スウェーデンが国民全世帯に配布した「危機/戦争への備えのパンフレット」

スポンサーリンク
危機に備える防災読本 世界の出来事

スウェーデンが国民全世帯に配布した「危機/戦争への備えのパンフレット」

戦争、自然災害、メガ太陽フレアへの準備の内容は、ほぼ同じだということ

食料・水・通信

スウェーデンで、すべての世帯、つまり国民すべてに対して「戦争や緊急事態への準備を促すパンフレット」が配布されていることを知りました。

以下の表紙で、全11ページの書類です。

パンフレット「危機か戦争が来たら」

IF CRISIS OR WAR COMES

スウェーデンでは比較的最近、スウェーデン軍総司令官が、「スウェーデン国民は戦争に備える必要がある」と述べたことが報じられていたことがあります。

報道「なぜスウェーデンは国民に戦争の準備をするように言っているのだろうか」より

スウェーデン軍総司令官ミカエル・ビデン将軍は、スウェーデンが NATO 加盟に向けて進む中、すべてのスウェーデン人は戦争の可能性に精神的に備える必要があると述べた。ポーランドやドイツを含む加盟国は、今後 10年以内にロシアが軍事同盟に参加した国々を攻撃する可能性があると述べている。

ビデン将軍は「ロシアの対ウクライナ戦争は単なるステップであり、最終目標ではない」と警告した。スウェーデンの野党議員らは、このメッセージの伝え方を批判している。

1月7日にスウェーデンで開催された年次安全保障・防衛会議で、同国の民間国防大臣カール・オスカー・ボーリン氏は出席者たちに「スウェーデンで戦争が起こる可能性がある」と語った。スウェーデンの国防長官ミカエル・ビデン氏もボーリン氏に同調し、スウェーデン国民はその可能性に備えて心の準備をすべきだと述べた。

globalaffairs.org


スウェーデンでは、完全な徴兵制の再開も進められています。

[記事]スウェーデンが完全な徴兵制度の再開へ
BDW 2024年1月23日

そして、「緊急事態に備えるためのパンフレット」が国民全体に配布されました。

発行しているのはスウェーデン民間緊急事態庁(MBS)ですが、これがいつ発行されたものかについては、民間緊急事態庁の該当ページの更新が、2021年11月8日となっていますので、その頃のようです。パンデミックの渦中ですね。

民間緊急事態庁のページによると、冷戦時の 1961年に同様のパンフレットが国民に配布されたのが最後ということで、60年ぶりに復活したようです。さらに、スウェーデンの報道では、次の更新について、以下のように報じられていました。

新しいバージョンのパンフレット「危機か戦争が来たら」がこの秋、スウェーデンの全世帯に郵送される予定だ。

スウェーデンラジオニュースによると、民間緊急事態庁は 10月の配布に向けて最新のパンフレットを作成中だという。

sverigesradio.se


このパンフレットのうち、最初の 3ページをご紹介します。


 


危機か戦争が来たら

(ページ1)

スウェーデンの方々へ

このパンフレットはスウェーデン政府の要請により、スウェーデンの全世帯に送られています。 スウェーデン民間緊急事態庁(MSB)がその内容に責任を負います。

このパンフレットの目的は、重大な事故、異常気象、IT 攻撃から軍事紛争に至るまで、あらゆるものに対して私たちがよりよく備えることができるようにすることです。

先の見えない世界に直面すると、不安を感じる人も多いのではないでしょうか。 スウェーデンは他の多くの国に比べて安全ですが、私たちの安全と独立に対する脅威は依然として存在します。 平和、自由、民主主義は、私たちが日々守り強化しなければならない価値観です。

公的機関、郡議会および地域、地方自治体、企業および組織は、社会の機能を確保する責任があります。 しかし、スウェーデンに住むすべての人々もまた、我が国の安全と安心に対する共同責任を共有しています。

私たちが脅威にさらされているとき、互いに助け合おうとする姿勢は、私たちの最も重要な財産の 1つです。備えがあれば、大きな緊張に対処する国全体の能力の向上に貢献することになります。

このパンフレットは保管しておいてください。

 

(ページ2)

あなたがたの日常が一変したらどうしますか?

緊急事態が発生すると、社会がこれまでどおりに機能しなくなる可能性があります。また、気候変動により、洪水や森林火災がより一般的になる可能性があります。

世界の他の地域での事件により、特定の食料品が不足する可能性があります。 重要な ITシステムに障害が発生すると、電力供給に影響が出る可能性があります。

これらのようなことは、ほんの短期間で日常生活に問題を生じさせる可能性があるものです。

また、以下のような事態が発生する可能性があります。

・暖房が作動しなくなる。

・食べ物の調理や保存が難しくなる。

・食料品やその他の商品が品切れになる場合がある。

・蛇口やトイレから水が出なくなることがある。

・満タンに給油することができない。

・支払い用カードと現金自動預け払い機が機能しなくなる。

・モバイル ネットワークとインターネットが機能しなくなる。

・公共交通機関やその他の交通手段が停止する。

・薬や医療品の入手が困難になる。

 

(ページ3)

