国民民主党が掲げる「103万円の壁」は突破可能だが…それを阻む「真の元凶」の正体
仮に103万円の壁が突破できても、その先に待ち受ける増税の嵐が吹き飛ばし、国民生活を困窮させる財務省の巨大な罠。
減税で「国民が苦しくなる」と言いたげな…
いわゆる「103万円の壁」の引き上げが、話題になっている。
衆議院選挙で、7議席から28議席と大躍進して政界のキャスティングボードを握った国民民主党が、「手取りを増やす」をスローガンに、「基礎控除などを103万円から178万円に拡大」と「トリガー条項の凍結解除でガソリン代を安くする」などの政策を推し進めているからだ。
現在、給与所得控除55万円と基礎控除48万円を合わせて103万円までは給料をもらっても所得税がかからない。この控除を178万円まで引き上げ、178万円までは稼いでも課税されないようにするのが、国民民主党の意図するところだ。
党は件の減税額を下記のような表にしている。
これに対して、すぐさま噴出したのが財源論だ。
林芳正官房長官が10月31日の記者会見で、国民民主党の主張通りに「年収103万円の壁」を解消するには、国と地方で7兆~8兆円程度の減収が見込まれるとの見解を示した。
これを後押しするように、11月5日に村上誠一郎総務大臣が、「機械的に計算すれば、地方の個人住民税だけで4兆円程度の減収になる」という試算を明らかにし、まるで「皆さんの生活が悪影響を受けますよ」とでも言いたげな口ぶり。
だが、この財源論には、ひとつ大きな視点が抜け落ちている。
国の税収は過去最高を更新
確かに、政策の実現に7〜8兆円かかると言われれば、「どこからそんな金をひねりだせばいいのか」と思う人は多いだろう。
だが、私は、その心配はないと思う。
なぜなら、この5年間で国の税収は、13.7兆円も増えて、過去最高を更新し続けた点にある。この5年は、多くの人が新型コロナに苦しみ、それに続いて物価高に飲み込まれた時期をふくむ。
にもかかわらず、国の税収は58.4兆円から72.1兆円と、なんと約14兆円も増えている。この税収の最大の押し上げ要因は、消費税だ。
しかも、この間の税金の使い方を見ると、膨張する税収に合わせて予算も水膨れしていることがわかる。
「基金」「予備費」という内閣の財布
例えば、財政投融資に代わって、今や国の第二の財布となりつつある「基金」。国の府省庁が設置する約190の「基金」の残高が20年度末から急増している。
2019年までは2兆円台で推移していた残高(使われていないお金)が、20年には8.3兆円、21年には12.9兆円と跳ね上がり、ついに22年度末には約16兆6000億円と16兆円を超えた。
もちろん「基金」がコロナ対策や物価高のために使われた面はあるが、ただ無駄だと思われるものも多い。
いい例が、コロナ対策で中小企業などの借入金利を補填する「特別利子補給事業」として1000億円必要として積まれた「基金」のうち、使われたのはたった147億円。あとは積みっぱなしで年度末に2000億円をすでに超える残高になっている。
基金のお金は税金や国債だが、一般社団法人など省庁の外部に置かれるため、国民や監督官庁のチェックが行き届きにくくなっている。
国会でチェックされないことをいいことに膨れ上がっているのは、「基金」だけではない。災害などに備えて政府が使えるようにしている「予備費」も、ここ数年で膨大に膨れ上がっている。
予備費はこれまで3000億円程度で推移していたが、コロナ対策として20年に12兆円となり、その後も5兆円、10兆円という巨額な予備費が恒常化しつつある。予備費は、国会の承認がなくても使えて、何に使ったかは事後報告ですんでしまう政府の裁量で使えるお金。今や、内閣の財布といって差し支えないだろう。
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