴史的出来事は文書化されており、神経発達障害の有病率の変化との明らかな相関関係を確立するには十分である。
さらに、大規模なデータセットのメタ分析の結果や、薬物曝露の短い時間枠を含む研究の結果のみに依存することの問題点も検討されている。さらに、一部の小児がアセトアミノフェン誘発性の神経発達損傷を受けやすい理由を示す証拠が調査されている。
少なくとも考慮された要因の中では、幼少期のアセトアミノフェンへの曝露が感受性の高い乳児や幼児の神経発達障害を引き起こすという結論に関することに、議論の余地はないと結論付けられる。
アセトアミノフェン製剤は、多くの人が極めて気軽に服用する薬剤のひとつですが、このような作用があるとわかっている女性は多くはないように思います。
現在、アメリカで、このアセトアミノフェンが成分である「タイレノール」というアメリカで一般的な市販薬を販売する会社が大規模な「訴訟」を受けています。
「アセトアミノフェンのせいで、子どもが自閉症になった(あるいは自閉症として生まれた)」という訴訟理由です。
訴訟の数は、米ロイターの報道によると、7月の時点で、188件が係争中となっており、別の報道では、数万人の女性が訴訟に参加しているそうです。
この裁判は日本ではまったく報道されないことですけれども、少しでも、「アセトアミノフェン(あるいはカロナール)のリスク」というものを知る人が出てくるといいなとは思います。
私としては、解熱鎮痛剤の役割そのものを否定したいのではなく、「あまりにも安易に服用しすぎている」ということが問題なのだと思います。
アセトアミノフェンは、解熱鎮痛剤であると共に、子どもやお腹の中の赤ちゃんにとっては「神経毒」そのものです。
そういう市販薬は実は多いです。
アメリカの報道のひとつをご紹介します。
ケンビュー社はタイレノールによる自閉症の主張を棄却するよう控訴裁判所に要請できないと判事が判断
Kenvue can’t ask appeals court to toss Tylenol autism claims, judge rules
reuters.com 2023/08/05
ケンビュー社は、同社の人気の市販鎮痛剤タイレノールの使用が自閉症と関係すると主張する訴訟を許可する連邦判事の命令に対して直ちに控訴することはできないと述べた。判事は、タイレノールを妊娠中に摂取した母親の子どもに自閉症を引き起こす可能性があると判決していた。
マンハッタンのデニス・コート連邦地方判事は、元ジョンソン・エンド・ジョンソンの消費者保健部門であるケンビュー社が、最終判決前に第2巡回控訴裁判所への上訴という異例の措置を認める根拠を示さなかったとの判決を下した。
ケンビュー社の広報担当者は声明で、「当社にとって、当社製品を使用する人々の健康と安全以上に重要なことはない」と述べた。「科学的証拠を総合すると、妊娠中のアセトアミノフェンの使用と胎児の発育上の問題との間に因果関係はないことが示されている」とした。
連邦司法委員会は昨年 10月、タイレノールとそのジェネリック医薬品の有効成分であるアセトアミノフェンが自閉症スペクトラム障害や注意欠陥多動性障害を引き起こす可能性があると主張する数十件の訴訟を統合した。
7月17日現在、188件が係争中となっている。
訴訟ではケンビュー社に加えて、CVSヘルス社、ライト・エイド・コープ社など、タイレノールを販売する小売業者や薬局も名指しされている。被告たちは消費者にリスクについて警告しなかったと訴訟側は主張している。
訴訟では、子宮内でアセトアミノフェンに曝露された子どもでは自閉症や ADHD のリスクが高いことが判明した最近の研究を引用している。
デニス・コート連邦地方判事は 4月、アメリカ食品医薬品局によるタイレノールのラベルの承認が州法の主張を先取りするという理由で、訴訟の 1つを却下するというケンビュー社の申し立てを却下した。
もし、連邦地方判事がケンビュー社に有利な判決を下していたら、訴訟全体は終わっていただろう。
その後、コート連邦地方判事は、主張に科学的裏付けが欠けているという理由で却下を求める別のケンビュー社の動議を否認した。
コート連邦地方判事は、小売業者たちが支持したケンビュー社の即時控訴の申し立てを否定し、同社は先取り権取得問題に関して「見解の相違の根拠があると示唆するいかなる権限も指摘していない」と述べた。
連邦地方判事は、原告たちに十分な科学的裏付けがあるかどうかの問題は棄却申し立てで決定することはできないが、訴訟でどのような専門家の証言が認められるかについての公聴会まで待たなければならないだろうと述べた。
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