東京都が小児の「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」流行警報を感染症法が施行された1999年以来初めて発表

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A軍溶血レンサ球菌 感染症

東京都が小児の「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」流行警報を感染症法が施行された1999年以来初めて発表

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎が流行 都内で警報基準に達する

以下は、2023年の東京都のA型レンサ球菌咽頭炎の推移です。

2022年と2023年のA型レンサ球菌咽頭炎報告数の比較

東京都健康安全研究センター

東京都 2023/12/21

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)は、例年「春から初夏」にかけてと「冬」に学童期の小児に流行する感染症ですが、都内の小児科定点からの第50週(12月11日から12月17日まで)における患者報告で、警報レベルにある保健所の管内人口の合計が都全体の人口の30%超となり、都全体としての警報基準に達しました。今後、さらに流行が拡大する可能性もあるため、十分な注意が必要です。

なお、都内のA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の患者報告が都全体としての警報基準に達するのは、感染症法が施行された1999年以来初めてのことです。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は主に飛沫感染と接触感染により感染します。予防、拡大防止のために、引き続き、こまめな手洗いや咳エチケット等の基本的な感染防止対策を一人ひとりが心がけてください。咽頭痛がある場合は早めに医療機関等を受診し、検査を受けましょう。

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の患者発生状況

・小児科定点医療機関から報告されたA群溶血性レンサ球菌咽頭炎の患者数を保健所単位で集計し、1定点当たり8.0人/週を超えると警報開始となります。警報は4.0人/週を下回る(警報終息)まで継続し、警報開始から警報終息までの間の状態を「警報レベル」としています。

・2023年第50週(12月11日から12月17日まで)の都内264か所の小児科定点医療機関から報告された定点当たり患者報告数(都内全体)は6.05人(/週)となっています。

保健所別の患者報告数が警報レベルにあるのは、31保健所中8保健所で、管内人口の合計は、東京都全体の30.0%【注】になります。

・【注】8保健所の管内人口合計4,219,378人/東京都全体人口14,063,564人=30.002%

A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは

 A群溶血性レンサ球菌は、上気道炎や化膿性皮膚感染症などの原因菌としてよくみられるグラム陽性菌で、菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状 を引き起こす。

日常よくみられる疾患として、急性咽頭炎の他、膿痂疹、蜂巣織炎、あるいは特殊な病型として猩紅熱がある。これら以外にも中耳炎、肺炎、化 膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎などを起こす。また、菌の直接の作用でなく、免疫学的機序を介して、リウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こすことが知られている。 さらに、発症機序、病態生理は不明であるが、軟部組織壊死を伴い、敗血症性ショックを来たす劇症型溶血性レンサ球菌感染症(レンサ球菌性毒素性ショック症 候群)は重篤な病態として問題である。ここでは、感染症法下における感染症発生動向調査で、4類感染症定点把握疾患となっているA群溶血性レンサ球菌咽頭炎について述べる。

疫 学
 A群溶血性レンサ球菌感染症は温帯地域では普遍的な疾患であり、亜熱帯地域でもみられるが、熱帯地域ではまれな疾患である。
 A群溶血性レンサ球菌咽頭炎はいずれの年齢でも起こり得るが、学童期の小児に最も多く、3歳以下や成人では典型的な臨床像を呈する症例は少ない。感染症 発生動向調査のデータによると、冬季および春から初夏にかけての2 つの報告数のピークが認められている。近年、全体の報告数が増加する傾向にあるが、迅速診断キットの普及などで診断技術が向上したことによる可能性もあ る。
 本疾患は通常、患者との接触を介して伝播するため、ヒトとヒトとの接触の機会が増加するときに起こりやすく、家庭、学校などの集団での感染も多い。感染 性は急性期にもっとも強く、その後徐々に減弱する。急性期の感染率については兄弟での間が最も高率で、25%と報告されている。学校での咽頭培養を用いた 研究によると、健康保菌者が15 〜30%あると報告されているが、健康保菌者からの感染はまれと考えられている。

