ゼレンスキー神話はついに崩壊し、冷静になる時がやって来た:米国のウクライナに対する態度を不可逆的に変化させたのは何か?
米国はウクライナを支援することを諦め、次のイスラエル支援の準備を始めているように見える。
2024年10月01日
9月下旬、ウクライナのゼレンスキー元大統領は米国を訪れ、国連や安保理で演説をし、バイデン米大統領と会談し、米議会を訪れ、この11月に投票が行われる大統領選を目指して選挙戦中にある二人の候補者、つまり、トランプ元大統領とカマラ・ハリス現副大統領とも会談し、彼の「勝利計画」について語った。さらには、ウクライナに供給される砲弾を製造しているペンシルバニア州の軍需工場も訪問した。極めて盛り沢山な日程であった。つまり、この一週間、ウクライナは大きな賭けに出たと言える。
その成果はいったいどうだったのか?
ここに「ゼレンスキー神話はついに崩壊し、冷静になる時がやって来た:米国のウクライナに対する態度を不可逆的に変化させたのは何か?」と題された最新の記事がある(注1)。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
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副題:スタンケビッチ:「米国訪問中、ゼレンスキーの勝利の神話はついに崩壊した」
Photo-1:GLOBAL LOOK PRESS.
著名な歴史家であり、政治学者でもあるセルゲイ・スタンケビッチがコムソモルスカヤ・プラウダ紙の政治評論家、アレクサンダー・ガモフと対談
- セルゲイ・ボリソヴィッチ・スタンケヴィッチさん、「コムソモリスカヤ・プラウダ」の記者でありスタンケヴィッチさんの伝記作家でもあるアレクサンドル・ガモフが休日中のところをお邪魔します。すみません、よろしくお願いします。よろしいでしょうか?
- もちろん、もちろんですとも。どういたしまして。結局のところ、あなたの地位の方がより高いです。あなたは時代の生き証人だ。グローバルな経験に基づいて出来事を評価する、おそらく、最も重要な目撃者です・・・
- 皆が言うように、私は目撃者から話を聞きます。なぜあなたに電話したのかと言いますと、こうです。欧米、特に、米国のメディアが新たな核ドクトリンについてウラジーミル・プーチンが述べた文言によってどういうわけか自己抑制し、怯えながらコメントした後に・・・ ゼレンスキーは米国で非常に冷やかに迎えられ、彼は何らかの理由で、彼の愚かさか何かの理由で彼らが彼の計画を緊急に受け入れてくれることを望んでいたようです。いわゆる「勝利者の」を・・・ 体の動きがぎこちないとは言え、彼らはなんとなく這いずり回り始めたような気がします・・・ 私が言っているのはあの忌まわしい米国の帝国主義者たちのことですが。
- 「這いずり回る」という問題についてすぐに答えましょう。そして、核ドクトリンについても。いや、彼らは脇に向かって這いずり回っているのではなく、ゆっくりと現実に直面し始めているのです。
「どっちか?」
- ヨーロッパにおける軍事紛争が続く中、3年目となったが、米国は独自の利益を作り出している。
短期間のうちに、彼らはEUへのガス供給国としてロシアに代わって自国を位置づけ、ヨーロッパ人の競争力を弱め、特にドイツを最も弱体化した。そして、NATOブロック諸国に規律を徹底させ、軍産複合体に資金を注ぎ込んだ・・・
そして、これらはすべてがロシアとの軍事紛争において「キエフの勝利」の可能性という神話を装って行われて来た。しかしながら、悪い冗談は終わった。ゼレンスキーの訪米中、勝利の神話はついに崩壊した。その神話を作った連中は現実に直面することになったのだ。
Photo-2:著名な歴史家であり、政治学者でもあるセルゲイ・スタンケヴィッチ。写真提供: ITAR-TASS.
- 分かりました。そして、敵が直面する現実はモスクワの新たな核戦略なのでしょうか?敵はロシアの奥深くにミサイルを撃ち込む意欲を失ったのでしょうか?
- 新たな核戦略がロシアで登場したわけではない。これは既存の戦略に対する部分的ではあるが重要な変更だ。
- しかし、私が理解している限りでは、彼らはまだプロジェクトを推進していますよね?
