「米騒動」今後も頻発?まさに政府による人災

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スーパーでコメ在庫なし 食糧問題

「米騒動」今後も頻発?まさに政府による人災

“減反政策”の弊害と止まらぬインフレ=斎藤満

国民生活の根幹をなすコメがスーパーから消え、一部で騒ぎになりました。ようやく今年の新米が届くようになって、危機は回避された感がありますが、新米の価格は前年比30%から50%高と言います。目先のコメ不足は解消しても、この1年でみれば、生産量が減っていて、どこかでまたコメ不足が露呈、改めて「米騒動」が起きる懸念があります。

9人の自民党総裁候補からは残念ながら食料安全保障、コメの安定供給についての発言がありません。この問題は国民生活の根幹を脅かし、物価高を招くだけに放置できず、政府の減反政策、食料安全保障に対する意識改革が是非とも必要で、この機会に問題提起したいと思います。(『 マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

食料安保に反するコメの減反政策

もう30年くらい前になりますが、平成の米騒動が日本で起きました。店頭からコメがなくなり、急遽タイなどからコメを輸入する事態となりました。

日本のコメ生産量は潜在的に年間1,400万トンくらいあったのですが、政府の減反指導で当時は1,000万トン程度に生産規模が縮小していました。そこへ大変な不作となり、年間800万トンも割り込む事態となってコメ不足が露呈しました。

その後も日本は減反を続け、近年でも年に約10万トンの生産量を減らしています。2023年のコメの生産は作況指数が101あったにもかかわらず、前年から9万トン減の661万トンになっていました。政府の指導のもと、農家への減反補助金の「ニンジン」をぶら下げて年々減反を進めています。

その結果が今日のコメ不足をもたらしています。

それだけコメの需給のバッファーがなくなっています。国内需要を十分カバーできるだけの生産を行い、その一部を政府が緊急事態に備えて買い上げ、備蓄しておくことが最低限必要です。今でも政府の備蓄米はあるのですが、価格支持のため、つまりコメ価格を高く維持し、農家の所得を守るために備蓄米の解放をしません。

これでは日本人の食生活の基礎となるコメの安全保障を守れません。本来望ましい姿は、潜在的な生産量1,400万トンを維持し、一部を政府が備蓄用に買い上げ、余りを海外に輸出する姿です。つまり、需給の調整弁を輸出で行い、国内需給の安定、価格の安定を図るのが経済安保の考えです。

現在の政府、農水省の「減反」政策は、農家の所得、農協のビジネスを優先し、国民の食生活を守る意識が欠如しています。

需要は増加気味で需給ひっ迫

コメの供給量は政府の減反政策によって年々減少しています。

今年の生産量も昨年を下回る可能性が高いとみられます。新米が出て供給が一時的に増えても、年に1回の生産ですから、いま供給を増やせば、来年のどこかでまたコメ不足が露呈するリスクがあります。

それというのも、需要面では下げ止まりから増加の要因が出てきているためです。

まずインバウンド需要の高まりで、年間3,000万人を超える外国人旅行者が日本食を楽しんでいます。それだけコメの需要が増えます。

さらに国内では健康志向、ダイエットの面からグルテン・フリーの動きが強まり、小麦粉からコメへの需要シフトが生じています。特に小麦粉の値上げでパンやうどんの値上げが進んでいることもあり、パンも米粉で作るものが採算に合うようになりました。

おにぎりブームもコメ需要を高めています。日本人のコメ離れが言われて久しいのですが、ここへきてコメ需要に下げ止まりから増加の気配がみられます。

それだけに、新米の供給で足元のコメ不足が解消されても、需要の先食いは年後半のコメ不足につながります。

コメは追加生産、増産とはいきません。来年のコメ不足には備蓄米の供給で対応できたとしても、備蓄米の補填も必要になり、減反政策を早めに停止して、コメの増産余地を確保しておく必要があります。

コメ価格高がインフレ加速

もう1つ問題があります。それは消費生活の中で大きなウエイトを占めるコメの価格が大幅に上昇し、これが物価全体を押し上げることです。

この8月は23年米が品薄で前年比17%高となりました。さらにスーパーでの新米の価格はこれまで5キロ2,000円前後だったのが、新米では3,000円に上がって消費者が躊躇する場面をテレビが報道していました。

日本の消費者物価においては、その26%余りを食料品が占めています。食料の価格上昇が全体の物価高に直結します。特にコメなどの「穀物」のウエイトは全体の2%を占めています。これにコメを原料とする酒や煎餅、米粉などもコメ価格の影響を受けます。

政府はエネルギー価格に敏感で、電気ガスやガソリン価格を抑制するための補助金を出して価格高を抑制しています。電気ガスの消費者物価に占める割合は5%です。電気ガス代を10%下げると物価全体を0.5%下げますが、コメが50%上昇すると、波及効果込みで物価全体を1%近く押し上げる可能性があります。

物価高対策として電気ガス代を3か月抑制する策も、コメの上昇で消されてしまいます。

25年米から増産が必要

今のコメ価格急騰はコメの需要を冷やす面がありますが、インバウンド消費を含めてみれば、コメ需要が増える可能性があり、24年米の不足露呈は時間の問題となります。

25年米の生産がよほど増えないと、政府の備蓄米放出ではコメ不足は解消しません。問題の先送りで次は25年のコメ不足が予想されるからです。

今回のコメ不足、コメ価格の急騰は政策の失敗を象徴するものです。

減反補助金を出してコメの生産を減らすことは、日本経済の効率を大きく損なうもので、財政負担も大きくなります。むしろ減反をやめ、従って補助金もなくなりますが、コメ農家に自由に生産させ、ネットで産地直送の販売をし、さらに「日本食ブーム」にのってブランド米を海外に輸出すれば、農家の収入は増え、GDPも増えます。

輸出余力があるほどコメの増産となれば、国内市場でコメ不足に陥るリスクは低下し、コメの価格も安定が期待できます。凶作で生産が減少すれば、輸出を減らすことで国内需給には「バッファー」ができます。

今の減反政策は早急に見直し、撤廃する必要があります。ここに手を付けなければ、「令和の米騒動」で政権が倒れる可能性さえあります。農水省は責任をとれるのでしょうか。

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