「全国5188の医療機関でトラブル」「患者がわめいて警察沙汰」「死亡事案も発生」マイナ保険証導入で大混乱の医療現場に何が起きているのか
認証トラブルで診察できなくなれば病気を抱えた患者が騒ぎたくなるもの当然の話
TVCMでは芸人のなかやまきんに君らが、健康保険証からマイナ保険証に切り替わることで「パワーアップ」すると喧伝している。しかし、現場では正反対の事態が進行中だ。窓口業務は混乱。個人医院は閉院に追い込まれ、挙げ句の果てには死亡事案まで発生しているという。止まる気配のないマイナ保険証の導入。医療現場で一体何が起きているのか。(以下は「週刊新潮」2024年6月20日号掲載の内容です)
「マイナ保険証にメリットは何一つありません」
半年後に現行の健康保険証は廃止されて、マイナ保険証に一本化される。一方で昨年来、マイナンバーと健康保険情報等のひも付けの未了や誤登録の問題が表面化。そのため政府は昨年6月から、河野太郎デジタル相(61)率いるデジタル庁を中心に、マイナンバー情報の総点検を実施した。半年後、河野デジタル相は、
「すべてのひも付け実施機関に対して、マイナンバーのひも付け作業の実態の把握調査を行いました。(中略)個別データの点検対象となったデータ件数は8208万件です。8208万件のうち99.9%に当たる8206万件については、データの点検と本人確認の作業が終了しております」
と、総点検の“終了”を記者会見で宣言。続く質疑応答の中で、
「イデオロギー的に反対される方は、いつまでたっても不安だ不安だと仰るでしょうから、それでは物事が進みませんので、きちんとした措置を取ったということで(健康保険証の廃止とマイナ保険証の推進を)進めます」
そう見得を切った。しかしである。実際にマイナ保険証が導入され始めている医療現場では、看過できない数々の混乱が起きている。
「マイナ保険証にメリットは何一つありません。デメリットとして、まず医療機関の窓口が大混乱しています。マイナ保険証の利用率が6%程度しかない今でさえ、医療機関の半数以上にトラブルが発生している状況です」
とは、全国保険医団体連合会(保団連)の竹田智雄会長である。
「例えばですが、健康保険料を払っていて健康保険の資格があるはずなのに、マイナ保険証をカードリーダーにかざしても無資格とされてしまう。また、本来は負担割合3割の人が2割の扱いとされてしまうといった問題のほか、住所や名前が端末に表示されないなどの不具合も散見されます」(同)
全国で5188の医療機関から
実際、マイナ保険証をめぐるトラブルは枚挙にいとまがない。
城北病院(石川県金沢市)の内科副院長・柳沢深志医師が、
「マイナ保険証の保険情報が読み取れず、保険資格が有効なのか確認できないというトラブルは当院でも報告されています。また、他の医療機関では、カードリーダーで顔認証しようとしても、うまく認証できなかったというトラブルもあったと聞いています」
と言えば、東京保険医協会の須田昭夫会長も次のように述べる。
「国が総点検に取りかかった後の昨年10月以降に行った保団連の調査でも、全国で5188の医療機関からマイナ保険証でのトラブルがあったと報告を受けています。その中には保険資格の確認ができず、いわゆる10割負担での請求を余儀なくされた事例も753件ありました」
保団連によると、マイナ保険証をめぐる主なトラブルの類型は以下の通りだ。
・顔認証付きカードリーダーが起動しない。
・顔認証付きカードリーダーで顔認証ができない。
・高齢者がうまく使えない。暗証番号も忘れてしまう。
・顔認証付きカードリーダーがクリニックに1台しかないので待合室が混雑する。
・健康保険証は有効なのにマイナ保険証で「無効」と表記される。
・高齢者医療費の窓口負担割合が反映されない。
前出の須田氏が言う。
「患者と医療機関のあいだでもトラブルが起きています。健康保険証は“有効”なのに、マイナ保険証で“無効”とされた患者が、医療機関のスタッフに苦情を言い立てるなど序の口。中にはマイナ保険証を利用しようとした患者がカードリーダーでマイナ保険証の読み取りができないことに腹を立てて院内でわめき散らし、警察沙汰になったケースもあります」
また、大阪府保険医協会の井上美佐副理事長は、同協会の会員に対して行った調査結果(5月末にアンケート用紙送付。6月6日までに返信結果を集計)について、
「アンケートに答えていただいた医療機関の件数は247件で、そのうちの160件でトラブルがありました。トラブルの具体的な内容としては、資格情報が無効と出たというのが74件。表示された情報に●と伏字が出たのも74件。さらに、カードリーダーの読み込み時エラーが55件、リーダーの接続時不具合で読み込めなかったのが40件です」
こう明かして、直近でも現場の混乱が収まっていない様子を伝えるのである。
有料版ではこうしたトラブルのほか、マイナ保険証が読み取れずに患者が死亡してしまったケースを紹介。ほかに資金難で個人医院が閉院に追い込まれる事例など、医療の行く末を左右するマイナ保険証の大混乱を徹底検証している。
デイリー新潮編集部
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