新聞テレビは「本命」扱いでも…小泉進次郎氏はネットで人気がないワケ

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小泉環境相 政治・経済

新聞テレビは「本命」扱いでも…小泉進次郎氏はネットで人気がないワケ

「高市早苗氏」と正反対の現象が起きる理由

 自民党総裁選は9月12日に告示され、27日に投開票される。立候補を目指す国会議員は10人を超えるとも言われており、その動向が連日のように報じられている。そんな中、毎日新聞は8月21日、「高市氏、自民党総裁選に立候補へ 推薦人20人確保にめど」との記事を配信し、ネット上では歓迎する声が相次いだ。

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 記事によると、自民党の高市早苗経済安全保障担当相(63)は総裁選に立候補する意向を固め、出馬に必要な推薦人20人も確保できる見通しが立ったという。

 毎日新聞の記事が配信されると、ネット上では“歓喜”の声が多数、投稿された。“歓喜”は大げさな表現だと思われるかもしれないが、そういう方はXで検索することをお勧めする。「高市早苗」と入力すると、高市氏を熱烈に支持する投稿が次から次へと表示されて圧倒されるはずだ。多数のポストの中から、ごく一部をご紹介する。

一躍、自民党総裁選の目玉候補となった小泉進次郎

《次期総理は高市早苗議員しかいません》、《国難を乗り切る為には政策で大きくリードする高市早苗さんしかいません》、《靖国神社に堂々と参拝できる高市早苗さんが次の総裁にふさわしいと思う》、《官僚任せにしない高市早苗さんを望みます》──。

 ところが、朝日、読売、毎日、産経のいわゆる全国紙や、NHKと民放キー局の報道は全く異なる。担当記者が言う。

「確かに高市さんはネット上なら圧倒的な人気を誇っています。しかし、大手マスコミの中には泡沫候補に近い扱いを行っている社もあるのです。新聞やテレビを筆頭とする大手マスコミは元環境相の小泉進次郎氏を本命候補の1人と睨み、早くも報道を過熱させています。テレビ東京と日本経済新聞社が共同で行った世論調査が8月22日に発表されましたが、『次の自民党総裁にふさわしい政治家』の質問には、小泉氏との回答が22%でトップとなりました」

小泉氏は“すでに終わった人”

 改めて世論調査の結果を確認しておこう。テレ東BIZは22日、「【速報】次の自民党総裁 小泉氏がトップに テレ東・日経 8月世論調査」の記事を配信した。トップは小泉氏で22%、2位が自民党元幹事長の石破茂氏で18%、3位が高市氏で11%だった。

「大手メディアは自民党の国会議員を広範に取材し、その結果を匿名コメントとして『小泉氏が総理総裁となって早期解散を行えば、それほど負けることはない』、『小泉氏は総裁選で地方の党員票を総取りするはずで、それは総選挙でも同じだ』などと伝えています。あたかも自民党から“小泉進次郎待望論”が出ているかのように報じている社もあるにもかかわらず、ネット上で小泉氏は“すでに終わった人”という扱いなのです」(前出の記者)

 ご存知の方も多いかもしれないが、もともとネット上で小泉氏の評価は常に低い。大手メディアの報道とネット世論が対立することは珍しくないとはいえ、ここまで乖離するのは珍しい。小泉氏を批判する投稿をXからご紹介する。

小泉進次郎…。日本国民の民度の低さを感じてしまう》、《小泉進次郎氏がトランプ氏、ハリス氏、プーチン氏、習近平氏と渡り合えるかって話です》、《国家観もない。外務、防衛などの主要閣僚経験もない。レジ袋政治家に総理大臣は無理》──。

高市氏と中道左派

 なぜ大手メディアの報道と、いわゆるネット世論はこれほど違うのか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏に取材を依頼した。

「高市さんの人気は、ネット上で“ぶれない人”と認定されているからでしょう。主要政策に関する主張は一貫しており、そうした主張を明確なメッセージとして発信してきました。そうした姿勢が“潔い”という高評価につながっていると思います。さらにネット世論はマスコミを“マスゴミ”と嫌悪する傾向が強いわけですが、そのため『高市さんが総理総裁になれば、マスゴミの馬鹿な質問にも毅然として答えてくれる』という期待につながっていると考えられます」

 もちろん高市氏にも“弱点”はある。支持者が保守層に偏っていることだ。

「高市さんが広範な支持を得るためには、ご自身が女性政治家であることをどうアピールするかという点にかかっているでしょう。これまで高市さんは自分が女性という点を強く打ち出すことはなかったと思います。しかし今回の総裁選を考えると、高市さんが初の女性総裁、初の女性首相になる可能性があることは、やはり重要な要素です。高市さんが岩盤支持層である保守派の人気を維持しながら、今回の総裁選を通して無党派層における女性の中道派と中道左派の支持を獲得できるかどうかが鍵でしょう。もし中道・中道左派の支持が大手メディアの世論調査で数字になって報じられれば、一気に状況が変わるかもしれません」(同・井上氏)

小泉氏と大手メディア

 また国外の情勢で高市氏に支持が集まる可能性も充分にあるという。注目ポイントは中国と韓国の動向だ。

「9月27日の投開票まで、まだ1カ月もあります。もし日中や日韓の間に大きな問題が起これば、自民党員や国民の視線は高市さんに集中すると思います。現在の日中・日韓関係は、特別な対立関係にはありません。しかしオーバーツーリズムの被害を被っている関係者が少なくなく、かなりの有権者が中韓に対して“モヤモヤ”とした気持ちを抱いています。両国に対する不満はマグマのように水面下で蠢いており、中国や韓国との間にトラブルが発生すれば爆発、高市さんに期待するという声が急上昇すると考えられます」(同・井上氏)

