子どもたちの免疫力を取り戻す方法…それは不潔を経験させること
不衛生が健康を取り戻す。
過剰な衛生環境からのエスケープ
医学メディアを見ていましたら、「泥や土の中で遊ぶと子どもの免疫力が高まる」というタイトルの記事を見つけました。
これはまあ一種当たり前の話でもあり、相当以前からこのことにふれることもありましたけれど、この記事では対応する数多くの医学論文のリンクが示されていまして、納得性の強いものですので、ご紹介したいと思いました。
以前から私は、「現在の(コロナ前を含んでの)日本の生活環境は衛生的すぎる」と思っていまして、これが、
「子どもの病気やアレルギーが増えている大きな原因のひとつ」
だと確信しています。
最初にこのことを書いたのは 8年前の以下の記事でしょうか。前半は、ややくだらない日記となっていまして、後半に本題があります。
(記事)数百万の「無菌室」が導く崩壊 : 「微生物との共生を拒否した日本人」たちが創り出す未来の社会は
In Deep 2016年12月13日
以下は、2010年までの少し古いデータですが、1960年代までの日本には、「いかなるアレルギーも存在しなかった」ことがわかります。
日本におけるアレルギー疾患の患者の異常な増加
日本健康増進支援機構
衛生状態も栄養状態も現在よりはるかに悪かった時代には「アレルギーは事実上なかった」わけです。
そして、時代の流れの中で、家庭や外部などの衛生環境が劇的に良くなっていく中で、「かつてはなかったアレルギーという病気」が蔓延し始め、あるいは、グラフにはないですが、「花粉症」なんてのもそうですけれど、それによって、かつては服用する必要のなかった薬剤を服用せざるを得ない人たちがたくさんいる。
アレルギーの薬は、一般的には「抗コリン薬」というものが多く、これにはさまざまな作用があり、特に「認知症が著しく増加する」ことが、研究でわかっています。こちらの記事に記しています。
以下のような報道もありました。
2015年の報道より
米ワシントン大学を中心とする研究グループが、内科分野の国際誌である JAMA インターナル・メディシン誌オンライン版で、風邪や花粉症など、身近な薬がアルツハイマー病を増やすことを 2015年1月26日に報告した。
問題になるのは、抗コリン作用を持つ薬だ。抗コリン作用を持つ薬剤は多く、総合感冒薬や鼻炎薬、胃腸薬、一部の抗精神病薬、抗うつ薬などが知られている。
認知症およびアルツハイマー病の発症と、抗コリン作用薬の使用状況の関係を調べたところ、抗コリン作用薬を長期間にわたって多く使用するほど認知症のリスクが増していた。
どんな薬にでも作用あるいは副作用があり、飲まなくてもいいものは飲まないほうがいいのですが、現実として、これだけアレルギーの人たちが多くなっていると、それらを服用している人もまた多いのだと思われます。
いずれにしても、主要国の、特に都市部の生活環境は清潔過ぎます。
もともと過剰衛生気味だったところにコロナの超過剰衛生の時代がやってきて、何から何までメチャクチャになってしまった。
こんな環境で子どもたちの免疫力が強くなるわけがない。
2021年に、カナダの微生物学者たちが、
「パンデミックでの過剰衛生や社会的距離が特に子どもたちの腸内細菌環境に影響を与えており、長期間の重大な健康上の影響を残す」
と警告を発していたことをこちらの記事でご紹介したことがあります。
現在、日本でもマイコプラズマなどをはじめとした子どものさまざまな感染症が爆発的な流行を示していますが、冬になれば、さらにさまざまな感染症が爆発的に流行すると思われます。
そのすべての原因が過剰な衛生だけではないにしても(コロナ時代には免疫を下げるいろいろな要素がありましたので)、過剰衛生の「代償」の面もあるとは思います。
特に子どもは、常日頃からウイルスや細菌、ダニ、花粉、その他の魑魅魍魎に常にさらされ続けるべきです。
それでやっと強くなる。
ときには、それらのウイルスや細菌により何らかの病気にもなるかもしれないですが、それは免疫を獲得する大チャンスでもあります。
この日本の、たとえば 99.9%殺菌などという過剰な衛生環境の構造が続いていく限り、日本の子どもに健康は戻らないと思われます。
ここから医学メディアの記事です。
泥や土の中で遊ぶと子どもの免疫力が高まる。これがその方法だ
Playing in mud and dirt can boost your child’s immune system – here’s how
medicalxpress.com 2024/10/27
ソーシャルメディアでの清掃動画などの人気により、私たちは身の回りのあらゆるものがいかに汚れているかを常に思い知らされている。
そして、家のあらゆる表面を消毒したり、子どもの手を清潔に保つために抗菌ジェルを持たせて学校に行かせたりすべきだと思う人たちもいるかもしれないが、科学的には、少しの汚れにさらされることが子どもの健康に良いことが示されている。
土の中の微生物に触れることで、実際に子どもたちの免疫システムが強化され、アレルギーや自己免疫疾患を発症するリスクが軽減される可能性があることを示す証拠がある (論文1、論文2)。
泥は単なる土と水の混合物ではない。それは微生物で満たされた複雑な生態系だ (論文)。
