医療保険料の上乗せ徴収を少子化対策の財源とすることは妥当か?:現役世代の負担は年間約1万4千円と推計
少子化対策と医療保険とは全く用途が異なるのに上乗せするのは国民の反発が少なく取りやすいからだろう。
支援金は医療保険料に上乗せして徴収へ
政府は2024年度からの3年間で、少子化対策を集中的に進める。年間3兆円台半ばの予算を確保し、児童手当の拡充や保育サービスの充実にあてる。
少子化対策の財源は、1)社会保障費の抑制、2)既存予算の活用、3)支援金の3本柱で捻出する、と政府は説明してきた。2028年度までの間に順次確保していく予定だ。確保できるまでの間の財源は、つなぎ国債の「こども特例公債(仮称)」で補うことになる。
当初政府は、少子化対策の規模を年間3兆円としていた。そして、3つの柱それぞれが約1兆円ずつを賄うことを想定していた。しかし、岸田首相が急遽、規模を年間3兆円台半ばに引き上げたことで、財源の配分は不確定となった。
しかし、1)社会保障費の抑制、2)既存予算の活用で追加の予算を捻出することは難しいと考えられることから、3)支援金で1.5兆円程度の財源を賄うことになることが予想される。
支援金は、医療保険料に上乗せして徴収する仕組みとなる見通しだ。各種社会保険の中では、対象が最も広い(生活保護受給者を除くすべての者)ことから、医療保険料に上乗せして少子化対策の財源を徴収することが検討されているのである。医療保険適用者数は、1億2,475.2万人(2022年4月)である(こども家庭庁資料)。ほぼすべてに近い国民が適用者と言える。
少子化対策の現役世代の負担は年間1万3,957円と推定
健康保険(被用者保険)、国民健康保険、後期高齢者医療保険制度(75歳以上および一定の障害がある65歳以上が加入)からなる医療保険全体の保険料の総額は、2024年度時点で24.4兆円と推定される(こども家庭庁資料)。そのうち、後期高齢者医療保険の保険料は1.7兆円と全体の6.97%である。
収入が少ない後期高齢者医療保険対象者が少子化対策で新たに負担する割合は、この6.97%にとどめると仮定する。75歳以上の人口は2,008万人(2023年10月1日、総務省の人口推計)であり、彼ら高齢者世代が少子化対策の年間1.5兆円の6.97%を担うとすると、一人当たり年間5,206.7円の負担となる。
他方、健康保険(被用者保険)、国民健康保険の対象となる現役世代が残りを負担する場合、総額は1兆3,954.5億円となる。これは、後期高齢者医療保険を除く2024年度の医療保険の保険料22.7兆円の6.15%である。健康保険の保険料率は、協会けんぽの平均で毎月の給与と賞与の10.0%であるが、これに上乗せして徴収する場合には、保険料率は10.0%から10.61%に引き上げられる必要がある。このうち半分は企業の負担であることから、個人の負担は、年収の5.0%から5.31%に引き上げられることになる。
給与所得者の平均年間所得は、2022年で457万5,920円である(国税庁、令和4年民間給与実態統計調査)。ここから、支援金を通じた財源確保が1.5兆円の場合、少子化対策の現役世代の負担は年間1万3,957円、約1万4千円となる計算だ。
社会保険制度の考え方に照らしておかしくないか
医療保険料の上乗せによる徴収は、医療保険料を引き上げたうえで、それを少子化対策に流用することに、実質的にはなるのではないか。保険制度は、加入者が支払う保険料の総額が、その加入者が受け取る給付総額の期待値と一致するのが基本だろう。この場合、医療保険料を上乗せするのであれば、将来受ける医療保険サービスの拡充と見あってなければおかしいことになる。
ところが、医療保険料の上乗せ分を少子化対策に利用する場合には、受益者は子育て世代に限られ、子どもがいない世帯、子どもが成人した世代などは、負担をするのみでベネフィットは得られないことになる。支援金については、まずは妊娠・出産期から2歳までの支援事業に充てることが検討されている。その場合、受益期間はかなり短くなる。
このように、加入者に幅広く保険料負担が及ぶ一方、受益者は限定的であることは、社会保険の考え方からすればおかしいのではないか。政府はそれを、「所得の再配分」機能と説明しているようだが、それならば、使途が特定されない税収を充てるべきである。
少子化対策を社会保険料の増加で賄うのは、増税よりも国民の反発が小さく、政治的な打撃が小さいからではないか。しかし、少子化対策が日本の将来にとって極めて重要であり、国民の間にもそうしたコンセンサスがあるのであれば、政府はその財源を税収に求めるべきだろう。増税から逃げるべきではない。
まいこめんと
今国民は増税というやり方にはものすごく敏感でピリピリしているので政府は少子化対策に
増税案は出しにくいと考えていることは確かです。
そこで、医療保険に上乗せする案を出してきたのだが、その後マスコミで取り上げられる
ことはそう多くなく、国民も医療保険なら仕方がないと思っているような節がある。
医療保険という聞こえの良い言葉で騙されているのだと思います。
これを健康保険と言えば国民もまた上がるのかといぶかるところだが、随分反感を買わない
やり方がないかと研究したようです。
しかも医療保険(健康保険料)は税金と違い、収入から基礎控除だけ引いた金額に料率が
かけられるので税金よりも負担が重いことが特徴です。
収入は少なければ所得税や住民税はゼロに出来るが今回の医療保険の場合は全国民に一定
額の負担を求めるものになるだろうから消費税と同じやり方です。
収入の多さに比例したものではないと言うことです。
これだとますます低所得者は困窮するばかりです。
本当にこういう案を出してきた官僚や財務省はものすごく悪知恵の働く集団だと思います。
国民生活よりも彼らの利得だけしか考えていない。
そもそも少子化の原因をまるっきりわかっていない。
子育てに支援しても子どもは増えないのです。
子育ての前提となる収入が少ないから結婚を諦めるので子供が増えないということが
全く理解できていない。
結婚して子どもを産めば支援金がもらえますよと言われても生んだ後の養育費と教育費
を払っていけない世帯の方が多いのです。
かえって苦しい生活になり、生まれた子供の方が可哀そうな目に遭います。
1.5兆円を国会議員の給与や歳費を3割減らして充当すべきだろう。
3割減らしたって政治家は政党支援金や政治献金などがあるから困らないはずです。
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