あなたの緊急時の備え

あなたの自治体は、社会的混乱が発生した場合でも、サービスが機能し続けることを保証する責任があります。

これには、高齢者の介護、給水、消防救助サービス、学校などのサービスが含まれます。 私人としてあなたがたすべてにも責任があります。 正しく準備をしておけば、原因が何であれ、困難な状況に対処できるようになります。

社会的緊急事態が発生した場合、最も支援を必要とする人々に最初に支援が提供されますが、大多数の人々は、しばらくは自力で対処する覚悟が必要です。 準備ができていればいるほど、同じ対処能力を持たない人たちを助ける機会も多くなります。

 

最も重要なことは、水、食料、暖房があり、当局やメディアから情報を入手できる方法を確保することです。 親戚と連絡を取れるようにすることも必要です。 このパンフレットの 10ページと11ページには、家庭にあるとよい食材やアイテムのチェックリストがあります。


 

ここまでです。

上にあります通りに、10ページと11ページには、「用意しておくべきもの」のチェックリストがありますが、

・食料
・水
・暖房
・コミュニケーション手段

などのカテゴリーにそれぞれに数多くの項目があります。

暖房というのは、冬が厳しい北欧ならではですが、日本でも、真冬の北日本では、「電気の必要のない暖房の確保」は必須になります。

そして、このスウェーデンのパンフレットを見ていますと、

「準備しておいたほうがいいものの多くが、巨大な太陽フレアへの準備と似ている」

ことに気づきます。

 

戦争、自然災害、太陽フレア。準備の内容はほぼ同じ

太陽フレアへの準備については、ちょうど 2年前の以下の記事の後半でふれています。

[記事]太陽、食糧、そして準備
In Deep 2022年2月24日

 

ここに、[超巨大な太陽嵐が地球を直撃した際に想定されること]としてリストを挙げています。

超巨大な太陽嵐が地球を直撃した際に想定されること

・電力送電網の破壊による完全な停電(短期の復旧は見込めない)

・通信(電話、携帯、インターネット)の崩壊

・放送網(テレビ、ラジオ)の崩壊

・コンピュータに依存するシステム(軍事、銀行、医療、すべてのインフラ)の停止

・移動手段(車、電車、航空機等)の停止(短期の復旧は見込めない)

・物流、食料供給の停止


これは太陽フレアによる強い磁気嵐によって、伝記や通信のインフラがクラッシュすることによるものですが、しかし、

「原因が何であろうと、同じことが起き得る」

ことを、スウェーデンのパンフレットは述べています。

戦争での攻撃でも、巨大な自然災害による被害でも、上記のリストと同じようなことは起きます。ただし、太陽嵐によるダメージは、復旧が簡単にはいかないので、太陽による被害が最も致命的ですが、「発生する」という観点では、どんなことでも起き得ます。

スウェーデンのパンフレットでもふれられていて、先ほどの太陽フレアの記事でもふれていることとして、最も重要なのは以下です。

 

・食料(常温で保存可能なもの)

・加熱手段(電気が必要ないもの)

・水(飲料と、飲料ではないものも含めて)

・暖房(電気が必要ないもの)

・通信と情報取得手段(携帯やラジオなど)

・必要な場合は、医薬品

 

非常事態が短期間で終わる場合は重装備でなくとも大丈夫でしょうが、巨大な太陽フレアの直撃などの場合、数か月単位でブラックアウトしたままの可能性もあります(つまり、そのくらいの期間、一切の物資の輸送や電力の供給がない)。

スウェーデンは、ロシアをイメージした戦争的な緊急事態を想定しているようですが、日本の場合も、隣に中国や、あるいは北朝鮮といった国々があります。日本が直接のターゲットにならなくとも、有事があれば物流の大混乱は避けられません。

(参考記事)「中国共産党は意図的に中国経済を弱体化させている」という理論の納得感。そして、中国は「鎖国」と「戦争状態」に至る
In Deep 2024年2月16日

(参考記事)「金正恩氏は戦争の準備をしているのか?」という東アジア分析専門家たちによる米国の記事
地球の記録 2024年1月24日

 

物資不足は、その原因が自然災害だろうが戦争だろうが、「一瞬で発生」します。2011年3月11日の地震の「翌日」からの関東以北の物流の停止や、パンデミック最初期の「スーパーから物が消えた」ときなどを思い出しましても、あっという間に発生します。

ただ、巨大な太陽フレアの直撃の場合、電気系統が完全に麻痺して、スーパーなどの営業そのものが不可能になりますので(店をオープンすることさえできない)、むしろ混乱はないのかもしれませんが。

災害にしろ戦争にしろ、その問題がすぐに解決するような問題であれば物流もすぐに復活するでしょうけれど、これから起こ得るさまざまなことは、そう簡単に終わるものかどうかはわからないです。

本格的な危機が 2024年に起きるのか 2025年に起きるのか、それ以降に起きるのかはわからないですが、いつ起きても不思議ではないとは言えます。

スウェーデンは全世帯に、先ほどの緊急事態用の対処パンフレットを配布していますので、ある程度の準備をしている世帯が多そうですが、日本はどうでしょうかね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました