新紙幣の対応に100万円かかる!? 「しんどい。これ以上は…」ラーメン店の嘆き
新紙幣発行まで5か月を切った今、ラーメン店だけでない券売機の更新費用が重くのしかかる。
7月の新紙幣発行まで5カ月を切り、飲食店などでは対応する券売機への更新に迫られている。更新には1台当たり100万円以上かかるケースが多いとされ、既に原材料の高騰に直面している個人経営の事業者からは「負担が重すぎる」と悲鳴が上がる。対策として小規模店が多い東京都葛飾区は、全国でも珍しい更新費用の補助に乗り出す。(加藤健太)
◆ただでさえ物価高騰で苦しいのに
「いっぺんに100万円はしんどい。これ以上は価格に転嫁できない」。東京・亀有のラーメン店「○菅(まるすが)」のオーナー菅原哲男さん(44)が嘆く。1日70キロ使うモヤシをはじめ、材料費は1.5倍に高騰。昨秋にやむなく最大50円値上げした。それでも1杯の原価率は4割を超え「利益がほとんどない」。追い打ちをかけるように券売機の更新を余儀なくされる。
新紙幣発行の前後は機種代が高値で推移するとみて、しばらくは券売機を更新せず、新紙幣の客には手作業で旧紙幣と交換するつもりだ。「手間がかかるが仕方ない」と不満をのみ込むように話した。棚田史人店長(45)は「偽札の事件は、ほとんど聞かない。お札の刷新は、そんなに差し迫っているのだろうか」とため息をついた。
券売機販売大手のエルコム(大田区)によると、○菅で使っているような1000円札のみに対応した券売機は、更新に70万円。5000円札や1万円札に対応させたり、キャッシュレス決済の機能を付けたりすると、追加で各50万円かかる。多くの場合、更新費用は100万円を超えるという。
◆自治体の補助制度もでき始めた
更新を後押ししようと葛飾区は2月、更新にかかる費用の半額を、30万円を上限に補助する方針を打ち出した。新年度予算案に6600万円を計上。区は、都内で初とみる。全国では愛知県大口町が昨年9月から50万円まで補助している。
区内には昔ながらの商店街が残る。区によると、卸・小売業のうち従業員4人以下の事業所が6割を占め、23区内で2番目に割合が高い。券売機を置く麺類などの店は約200店あり、区商工振興課の三山覚課長は「券売機の更新が滞ると客も不便。スムーズな移行を促したい」と語る。
中小企業庁によると、インボイス(適格請求書)制度に対応した会計ソフトなどの導入に合わせて券売機も購入すると、上限20万円のIT導入補助金が使える可能性がある。活用しても、事業所は1台当たり数十万円の負担を強いられる。
新紙幣 7月3日からデザインを一新した3種類を発行する。刷新は2004年以来20年ぶり。表の肖像は1万円札が渋沢栄一、5000円札が津田梅子、1000円札が北里柴三郎。財務省によると、偽造防止が主な目的。大きく進歩している偽造する側の技術に対抗するため、3次元で回転して見える肖像画を世界で初めて採用する。新紙幣発行後も現行の紙幣は引き続き使える。
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