尖閣沖で続く神経戦◆日中、繰り広げられる攻防=石垣市海洋調査に同行
日本人が知らない尖閣沖での攻防!いつか武力行使に現実になるかも!
沖縄県石垣島から北西に170キロ。石垣港を出港し、東シナ海を8時間ほど航海すると、大海原に浮かぶ岩山が見えてくる。尖閣諸島の魚釣島だ。日本固有の領土だが、中国が領有権を主張し、日本の海上保安庁に相当する「中国海警局」の船が領海侵入を繰り返している。4月下旬、石垣市の海洋調査船に同乗する機会を得た。記者が目の当たりにしたのは、この海域で繰り広げられている海保と海警局の神経戦とも言える攻防だった。(時事通信政治部・原野琳太郎)
揺れる調査船
4月26日午後10時。大雨の中、石垣港を出た。石垣市が尖閣諸島の周辺海域に海洋調査船を送るのは3年連続だ。魚釣島の沖合から小型無人機(ドローン)を飛ばして島を空撮し、動植物などの生態系や漂着ごみの状況などを確認・調査するのが目的だ。
市が手配した民間の作業船は約700トンの中型船。船内も決して広くはない。乗船するや、船員から「この船は揺れます」と説明された。早速、用意しておいた酔い止め薬「アネロン」を飲む。海保職員らが太鼓判を押す必携の薬。揺れが始まる前に氷水で飲み込み、いったん寝ておくのが鉄則という。船は出港から30分ほどで上下左右に大きく揺れ始め、船酔いに苦しむ人が出始めた。
警告の応酬
翌日午前6時。空は白み始めていた。作業船の両脇と後方には、海保の巡視船がぴたりと張り付いている。作業船は三方をガードされ、尖閣沖に向け波を切って進む。
夜明けで赤みがかった水平線の手前に、互いに電光掲示板を表示させた2隻が並走しているのが見えた。海保の巡視船と中国海警局の船だ。まだ夜が明けきらない時間だが、領海を巡るけん制が始まっている。
作業船の操舵(そうだ)室では無線が鳴り響いていた。「釣魚島(魚釣島の中国名)および付属する島々は古来、中国固有の領土である。その周辺海域は中国の領海である。貴船はわが国の領海に侵入した。直ちに退去して下さい」。
海保側の無線も聞こえる。「中国海警船、こちらは日本国海上保安庁巡視船。尖閣諸島は日本の領土である。貴船の主張は受け入れられない」。警告の応酬が続く。
作業船はこの少し前、海警局船から直接、「領海退去」を求められた。しかし、海保の指導もあり応答しなかった。海警局船が発する日本語はたどたどしく、決められた文章を読み上げている印象があるせいか、威圧感はない。
操舵室の船員がつぶやく。「役所仕事を淡々とこなしているんだな。(中国側も)大変だ」。
漂着するごみ、むき出しの岩肌
午前7時前。魚釣島が眼前に迫った。島は東西に約3.3キロ、標高は東京タワーよりやや高い362メートル。見上げるように急峻で、緑に覆われているが、ところどころ岩肌が露出している。まさに岩山で、海岸線に足の踏み場はないように見えた。
作業船は島の西側に回り込む。すると、いったん見えなくなっていた海警局船が、島陰から再び姿を現した。だが、既に海保の巡視船1隻が警戒に当たっているのが分かり、恐怖を感じることはなかった。
午前7時45分ごろ、島の調査が始まった。北西の沖に位置した作業船からドローンを飛ばす。島の北側をドローンで撮影するのは今回が初めてという。海岸に漂着したプラスチックごみ、植物が枯れてむき出しになった岩肌が作業船の甲板に設置したモニターに映し出される。作業船には稲田朋美元防衛相ら国会議員も同乗。3年連続で調査の指揮を執る東海大の山田吉彦教授(海洋政策)は、「(東京都が調査を行った)12年前に8本あった川が1本しか見えない。植物が枯れ、ヤギも減っているのだろう」と解説した。
「ゾーン」と「マンマーク」
ドローンが高度を上げると、島の周辺で警戒に当たる海保・巡視船10隻ほどの“船団”が映し出された。「こんなにいるのか。すごいな…」。モニターを見つめていた中山義隆石垣市長が声を上げた。海保は調査船護衛のため、通常より多い巡視船を派遣していた。
午前8時すぎ。海保の船団と海警局船の攻防はピークに達していた。調査を終えた作業船と島との間に割って入った海警局船は、作業船を追うように航行。しかし、巡視船3隻がみるみる速度を上げ、作業船と海警局船の間に入り込む。
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