病原体
 レンサ球菌はグラム陽性球菌で、細胞壁の多糖体の抗原性によりLancefield A〜V 群(I, J は除く)分類されている。本疾患の原因菌はこのうちのA群に属し、ヒツジ赤血球加血液寒天培地上でβ溶血(完全溶血)をおこすので、A群β溶血性レンサ球 菌(溶連菌)と呼ばれる(α溶血は不完全溶血、γ溶血は非溶血を指す)。菌種名としては化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes ) が使用される。A群溶血性レンサ球菌のほとんどは細胞表層に蛋白抗原としてM 蛋白とT 蛋白を有しており、これらの抗原性により、さらに型別分類される。M蛋白には100以上の型が、T蛋白には約5 0 の型が知られている。また、この菌は溶血毒素、発熱毒素(発赤毒素)、核酸分解酵素、ストレプトキナーゼなど、種々の活性蛋白物質を産生して細胞外に分泌 し、種々の症状を起こすと考えられている。

臨床症状
 潜伏期は2〜5日であるが、潜伏期での感染性については不明である。突然の発熱と全身倦怠感、咽頭痛によって発症し、しばしば嘔吐を伴う。咽頭壁は浮腫状で扁桃は浸出を伴い、軟口蓋の小点状出血あるいは苺舌(写真1)がみられることがある。
 猩紅熱の場合、発熱開始後12 〜24 時間すると点状紅斑様、日焼け様の皮疹が出現する(写真2)。針頭大の皮疹により、 皮膚に紙ヤスリ様の手触りを与える(sandpaper rash )ことがある。特に腋窩、ソケイ部など皮膚のしわの部分に多く、これに沿って線が入っているようにみえる(Pastia’s sign )こともある。顔面では通常このような皮疹は見られず、額と頬が紅潮し、口の周りのみ蒼白にみえる(口囲蒼白)ことが特徴的である(写真2)。 また、舌の変化として、発症早期には白苔に覆われた舌(white strawberry tongue )がみられ、その後白苔が剥離して苺舌(red strawberry tongue )となる。1週目の終わり頃から顔面より皮膚の膜様落屑が始まり、3週目までに全身に広がる。
 合併症として、肺炎、髄膜炎、敗血症などの化膿性疾患、あるいはリウマチ熱、急性糸球体腎炎などの非化膿性疾患を生ずることもある。

病原診断
 咽頭培養により菌を分離することが基本であるが、A 群多糖体抗原を検出する迅速診断キットも利用できる。迅速診断キットの特異度は一般的に高く、また感度は80%以上であるが、抗原量すなわち菌量に依存するため、咽頭擦過物の採取方法が重要である。
 血清学的には抗streptolysin‐O 抗体(ASO)、抗streptokinase 抗体(ASK)などの抗体上昇を見る方法があり、診断の参考になる。

治療・予防

写真1. 典型的な苺舌

     写真2. 猩紅熱での体幹部、顔面の発疹と口囲蒼白

 治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬であるが、アレルギーがある場合にはエリスロマイシンが適応となり、また第1世代のセフェムも使 用可能である。いずれの薬剤も少なくとも10日間は確実に投与することが必要である。除菌 が思わしくない例では、クリンダマイシン、アモキシシリン/クラブラン酸、あるいは第2世代以降のセフェム剤も使用される。
 予防としては、患者との濃厚接触をさけることが最も重要であり、うがい、手洗いなどの一般的な予防法も励行する。接触者に対する対応としては、集団発生などの特殊な状況では接触者の咽頭培養を行い、陽性であれば治療を行う。

 

感染症法における取り扱い(2012年7月更新)

定点報告対象(5類感染症)であり、指定届出機関(全国約3,000カ所の小児科定点医療機関)は週毎に保健所に届け出なければならない。

届出基準はこちら

 

学校保健安全法における取り扱い(2012年3月30日現在)

明確には定められていないが、条件によっては、第3種の感染症の「その他の感染症」として、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまでの期間の出席停止の措置が必要と考えられる。

 

(国立感染症研究所感染症情報センター)

→https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/340-group-a-streptococcus-intro.html

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