福岡県内で飼育されているブタが、「日本脳炎ウイルス」に感染していたことがわかりました。日本脳炎ウイルスは蚊による媒介で人にも感染する恐れがあるため、福岡県は注意を呼びかけています。このニュースについて中路先生に伺いました。

 

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監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

福岡県が注意を呼びかけている内容は?

日本脳炎ウイルスに関する注意喚起を福岡県がしていますが、具体的にはどのような内容なのでしょうか?

中路先生

日本脳炎ウイルスに感染した豚が、福岡県内で見つかりました。2024年8月5日に福岡県内で飼育されているブタ10頭を調査したところ、調査した10頭全てのブタが日本脳炎ウイルスに感染していたことが判明しました。

日本脳炎ウイルスはコガタアカイエカという蚊によって媒介され、人にも感染することが知られています。毎年5人ほどの感染が日本全国で報告されていますが、福岡県では2012年を最後に日本脳炎ウイルスの感染は確認されていません。今回の事態を受けて福岡県は、外で活動するときは皮膚の露出を避けるほか、虫よけスプレーを使うなど、蚊に刺されないよう注意を呼びかけています。

日本脳炎ウイルスとは?

今回、ブタへの感染でニュースになった日本脳炎ウイルスについて教えてください。

中路先生

日本脳炎ウイルスは、その名の通り感染することで「日本脳炎」を引き起こすウイルスです。日本脳炎はアジアを中心に毎年、3万5000~5万人の患者が発生し、1万~1万5000人が死亡していると推定される病気です。日本脳炎ウイルスはブタの体内で増殖して、ウイルスに感染したブタの血を吸った蚊に刺されることで人に感染します。ウイルスの媒介蚊は、先ほども紹介したコガタアカイエカが主な種類です。

日本脳炎ウイルスの感染者のうち、100~1000人に1人の割合で日本脳炎を発病すると言われています。通常6~16日の潜伏期間の後、高熱、頭痛、嘔気、嘔吐などの症状が出ます。その後、意識障害、けいれん、異常行動、筋肉の硬直などの症状も表れます。重症になったら半数が死亡すると言われ、生存者の30~50%に精神障害や運動障害などの後遺症が残るとされています。日本脳炎には特効薬がなく、対症療法によって治療がおこなわれます。

今回のニュースで福岡県が注意喚起していましたが、予防のためには蚊に刺されないように注意することが重要です。また、ワクチン接種によって日本脳炎の罹患リスクを75~95%減らすことができるという報告もあります。ただし、定期の予防接種が完了していても、有効期間は3~4年と言われているので、厚生労働省は流行地域に長期間渡航する場合は、追加で1回接種し、以後3~4年ごとに接種することを推奨しています。

今回のニュースの受け止めは?

福岡県で飼育されているブタが日本脳炎ウイルスに感染していることがわかりましたが、ニュースの受け止めを教えてください。

中路先生

日本脳炎は人から人への感染はありませんが、脳炎が発症した場合の致死率は20~40%と高く、治っても脳神経の後遺症を残すことが多い疾患です。しかし、ワクチン接種で予防ができる疾患でもあります。そのため、これまで接種していない人は早めの予防接種が推奨されています(国の推奨する予防接種は、3歳で2回・4歳で1回・9歳で1回の合計4回)。また、コガタアカイエカの活動は、これから来る夏の終わりから秋口がピークとなるため要注意です。屋外で活動をする場合は、肌の露出を避けて、虫よけスプレーなどを用いて、蚊に刺されないよう対策しましょう。

まとめ

福岡県内で飼育されているブタが、日本脳炎ウイルスに感染していたことがわかりました。日本脳炎は多くの患者がみられた病気ですが、現在は予防接種が開始されたことで患者数は著しく減少しています。しかし、全国での感染者数がゼロになっているわけではありません。リスクをなるべく避けるために、しっかりと予防接種を受けることに加え、蚊に刺されないための対策が重要になります。

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