慢性疾患の「90%」がミトコンドリアの機能不全が関係している
薬もミトコンドリアの機能を落とす一因
ほとんどの病気の原因はミトコンドリアの機能不全である模様
前回のベンゾジアゼピンに関する記事の中で、「ベンゾジアゼピン系の抗不安薬にはミトコンドリアを損傷する作用がある」ことに少しふれました。
そして最近、「慢性疾患の 90%がミトコンドリアの不均衡が関係している」というエポックタイムズの記事を読みまして、その記事をご紹介したいと思いました。
ミトコンドリアの重要性に関しては、30年以上にわたってミトコンドリアと健康の関係を調べてきた日本医科大学の太田成男教授が、WIRED 誌に語った以下の簡単な言葉でもわかります。
太田成男教授:「極端に言えば、病気とは『ミトコンドリアが足りなくなった状態』のことをいいます。身体には悪くなったところを治す力がもともと備わっていますが、治すためにはエネルギーが必要。エネルギーが十分にあれば、すなわちミトコンドリアが十分にあれば、病気になっても必ず健康になることができるのです」
なお、そもそも、ミトコンドリアとは何かというと、医療サイトの説明では以下のようなものです。
細胞内の核以外の場所は細胞質といいますが、そのなかにさまざまな細胞内小器官といわれるものがあります。その中の一つがミトコンドリアです。
1つの細胞内に 100〜 2000個あり、主な役割は、エネルギー産生です。ミトコンドリアは、それぞれ短い固有の「ミトコンドリアDNA」を持っています。
このようなものですが、これが人間の健康を大きく左右しているということが書かれた記事です。
そのエポックタイムズの記事は、それほど長いわけでもないですので、まず最初にご紹介させていただきます。
ここからです。
ミトコンドリアの不均衡は慢性疾患の90%に関係している
Mitochondrial Imbalance Linked to 90 Percent of Chronic Diseases
Epoch Times 2024/11/04
バスティア大学の自然医学専門家であるチェン・ジュンシュ氏によると、多くの慢性疾患の原因はミトコンドリアの機能不全にあるという(論文)。
チェン氏は 500以上の研究論文を検討し、自身の広範な臨床経験を基に、ミトコンドリアの健康と慢性疾患の関係についての包括的な理論を構築し、最近のインタビューでそれを披露した。
ミトコンドリアの重要な役割を理解する
ミトコンドリアは、人間の細胞の発電装置と呼ばれることがよくある。ミトコンドリアは、食物から摂取したグルコースや脂肪酸などの栄養素を、代謝中の細胞の主なエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)に変換する。
同時に、ミトコンドリアは人間の免疫の中核でもある (論文)。
健康なミトコンドリアは免疫反応を効果的に制御するが、ミトコンドリアの機能不全は免疫細胞を損傷し、多くの慢性疾患や細胞分化の障害を引き起こす可能性がある (論文)。
チェン氏は、糖尿病、高血圧、心臓病、ガン、アレルギー、関節リウマチなどの自己免疫疾患、さらにはさまざまな精神疾患など、一見多様な病状は、ミトコンドリア不均衡の「統一理論」によって理解できると主張している (糖尿病に関する論文、高血圧に関する論文、心臓病に関する論文、ガンに関する論文)。
これは、ほとんどすべての病気の原因をミトコンドリア不均衡にまでさかのぼることができることを意味する。言い換えれば、ミトコンドリア不均衡では、必ず身体の基礎代謝に何らかの異常がある。この見方では、慢性疾患の約 90%がミトコンドリア代謝の問題から生じていることが示唆されている。
チェン氏は、ハーバード大学精神科助教授で、マクリーン病院の代謝・精神衛生プログラムの創設者兼ディレクターであるクリス・パーマー博士の言葉を引用し、精神疾患は代謝症候群であると指摘した。
つまり、精神疾患や糖尿病、高血圧、心臓病、ガンなどの代謝性疾患はすべて、細胞代謝の問題によって引き起こされ、その機能的中核はミトコンドリアにあるということになる。
ミトコンドリアを修復する「カクテル
療法」
チェン氏は、ミトコンドリアの機能を回復し強化するための包括的な「カクテル療法」アプローチを開発した。このプロトコルには 5つの主要な要素が含まれている。
1. エネルギー源の最適化
まず、1日 30グラム以下の低炭水化物ケトジェニック食事法から始めることを勧めている。ミトコンドリアへの燃料供給をグルコースからケトンに切り替えると、血糖値を下げて安定させることができる。
