「手の消毒は逆効果」「ビニールカーテンは無意味」…日本人が知らない「新柄コロナは空気感染」という事実
私たちはメディアに騙されている
とはいうものの、メディアでは連日、「新たな変異株『KP.3』が猛威を振るっている」「第11波が到来」「お盆明けがピーク」などと大々的に報じられ、日本医師会も7月31日、コロナ対策を呼びかける動画をYouTubeで公開するなど、警戒を強めている。
だが、昨年5月8日に新型コロナが感染症法上の5類に移行されてから、もう1年以上経っている。それほどの危機が迫っているといえるだろうか。
前編『「熱中症のほうがむしろ命の危険」…《新型コロナ第11波》とまるで「オウム返し」のように危機をあおり続ける「メディアの不見識」』から続く。
いまだに理解されていない感染経路
2019年12月初旬に、中国・武漢市で初めての感染者が報告されてから、世界的流行となった新型コロナウイルス。
コロナ禍になってから約4年半が経ち、昨年5月に5類感染症に格下げしてからは一旦落ち着きを取り戻したと思いきや、今年の5月ごろからコロナ感染者が増加し続けて、今に至っている。
新型コロナ禍の当初は、『新型コロナは接触感染と飛沫感染が主な感染経路』との認識が広まっていた。
しかし、現在は『新型コロナは空気感染※が主な感染経路』というのが、WHO(世界保健機関)やCDC(米国疾病予防管理センター)など、世界中の専門家の間ではコンセンサスが得られている。(※空中を浮遊するウイルスを吸い込むことによる感染)
厚生労働省も認めているにもかかわらず、日本ではその認識が広がっていないのか、効果のない感染対策がいまだに行われている。
たとえば、スーパーやコンビニのレジに設置されているビニールカーテンだ。国立病院機構仙台医療センターのウイルスセンター長で、著書に『もうだまされない新型コロナの大誤解』(幻冬舎)がある西村秀一氏が解説する。
「ビニールカーテンは、店員側からみると目の前の客が飛沫を出しても一瞬防ぐことはできますが、そのあと、空中に漂うエアロゾル(ウイルスを含んだ微粒子)がカーテンと壁の間で滞留してしまい、ウイルスを吸い込むリスクが高まります。
同様に飲食店にあるアクリル板のパーティションも飛沫を防ぐしか効果はない。エアロゾルは空中に漂っているので、しっかり換気をするぐらいしかないのです」(以下「」は西村氏)
アルコール消毒は逆効果
ビニールカーテンやアクリル板と同様、今でもスーパーやコンビニ、ドラッグストア、書店など、店の入り口にアルコール消毒液が設置され、漫然と使う人たちがいるが、コロナ対策として無意味どころ、本人にとっては逆効果だという。
「『新型コロナは空気感染』ということを理解していれば、手を消毒しても感染を防止する効果はありませんし、そもそも一般的にウイルスは皮膚から感染しません。というのは、皮膚の一番外側にある角質層には強力なバリア機能があるからです。
ウイルスがこのバリアを破って体内に侵入するには、皮膚についた傷から物理的に突破しなければいけませんが、新型コロナのような呼吸器系ウイルスなら、その場合でも直接感染することはあり得ません。むしろ、この観点で過剰な手洗いやアルコール消毒は、皮膚のバリア機能を自ら破壊しているともいえます。効果どころか害しかなりません」
厚生労働省のホームページには「新型コロナウイルス感染予防のために」として、換気、マスク着用に加えて、手洗い・手指消毒が有効だとするなど、情報がアップデートされていないのだ。
新型コロナと共生する道しかない
結局のところ、毎年冬に流行するインフルエンザと同様、新型コロナウイルスも共生していくしか道はないのだろうか。
「新型コロナは、季節性インフルエンザと同じく主に上気道(鼻から喉までの気道)でウイルスが増えます。上気道に病巣が限定されると重症化せず、場合によっては症状が出ないこともある。その分、感染者の行動範囲が広がりやすいためにここまで拡大してきました。その性質は変わりようがなく、一旦収束したように見えても、ウイルスは社会から完全には消えません。
また、これまでのコロナでもインフルエンザでも経験してきたように、流行自体を抑え込むことは、ワクチンも含めどんな感染対策をやっても無理。今のコロナは、たとえ免疫から逃れるように変異しても突然極端に強毒化することは、ウイルス学的にも考えにくいので、これからずっと付き合っていく感染症だと捉えていくしかないでしょう」
高齢者や基礎疾患のある人は気をつけるに越したことはないが、それ以外の人は特に神経質になるべきではない。
また、今のコロナで感染者が増えているとはいえ、そのために過剰な医療不可が問題にはなっても、ウイルス自体は弱毒化する一方。
適度な感染対策はやっても、むやみに神経質になる時期は、とうに過ぎ去っているのだ。
コメント