狂った”計算”、「自民の使い捨て」で野党でも孤立化
国民民主党の玉木雄一郎代表が、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」凍結解除をめぐる自民、公明両党との協議離脱を決断したことが、与野党に複雑な波紋を広げている。
これまで、予算案賛成などで与党にすり寄り、次期衆院選後の「政権入り」も取り沙汰された玉木氏の、唐突に見えた“変身”。その裏舞台には、「岸田文雄首相をはじめ与野党最高幹部らの“権謀術数”が渦巻いている」(自民長老)との見方が少なくないからだ。
当の玉木氏は、協議離脱について「岸田首相に『トリガー解除』の余裕がなくなったことが原因。まさに『約束違反』で、離脱は当然」と岸田首相の“裏切り”をなじる。そのうえで、トリガー凍結解除という「政策目標」の実現に向け、一転して旧民主党時代の「仲間」の立憲民主党の協力が必要と秋波を送った。
これに対し、岡田克也・立憲民主幹事長は「考え方を改め、野党がまとまっていくべきだと考えるなら、懐深く対応していきたい」と国民との連携に意欲を示したうえで「国民民主の吸収合併」にも言及した。
これには国民民主幹部が「上から目線」などと猛反発、玉木氏も「ああいう発言ではますます(連携が)難しくなる」と不快感を隠さず、双方の感情のもつれが露呈した。このため、永田町では「自民に使い捨てにされ、立憲にも見放されたのが玉木氏。まさに一人芝居の果ての自滅」(自民長老)との厳しい指摘も広がる。
「岸田首相の裏切り」と協議離脱決断
玉木氏は2月6日、衆議院予算委で岸田首相に対し、高騰する燃油価格抑制のための補助金の期限が4月末までとなっていることを踏まえ、「ただちにトリガー条項の凍結を解除してほしい」と迫った。しかし、岸田首相は「3党の検討チームにおいて、ぜひ検討させたい」などと言質を与えずにのらりくらりとかわし続けた。
これに憤慨した玉木氏は、質疑終了後、記者団に対し「5月以降、トリガーの発動のメドがなければ協議を継続する意味がない。協議の離脱を決断せざるを得ない」と自民、公明、国民民主の3党協議からの離脱を宣言。
これを受けて、国民民主は7日の党会合で協議離脱を正式決定。トリガー条項の凍結解除に「政治生命をかける」として自公との協議を進めてきた玉木氏に対する「責任論」も出なかった。それも踏まえて玉木氏は、記者団に「派閥の裏金問題が自民党の政策推進力や調整力を著しく低下させ、難しい減税政策を進められなくなった」と自民に“責任転嫁”した。
ただ、今回の玉木氏主導の協議離脱劇について、昨年末、玉木氏との路線対立から国民民主を離党し、「教育無償化を実現する会」という新党を結成した前原誠司前国民民主代表代行は、翌8日の記者会見で「玉木代表は何らかのけじめが必要だ」と皮肉るとともに、「自民党にすり寄っても相手にされなかった。(政治的に)非常識だったということ」と批判した。
「考え方を改め」との岡田発言にも反発
こうした経過を受けて、国民民主は12日、東京都内に所属国会議員と支持者約350人を集めて開いた定期党大会で「政策本位で協力できる政党とは与野党を問わず連携するが、『正直な政治』が大前提」とする2024年度活動方針を決定。ただ、玉木氏はあいさつで「裏金問題は政治への信頼を根底から揺るがす大問題」と厳しく批判するなど、これまでの与党寄りの姿勢を事実上修正してみせた。
これに先立ち岡田・立憲民主幹事長は10日、国民民主の路線転換について「考え方を改め、野党がまとまっていくべきだと考えるなら、懐深く対応していきたい」と国民との連携に意欲を示した。ただ、玉木氏は12日の定期党大会後の記者会見で、岡田氏の「考えを改めるなら」との発言について「(岡田発言で)ますます(連携は)難しくなる。わが党の中にも思いがあるということに、もう少し理解と配慮をいただきたい」と不快感を示した。