また、これによりミトコンドリアの機能が徐々に正常に戻り、膵臓、肝臓、免疫系が健康な状態に戻る。これは、以前の長期にわたる高糖質 (炭水化物)の食事 (論文)、夜更かし、およびその他の要因により損傷したミトコンドリアに対する治療法となる。
こうした要因により膵臓や肝臓のミトコンドリアが損傷すると、インスリン抵抗性や耐糖能の低下が起こり、糖尿病につながる可能性もあるとチェン氏は述べた (論文)。
グルコースからケトンに切り替えると、グルコース代謝の制限から解放される。負担がなくなったミトコンドリアは、ケトンをエネルギーとして効率的に利用できるようになる。これにより、膵臓や肝臓などの臓器が活性化し、適切な機能が回復する。
2. 栄養補給
次のステップは、特定の栄養素を使用してミトコンドリアを修復し、再生することだ。これには、主要な重要な抗酸化物質であるグルタチオンをミトコンドリアに補給することが含まれる。
この栄養素は胃酸によって破壊されるため直接摂取することはできないが、N-アセチルシステイン(NAC)やグリシンなどの前駆物質をサプリメントとして摂取することができる。これらは適量のグルタチオンを合成し、ミトコンドリアによって生成されたフリーラジカルを中和して自己修復を助け、ミトコンドリアをゆっくりと健康な状態に戻す。
3. 接地と環境要因
もう 1つのアプローチは、直接地面に(裸足などで)接地するか、シューマン共振にさらすことによって接地することでミトコンドリア膜電位を回復することだ。
地球からのこの自然な電磁周波数は細胞膜電位を正常化し、ミトコンドリアの生産能力を最大 20%維持するのに役立つ。
ミトコンドリアは通常、毎晩エネルギーの 20%を消費して正常な細胞膜電位を回復する。
外部接地およびパルス電磁場
療法 (PEMF) は、電磁場を使用して治癒を促進し、さまざまな健康状態を改善する非侵襲的治療法であり、ミトコンドリアにかかるこのエネルギー負荷を軽減できる (論文)。
チェン氏は、このアプローチは病気を治すだけでなく、最適な健康と活力の達成にも役立つ可能性があると示唆している。
※ この「地面に裸足で立つこと」についての健康上の利点に関してはこちらの In Deep の記事で論文をご紹介しています。
4. 質の良い睡眠
陳氏は、「ミトコンドリアカクテル療法」には運動と十分な休息も必要だと強調した。環境汚染、食品添加物、農薬、その他の毒素によるミトコンドリアの損傷を避けることも同様に重要だ。
彼は特に、質の高い睡眠習慣を維持し、毎晩十分な深い睡眠を確保することが重要だと述べた。これは常識のように聞こえるかもしれないが、多くの人はそうしていない。
5. 「ゾーン2」エクササイズ
チェン氏は、低心拍トレーニングに重点を置いた「ゾーン2」エクササイズを強く推奨している。(ゾーン2 エクササイズの説明)
このタイプのエクササイズは有酸素呼吸を利用するが、乳酸を生成しないため、疲労を感じない。
ゾーン 2の運動の例としては、超低速ジョギング、早歩き、またはゆっくりしたサイクリングなどがある。これらの運動中は会話はできるが、呼吸が少し荒くなっているのがわかるはずだ。このレベルの運動はミトコンドリアの効率を高め、臓器を徐々に修復するのに役立つ。
対照的に、より激しい持久力トレーニングはミトコンドリアの数を増やし、全体的な生産能力を高めることができる (論文)。
チェン氏によると、どんな運動でも、効率性の向上、ミトコンドリアの数の増加、またはその両方など、ミトコンドリアの健康に良い効果があるという。
しかし、ゾーン 2の運動は、ほとんどの人にとってより扱いやすい。怪我をする可能性が低く、屋内でも屋外でも行えるため、より取り組みやすい選択肢となっている。
人はなぜ病気になるのだろうか
チェン氏は、病気は環境要因や個人の選択による自然な健康原理の違反から生じることが多いと強調した。病気は警告信号として機能し、必要なライフスタイルの調整を促す可能性があるとチェン氏は示唆している。
主な予防策は次のとおりだ。
・環境毒素を避ける
・食品添加物や農薬への曝露を制限する
・意識的に食事を選択する
・一貫した睡眠パターンを維持する
・個人の体力レベルに適した定期的な運動をする
チェン氏は、病気は時には幸運の裏返しで、休息を取り、生活習慣を調整し、過去の過ちから立ち直り、体を健康な状態に戻す必要性を人々に思い出させることもあると語った。
ここまでです。
この中にあります「ミトコンドリアが免疫の中核である」ということについては知りませんでしたが、ネイチャー誌の「ミトコンドリアは免疫の原動力である」という論文にあります。