1グラムの土には、最大 100億個の微生物が生息している可能性があり、その種類は数千に及ぶ可能性がある (論文)。
泥や土壌に存在する多様な細菌、菌類、その他の微生物は、私たちの健康に重要な役割を果たしており、免疫学者たちが「免疫訓練」と呼ぶものの鍵となる (論文)。これは、免疫システムが有害な病原体と無害な環境物質を区別することを学ぶプロセスだ。
幼少期の免疫システムは、特に順応性が高い。さまざまな微生物にさらされることにより、バランスをとることを学ぶ (論文)。つまり、有害な侵入者には積極的に反応し、花粉や食物粒子などの無害な物質には反応しないことを学ぶのだ。
しかし、そのような免疫の「訓練」が不足すると、免疫システムがさらに悪化する可能性がある。
「衛生仮説」によれば、社会が都市化して衛生的になるにつれて、私たちの免疫システムは、適切に発達するために必要な微生物の刺激を奪われるようになった。
これにより、免疫システムが過敏になり、花粉やほこりなどの無害な物質を危険な侵入者と誤認する可能性がある (論文)。この過敏症は、喘息、湿疹、花粉症などのアレルギー症状として現れる可能性がある。
特に幼少期に微生物に触れる機会が少ないと、免疫系が日常的な病原体に適切に対処できるように訓練されていないため、風邪やその他の小児疾患を発症する可能性も高まる可能性がある (論文)。
こうした免疫トレーニングの欠如は、衛生的な環境(動物や自然との接触が限られている都市など)で育った子どもが、喘息や食物アレルギーなどの症状を発症する可能性が最大 50%高い理由を説明できる可能性がある (論文)。
自然の微生物との接触による刺激を受けていない子どもの免疫システムは、無害な誘因に対して過剰反応する可能性があるのだ。
さらに、定期的な微生物との相互作用がなければ、免疫系が体自体を攻撃する可能性があり、1型糖尿病や多発性硬化症などの自己免疫疾患の発症につながる可能性がある (論文)。
農場やペットのいる家庭など、微生物に多くさらされる環境で育った子どもは、アレルギーや自己免疫疾患を発症する可能性が低いことも研究で示されている (論文)。
微生物に触れることが子どもの発達中の免疫系に非常に良い理由はたくさんある。例えば、土壌によく見られるバクテロイデス・フラギリスは、免疫機能に重要な主要分子の生成を助ける (論文)。
微生物への曝露は、子どもが制御性 T細胞(免疫系が外部からの侵入者にどのように反応するかを制御する白血球)を発達させるのにも役立つ (論文)。T細胞は自己免疫反応も防ぐ。微生物への曝露が少ないと自己免疫疾患を発症する可能性が高くなる理由は、このためかもしれないが、ただし、これは多くの要因の 1つにすぎない (論文)。
免疫の発達
泥遊びは、ただの汚れる屋外アクティビティではない。触ったり、匂いを嗅いだり、さまざまな質感を操作したりするなど、脳の発達を刺激し、感情の回復力を高める重要な感覚体験を提供する (論文)。感覚活動(泥遊びなど)は子どものストレスを軽減することができ、これは免疫システムの正常な機能を維持するためのもう一つの重要な要素だ (論文)。
研究によると、土壌によく見られるバクテリアの一種であるマイコバクテリウム・バッカエは、炎症を軽減し、気分を改善することさえあることが示されている (論文)。
これは、主要な神経伝達物質であるセロトニンの放出に影響を与えることによって行われる。動物実験では、マイコバクテリウム・バッカエにさらされると、ストレスや不安の症状が軽減された。同様の効果が人間にも起こる可能性があるという証拠が出てきている (論文)。
さらに、屋外で遊ぶことは身体活動の一種であり、血行を促進し、免疫細胞の生成を刺激することで免疫の健康をさらにサポートする。
泥遊びの衛生上のリスクを心配する親もいるかもしれないが、子どもたちが屋外で安全に遊べるようにするためにできることはたくさんある。
清潔な遊び場を選ぶ:子どもが動物の排泄物や有害な化学物質に汚染されていない場所で遊ぶようにすること。家庭菜園や公園は最適な選択肢だ。場所がどの程度清潔であるかわからない場合は、遊ぶ前に土壌検査キットを使用して有害物質の有無を確認できる。
汚れに備えて服装を整える:ブーツやジャケットなどの防水性のある衣類は、後片付けが楽になるだけでなく、子どもたちが屋外で遊ぶことのメリットを体験できるようにする。
手指の衛生:泥遊びの後に手を洗うことで、有害な細菌が体内に入るのを防ぐことができる。これにより、微生物への健康的な曝露を維持しながら、感染のリスクを減らすことができる。
頻繁に繰り返す:より強力な免疫システムを構築するには、有益な微生物に繰り返しさらされることが必要だ (論文)。
泥遊びで子どもたちを汚れさせることは、単なる楽しみ以上のものをもたらすかもしれない。そして、それは、強い免疫システムを構築する上で不可欠な要素なのかもしれない。
ますます衛生化が進む世界では、土も含めて自然を受け入れることが、まさに子どもたちの免疫システムが繁栄するために必要なことなのかもしれない。
ここまでです。
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