そのうえで玉木氏は、立憲と国民の合流の可能性について「安全保障やエネルギー、憲法などの基本的政策について一致できる政党があれば、『連立』は可能だが、現在の立憲民主はそれを満たしていない」と指摘し、「今、ともに政権を担う政党とは考えていない。一致させるために議論する用意はあるが、そういう話は来ない」と突き放した。
そもそも、玉木氏は与党との協議離脱を決断した6日、立憲幹部に4月の衆参統一補選での連携を持ち掛け、両党は14日にも党首会談を行うべく調整に入ったが、10日の「岡田発言」への国民民主の反発で頓挫し、玉木氏は13日の泉健太・立憲代表との電話会談で協議見合わせの意向を伝えたとされる。その際玉木氏は、国民民主がトリガー発動に必要な法案を日本維新の会と共同提出した経緯を踏まえ、立憲との協議先行に否定的態度も示したという。
立憲・国民との3党連携は「ナンセンス」と維新
こうした経緯から玉木氏は14日、立憲、維新との連携について「3党で何らかの形で議論したり会ったりすることは否定しない」として、今後は3野党連携を模索する考えも示した。ただ、馬場伸幸・維新代表は15日、「トリガー条項」発動で泉氏から協議呼びかけがあったことを明らかにしたうえで、「今さら、(立憲、国民、維新の)3党で与党側に(トリガー条項発動要求を)突き付けていくのは、非常にナンセンス」と3党連携を全否定した。
こうして、「トリガー凍結解除で右顧左眄の果てに孤立化した玉木氏」(自民長老)について、有力な政治アナリストは「次期衆院選での党の生き残りに懸ける玉木氏が、『裏金事件で国民に見放された自民と組むより、野党と連携したほうが得だ』と考えた結果」と分析。
併せて、自民党のつれない対応についても「改憲や防衛政策で抵抗する公明を牽制するために国民民主の取り込みに動いたが、裏金事件への国民批判で次期衆院選に向けた公明との関係強化が不可欠となり、国民民主どころではなくなったのでは」と解説する。
そもそもここ数十年の政治史を振り返ると、「与(よ)党と野(や)党の間に位置する国民民主のような(ゆ)党は、いずれも一定期間存続後、賞味期限切れで消滅した」(自民長老)のが実態。玉木氏については「もともと自民党からの出馬がかなわず、当時の民主党から中央政界入りした」(同)との指摘もあり、旧民主党政権崩壊後の分裂騒ぎの中で「自民一強政権に潜り込むチャンスを狙ってきた」(閣僚経験者)との見方が少なくない。
だからこそ、「トリガー凍結解除という『国民的人気商品』を自らの自民への売り込み材料に使った」(同)わけだが、「その思惑は昨年末からの巨額裏金事件での元の木阿弥」になった」(同)格好だ。こうした玉木氏の対応に、最新の一部メディア世論調査では国民民主の政党支持率が半減しており、当面は「玉木氏が孤立脱出の妙手を打ち出せるかどうか」が注目されることになる。
マイコメント
トリガー条項の鍵を握っているのは岸田総理ではなく財務省だということです。
岸田総理が財務省に頭が上がらないのであればいくら協議を続けても意味がないということで
あり、自民・公明両党との協議を離脱したことは正しいと言える。
残念なのは玉木氏がトリガー条項解除の意向(本来は国民をなだめるポーズだけ)の真意を
汲み取れず騙されたことです。
故安倍総理のような権力があれば、財務省に抵抗できたのかもしれませんが、いかんせん
政党の代表というだけでは財務省に相手にされず、当然岸田総理も態度を明確にせずいつまでも
曖昧にして逃げてばかりでしょう。
4月末の補助金切れに対応してトリガー条項を解除するとは到底思えず、むしろ岸田総理の
野党分断工作という気がします。
玉木氏はそれが読めなかったのだから甘いと言わざるを得ないでしょう。
コメント