そして、「精神疾患の原因も、根本的にはミトコンドリアの機能障害である」ということも昨年知りました。以下の記事にあります。
・精神疾患の根本原因は「ミトコンドリアの機能障害」という説を知り、今の生活環境は、それをもたらすものばかりであることに愕然とする
In Deep 2023年7月6日
いろいろなものが、ミトコンドリアを攻撃しますが、環境毒素と共に、私たちが最も攻撃を受けているのは「一般的な薬剤」によるものと思われます。
米国のヘルス関係のメディアの記事に、「ミトコンドリアにダメージを与える薬剤の一覧」が掲載されていまして、あまりにも多いですので、すべてを書き出すのは無理ですが、非常に一般的な、あるいは数多く処方されているものとしては、以下のようなものがありました。
ミトコンドリアにダメージを与える薬剤の一部
・アスピリン、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤の一部
・フルオロキノロン系などの抗生物質
・抗うつ薬の一部
・ソラナックスやジアゼパムなどベンゾジアゼピン系抗不安薬の一部
・スタチンなどのコレステロール薬の一部
・抗がん剤の一部
・糖尿病治療薬の一部
などです。
解熱剤のアセトアミノフェンは、日本ではカロナールとも呼ばれ、コロナの時なども大々的に処方されていましたが、これもまたミトコンドリアにダメージを与えるようです。
「病気を治すために服用する薬が、別の病気を作り出す」
という「悪い輪廻」の例のひとつともいえるかもしれません。
そのメディア記事には「ミトコンドリア機能不全に関連する症状」という一覧もありまして、筋肉から神経から脳から胃腸、腎臓、心臓、肝臓から、肺、目や耳にいたるまで、あらゆる病気や症状が並んでいます。
「脳の項目」だけ抜粋しても、以下のように記されています、
脳:発達遅延、知的障害、自閉症、認知症、発作、不安、うつ病、その他の神経精神障害、非定型脳性麻痺、非定型片頭痛、脳卒中、学習障害、脳卒中様症状。
現在まったくの健康である方々は、ミトコンドリアのことなど考えなくていいのでしょうが、何か調子に問題がある場合、ミトコンドリアの状況の改善というのは行っていいことなのかもしれません。
そう簡単には修復されないものなのかもしれないですが。
なお、先ほどのエポックタイムズの記事には、「ケトニック食事法」つまり、炭水化物をできるだけ摂らない食事法という部分がありましたが、日本人に関しては、あまり極端なのはどうなのかなと思う部分はあります。
日本人とコメ
炭水化物の話というより、これは「白米」の話となるのですが、白米は(特に冷えると)難消化性デンプンというものの形成が促進されるらしいのですが、難消化性デンプンというものは、
「腸内の善玉菌に栄養を与えて健康的な消化をサポートする」
ことがわかっています。
2017年の「食事中の難消化性デンプンがヒトの腸内微生物叢、メタプロテオーム、メタボロームに与える影響」という論文にあります。
これは、ちょっと関係ない話ではあり、ミトコンドリアの話ではなく、腸内細菌環境の話なんですけれど、ある論文を読んだことがあり、それによると、
「日本人の腸内細菌叢は他の民族とはかなり異なる特異なもの」
のようなんです。
話が逸れすぎますので、このことはまた別に書かせていただこうかとも思いますが、東京大学や慶應大学などの複数の大学の研究者たちによる「健康な日本人の腸内細菌叢とその微生物的・機能的特異性」という論文にあります。
何らかの日本人特有の食べ物の影響か、あるいはそれ以外の理由があるのかどうは定かではないですが、「他の民族とかなり違う腸内細菌環境を持つ」ようです。その一端にはお米という食文化というのもあるのかなとか思ったり(根拠ナシ)。
本題に戻しますと、現在の社会には、ミトコンドリアにダメージを与えるものがたくさんあります。環境毒素やさまざまな薬剤が、結果としてミトコンドリアにダメージを与えることで病気を誘発する。それも身体だけではなく、精神のほうの疾患にも関係します。
また、スパイクタンパク質もミトコンドリアにダメージを与えます。2022年の「スパイクタンパク質の「毒性のメカニズム」が判明」という記事で論文をご紹介していまして、そこに「ミトコンドリアの機能障害と断片化が起きる」ことが書かれています。
今の生活は全体として、ミトコンドリアが攻撃を受けやすい環境となっているわけですので、それを少しでも避けていくのが健康において、ある程度は重要なことなのかなとも思います。
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