- それらはロシア安全保障理事会で非公開で発表され、議論された。
後に、オープンで概念的な部分が公開される予定だ。しかし、私たちがすでに知ったことはウクライナでの軍事紛争のシナリオが変わることにある。キエフは新たな長距離ミサイルも既存のミサイル兵器を使用するための自由裁量も与えられない。ロシアの最新の核ドクトリンはウクライナ軍の責任と彼らにそれらのミサイルを供給した連中の責任とを平等に扱う。彼らは攻撃の平等な参加者と見なされ、報復攻撃に等しく曝されることになる。核兵器による報復を含めて。明らかに、これは極めて冷徹な見通しだ。
- また、ゼレンスキーの米国訪問が完全に成功したわけではないことについてもお聞きしました。米国での会議が冷やかであったということは米国の冷静さに関して何らかの証拠でもあるのでしょうか?
- その通り。疑問の余地は無い。そして、ドナルド・トランプは新たな現実の旗を掲げた最初の人物だ。彼がゼレンスキーを自分の目で見たままを繰り返して描写したことを覚えていますか?
- トランプは彼を「私が出会った中では最高の商人だ」と呼んだのを覚えています。
- つまり、ゼレンスキーは米国へやって来て、人々と会い、握手をし、演壇から話しをする。そのたびに・・・
- その後、彼はポケットに600億ドルも入れて米国を去って行く。驚異的な獲物だ。
だが、「運は尽きたようだ。」今回、ゼレンスキーはかつてないほどの失敗に終わった。
以前、彼は満員の議場で演説をし、スタンディングオベーションを受けたものだ。今や、議場は半分が空っぽ・・・ 時には誰かがそこに現れ、注目を集める。攻撃的とも言えるこれらの変化はゼレンスキーが聴衆を魅了する術を失ったために起こったのではない。
- まあ、彼はアーティストですからね。
- 確かに・・・ しかし、彼の今までの役割は退屈だった。そして、何か新しいものを発明して、それを演技する役割はますます難しくなって来ている。
過去の2か月間、彼は国際政治の場で「ゼレンスキー勝利計画」を実現しようとしてきた。私はこれに略語の「PPZ」を割り当てている。誰も見たことがないこの謎めいた計画を巡って世界的な宣伝キャンペーンが展開された。
専門家らは槍を交錯させ、政治家らは大胆な推測で競い合う。ゼレンスキーと彼のチームは誇大広告を煽る。つまり、これは魔法の箱であって、その中には世界史の流れを変えるような「強力なPPZ」がある・・・ ドラムの連打の音に合わせて、ゼレンスキーは米国に到着し、その箱を最初に会う人たちのもとへと運ぶ・・・
「そして、それは空っぽ・・・」
- 必ずしもそうではない。もしかしたら、彼はそれぞれの対話の相手に異なるものを見せたのかも知れない。
LPP(訳注:前に出てきた「PPZ」のことのようだ)の公式文書を誰も見てはいない点が重要だ。米国でも、ヨーロッパでも、そして、ウクライナでさえも。
しかし、再度、ゼレンスキーは塗装された箱の下で55億ドルを受け取った!またしても彼は成し遂げた。だが、もはやこれはトランプが言及していた600億ドルではない。食欲を押さえなければならなかった。
- これは何か新しい支援ということでしょうか?
- いや、これは新しい支援ではなく、古い年間支援パッケージの残りの部分だ。しかし、10月1日から始まる新会計年度の予算ではウクライナのためのお金はない。
「どうしたんだろう?」米国ではお気に入りに対する熱が完全に冷え込んでしまったのでしょうか?