 次は小泉進次郎氏の不評問題に移りたいが、その前に「なぜ進次郎氏を大手メディアは『国民的人気がある』と報じるのか」という問題を考えてみたい。

 井上氏は「父親である小泉純一郎氏の“レガシー”が大きな影響を与えているようです」と言う。

 小泉純一郎氏の祖父・又次郎氏は1908(明治41)年、衆議院議員選挙に出馬し、父親の純也氏も1937(昭和12)年に同じ衆院選に出馬し、共に初当選を果たした。

純一郎の“レガシー”

 純一郎氏も父親の死去を受けて1969(昭和44)年に衆議院選に出馬するが、4000票差で落選してしまう。再起を期して福田赳夫氏の秘書を務め、いわゆる“雑巾がけ”を始めた。しかしながら純一郎氏の“政治家修行”は、それだけではなかった。

「純一郎さんは自民党本部で、全国にある自民党の支部と密接に連絡を取る仕事に従事したのです。純一郎さんは全国の支部を行脚し、様々な党員と膝を交えました。純一郎さんは2001年の総裁選で圧勝しましたが、かつて全国を行脚した経験が役に立ったのです。そして、純一郎さんと膝を交えた支部の関係者は今も存命です。彼らは息子の進次郎さんが総理総裁になれば、『自分たちのパイプが使える』と期待を寄せています。多分、大手のマスコミはこのことを折り込んで『進次郎氏なら選挙は負けない』と報じているのでしょう。純一郎さんの“レガシー”を進次郎さんが受け継ぎ、全国の支部が支援する可能性があると判断しているのです」(同・井上氏)

 小泉進次郎氏と言えば“舌禍”が有名だ。2019年、環境相としてニューヨークで開かれた国連気候行動サミットに出席した際、「気候変動問題に取り組むことはきっとセクシーでしょう」と英語で発言。日本では違和感を表明する意見が相次いだ。

「結局は合コン好きかよ」

 また「今のままではいけないと思います。だからこそ日本は今のままではいけないと思っている」といった“小泉構文”も揶揄の対象になっている。

「しかし、ネット上で小泉さんの評価が急落したのは、それよりも前です。具体的には週刊文春が小泉さんと女性との密会を2015年に報じたことや、2019年に滝川クリステルさんとの交際が発覚した際、『合コン好き』と伝えられたことが大きな影響を与えました。そもそもネット上では“潔癖志向”が顕著です。『下級国民はルールを遵守しても報われず、上級国民とマスゴミは特権を利用してやりたい放題』という共通認識があります。そのため何かの拍子に政治家の“ルール無視”が明るみに出ると、それを一斉に叩くわけです。小泉さんの場合は『プリンスだと期待していたら、結局は合コン好きの俗物かよ』と落胆する声が相次ぎ、それ以来、ネット上で小泉さんの評価は地に墜ちたのです」(同・井上氏)

 小泉氏が総裁選に出馬するという記事が配信されると、急に「憲法改正を掲げたい」と改憲にも意欲を見せていると伝えられた。

「ネット上の保守層は全く歓迎せず、『取って付けたように言っている』と冷淡です。そもそも小泉さんには“イクメン”というイメージもありますが、これもネット上では『あざとい』、『わざわざアピールすることではない』と批判が浴びせられてきました」(同・井上氏)

小泉勝利は自民敗北!?

 元首相の菅義偉氏は元来、ネット上では人気がある政治家だ。一方、デジタル相の河野太郎氏は記者会見における無礼な態度がネット上で拡散し、批判の対象となっている。

「ところが今回の総裁選で『菅さんは河野さんを重用していたのに、急に小泉さんに乗り換えた』と報じられると、ネット上では『河野さんが可哀想だ』という批判が殺到しました。急に改憲を掲げて失笑されたのも含め、どうも小泉さんはやることなすこと全て裏目に出ているという印象があります」(同・井上氏)

 いわゆる“リアル世論と”ネット世論“に乖離があるのは今に始まった話ではない。特に現在のSNSは「自分が読みたいと思う情報しか表示しない」という技術が発達したことで、全ての議論を鳥瞰的に見ることが難しくなった。

 井上氏は「ネット世論のタコツボ化が進んでいる」と指摘するが、小泉氏が総裁選に勝利するとSNSが“反小泉”で団結してしまう可能性もあるという。

「もし小泉さんが総裁に選ばれると、ネットは荒れに荒れるでしょう。自民党に批判が殺到することで、『結局、小泉さんは裏金事件を隠蔽しようとする国会議員に担ぎ出されたに過ぎない』と裏金事件が蒸し返されるかもしれません。国民的人気を誇る小泉さんが総理総裁となり、裏金事件のイメージを払拭して総選挙に勝利するという自民党のシナリオが根本的に崩れる可能性があります。ネットが小泉さんに対する批判一色になれば、リアル世論への影響力も大きくなるのではないでしょうか。ネット世論に引きずられるようにしてリアル世論も“反小泉”となれば、小泉さんが総理総裁として総選挙を戦っても苦戦するかもしれません」(同・井上氏)

デイリー新潮編集部

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