ギャラップ社の「ワクチン接種」についての世論調査でわかる、今やどうしようもなく2つに分裂しているアメリカ人たち
全体の数字からはわからない「分裂したアメリカ」
昨日、アメリカのニューズウィークで、「アメリカ人は病気よりもワクチンの方が危険だと考えるようになっている」というタイトルの記事を読みました。
これは、世論調査会社ギャラップが 7月におこなった調査の結果を記事にしたものです。
記事の冒頭は、以下のようなものです。
新たな世論調査によると、ワクチンは予防するはずの病気よりも危険だと考えるアメリカ人が増えている。
7月1日から 21日にかけて実施されたギャラップ社の世論調査によると、2024年にはアメリカ人の 5人に 1人がそう考えており、これは 2019年の 11%、2001年の 6%から増加している。
以下は、その部分が示されたギャラップ社の報告書にあるグラフです。
なお、これはあくまで「ワクチン全般」の話であり、コロナワクチン云々の話ではありませんが、グラフの角度が急激に上昇し始めたのが、2020年頃からであることがわかります。
皮肉にも、というのかどうかわからないですが、コロナの中で大々的に展開されたコロナワクチン接種キャンペーンの中で、予防接種に不信感を持つアメリカ人が大幅に増えたようです。
しかしですね。
上のグラフを「支持政党別」のグラフにすると、「まったく異なるアメリカ人たちの集団の光景」が見えるのです。
以下は、上と同じ質問の「支持政党別の回答」です。
全体では確かに「 5人に 1人」が、病気より予防接種のほうが危険だという数字になるのですが、支持政党別に見れば、大雑把にですが、
・共和党支持者の 3人に 1人が病気より予防接種のほうが危険だと考えている
・民主党支持者でそう考えているのは、 20人に 1人ほど。
ということになります。
ワクチンのことひとつでこれでは、「このふたつの集団の話が合うはずもないなあ」と思いますけれど、私たちが考えている以上に、このふたつの党員たちは、
「内部的にまったく違う価値観を持つ人たち」
であることがわかります。
中庸するポイントが見当たらない。
まずは、そのニューズウィークの記事をご紹介します。ギャラップの報告書には他にもさまざまなグラフがあります。
アメリカ人は病気よりもワクチンの方が危険だと考えるようになっている
Americans Increasingly Think Vaccines More Dangerous Than the Illnesses
Newsweek 2024/08/09
新たな世論調査によると、ワクチンは予防するはずの病気よりも危険だと考えるアメリカ人が増え続けている。
7月1日から 21日にかけて実施されたギャラップ社の世論調査によると、2024年にはアメリカ人の 5人に 1人(20%)がそう考えており、これは 2019年の 11%、2001年の 6%から増加している。
データにはワクチンの安全性に対する懸念をめぐる政治的な分裂も表れていた。
ギャラップの調査によると、共和党員の 31%がワクチンは予防対象となっている病気よりも危険だと考えている(2019年の 12%から増加)のに対し、民主党員ではわずか 5% (2019年の 10%から減少)が同じ考えであることがわかった。
報告書は、「過去 5年間で共和党員の小児用ワクチンに対する信頼は急落し、その結果、これらのワクチンが重要であるという米国人の全体的な信念が大幅に低下した」と指摘している。
報告書によると、アメリカ人の成人の 13%が特定のワクチンが自閉症を引き起こす可能性があると考えており、これは 2019年の 10%、 2015年の 6%から増加している。共和党支持者はこれを信じる傾向が高く、共和党支持者の 19%に対し、民主党支持者でこのように考えるのは 4%となっている。
この考えは、医学雑誌「ランセット」が 1998年に発表した論文に端を発していると思われる。この論文では、イギリス人医師アンドリュー・ウェイクフィールド氏が MMR ワクチンと自閉症の関連性を報告している。この研究はその後、同誌によって信用を失い撤回され、ウェイクフィールド氏の医師免許は剥奪された。
報告書は COVID-19 パンデミックの影響についても言及しており、ギャラップ社は、12歳未満の子どもにワクチンが承認されれば、 COVID-19 のワクチン接種を許可すると答えた共和党支持者(19%)は民主党支持者(90%)よりもはるかに少ないことを明らかにした。
報告書は「この政治的分裂は、民主党の公職者と党支持者が医療当局が提供する COVID-19 に関するガイドラインに従う傾向にある一方で、共和党の公職者と共和党支持者はその情報の信頼性に懐疑的であることが多いことを反映している」と述べている。
ギャラップ社の世論調査では、以前よりも子どものワクチン接種を重要視するアメリカ人が少なくなっており、子どもがワクチン接種を受けることは極めて重要だと答えた人は 2019年の 58%から 40%に減少していることも示されている。
調査対象となった民主党員と共和党員の間にも同様の格差がギャラップのデータのこの部分で示された。
2024年には、共和党員の 26%が子どものワクチン接種が非常に重要だと考えており、2001年の 62%から減少している一方、民主党支持者では 63%が重要だと考えており、2001年の 66%からわずかしか減少していない。
ここまでです。
なお、この記事で「ん?」と思った部分がありまして、ギャラップ社の報告書を見直してみますと、誤解を生みそうな部分がありましたので、付け加えます。以下の部分です。
…報告書は COVID-19 パンデミックの影響についても言及しており、ギャラップ社は、12歳未満の子どもにワクチンが承認されれば、 COVID-19 のワクチン接種を許可すると答えた共和党支持者(19%)は民主党支持者(90%)よりもはるかに少ないことを明らかにした。
アメリカでは、12歳未満のコロナワクチンは、2021年時点で承認されていたはずですので、「ん?」と思ったのですが、これは、ギャラップ社が、2021年に行ったコロナワクチンに関しての世論調査で、こちらにありますが、2021年の時点の調査結果として、12歳未満の子どもにワクチンが承認された場合、
・共和党員で、子どもにワクチンを打たせると回答した人は 19%
・民主党員では、90%が子どもに打たせると回答した
ということになります。
2021年の調査とはいえ、「 90%」という数字に驚きますが…ということは、実際に 12歳未満で接種した子どもの数は、少なくとも民主党員の子どもたちでは、相当な数に上っていた可能性があります。
うーん…と、近いアメリカの将来の光景(人口動態など)を考えたりもしますが、これを見てわかりますのは、2021年から 2022年くらいの頃、たとえば私なども「どこそこの国は接種率が高い」とか低いとか、そういうことを数字で見て知ってはいましたけれど、アメリカの場合は、
「支持政党による接種率の差がこんなにあった」
ことがわかります。もはや「国」という範囲の問題ではなかった。
私は、日本にしてもアメリカにしても、基本的に政治に興味はないですが(縄文人タイプの完全アナーキストなので)、こうなりますと、大統領選の行方なども、医療戒厳令的な意味合いでのある程度の決戦場となるかもしれないです。
アメリカでは、全有権者のうちの 34%が、「 5年以内に内戦が起きると考えている」と調査会社ラスムッセンの報告書が述べていたことをとりあげたことがあります(記事)。2020年のものですので、ちょっと古いですけれど。
これが、共和党員になりますと、全体の 40%がそう考えていました。以下は当時のラスムッセン・レポートの世論調査の報告記事です。
ワクチンの話と内戦の話は関係ないと思われるかもしれないですが、先ほども書きましたけれど、
「ここまで価値観がまったく違う」
のです。
そのようなふたつの集団が存在しているということから、2020年の調査にあります「内戦」という概念は容易に浮かび上がる気はします。
まして、今後は、アメリカだけではないですけれど、社会的に荒れる可能性が高いわけですし。
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