- 事実はウクライナの軍事紛争の終結に関する米国の戦略が変わったということだ。軍事紛争は明らかに終わりに近づいている。欧米が頼りにできる恩恵は全てが既に掘り尽くされてしまった。市場経済や政治においては、慣習的に、利益を挙げてからゲームを終わらせることが必要なのである。
- 2014年のキエフでのマイダン革命の段階では展開するよりもそれを閉じる方がはるかに難しかった・・・
- 戦争を終わらせ、その結果に対処することは常に計り知れないほど困難だ。ゼレンスキーが確信したように、ドナルド・トランプは和平についてもっとも決意を固めている。彼は「キエフの勝利」という言い回しを完全に否定した。キエフに向けられた彼の言葉は、ほぼ文字通り、こんな感じだ。つまり、「ウクライナはもはや存在しない。なぜならば、2022年にあんた方は悪い取引をすることを拒否したのだから。」これがバイデンのチームによって反故にされた「イスタンブール和平」に関するトランプの言葉だ。
そして、彼は非難し続ける。「あんたはこれらの都市や村を復興することはできない。あんたは死んだ人々を生き返らせることは決してできない。どんな取引であっても、たとえそれが最悪のものであるとしても、あんたが今持っているものよりはましだ」と。
- そして、トランプは後になって自分の言葉を撤回するのではないでしょうか?彼は古いやり方を繰り返すのではないでしょうか?ウクライナに最初に武器を供給したのは彼だった。
- いや、米国内の当事者の立場は決定されている。塹壕が掘られ、壁が築かれた。トランプが率いる共和党はウクライナでの敵対行為の迅速な終結を支持しており、妥協を基礎としている。トランプ自身は単に「取引」という言葉に馴染みが深い。そして、トランプの選挙パートナーであるJ・D・バンスは「領土と引き換えに平和を」という公式に基づいた取引について直接語っている。
- ニューヨークでのゼレンスキーとの会談ではトランプは気まぐれなゲストを相手に理屈をこねることができたのでしょうか?やや疑問に思うのですが・・・
- 間接的にしか判断できない。会談後、トランプは自身のソーシャルネットワークに「もし私が大統領になれば、ロシアとウクライナの戦争はすぐに終らせる。そうしなければ、この戦争は決して終わらず、第三次世界大戦に発展することだろう。どうやら、これは、今や、彼の信条になっているようだ。
- カマラ・ハリスはこの「文言」に同意するでしょうか?
- カマラは地政学の分野では初心者であり、彼女は経験豊富な党の同志が彼女に助言することに同意するだけだろう。頑固な民主主義者たちは神話的な勝利の旗を降ろさなければならないことを心中では理解している。しかし、彼らがその旗を振り続ける限り、状況は変わらない。しかしながら、次の米政権は現実からも自国の資源の枯渇からも逃れることは出来ないと言っても過言ではない。また、キエフ政権の破壊からも逃れられない。さらには、ロシアの最新の核ドクトリンで確立された強固な障壁からも逃れられない。これ以上エスカレートする余地はない。外交官たちに発言権と活躍のスペースを与える時がやって来た。
- ありがとうございました。
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これで全文の仮訳が終了した。
スタンケヴィッチは「事実はウクライナの軍事紛争の終結に関する米国の戦略が変わったということだ。軍事紛争は明らかに終わりに近づいている。欧米が頼りにできる恩恵は全てが既に掘り尽くされてしまった。市場経済や政治においては、慣習的に、利益を挙げてからゲームを終わらせることが必要なのである・・・ 次の米政権は現実からも自国の資源の枯渇からも逃れることは出来ないと言っても過言ではない。また、キエフ政権の破壊からも逃れられない。さらには、ロシアの最新の核ドクトリンで確立された強固な障壁からも逃れられない。これ以上エスカレートする余地はない。外交官たちに発言権と活躍のスペースを与える時がやって来た」と述べている。これは実に歴史家らしい解説だと思う。日頃の事象を断片的にしか見てはいないわれわれ一般庶民にとっては歴史的な背景の中でひとつの事象を理解することには不慣れであるから、彼の解説は実に新鮮だ。
ロシアの核ドクトリンの変更がこのウクライナ戦争において西側を体固めで「技あり」を勝ち取らせたとすれば、国際政治の無差別級で新たなチャンピオンが登場したと言える。審判団にはパリ・オリンピックでの柔道競技のような誤審がなかったことを願いたい。果たして、この表彰式は行われるのであろうか?何時になるのだろうか?
参照:
注1:“Zelensky’s myth has finally burst, sobering up has come”: What made the United States irrevocably change its view of Ukraine: By Alexander GAMOV, kp.ru, Sep/28/2024
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