イスラエルによるガザ住民の強制移動は「戦争犯罪」 国際人権団体が報告書

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ガザ難民 戦争

イスラエルによるガザ住民の強制移動は「戦争犯罪」 国際人権団体が報告書

イスラエルはこの報告書を「完全に虚偽で、現実とかけ離れたもの」だとしている。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は14日、イスラエルがパレスチナ・ガザ地区で住民の大規模な強制移動を意図的に引き起こし、戦争犯罪と人道に対する罪を犯したとする報告書を発表した。

国連によると、ガザでイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まってからの1年で、ガザ人口の9割にあたる約190万人が家を追われた。ガザの79%がイスラエルによる避難命令の対象地域になっている。

HRWの報告書は、イスラエルの措置は「強制移動」に相当し、「組織的かつ国策の一環であることが証拠で示されている」としている。また、「民族浄化の定義にも合致する」とも指摘した。

イスラエルはこの報告書を「完全に虚偽で、現実とかけ離れたもの」だとしている。

イスラエル外務省のオレン・マーモスタイン氏は、「HRWの報告書の主張とは逆に、イスラエルの努力はハマスのテロ能力を解体することだけに向けられており、ガザ住民に向けられたものではない」と、ソーシャルメディアに投稿。「(イスラエルは)武力紛争法に沿って活動し続ける」と付け加えた。

HRWは、ハマスが民家や民間インフラにまぎれて活動し、民間人を人間の盾として利用しているとも非難している。

強制移動を「正当化できる軍事的理由」はないと


今回の報告書は、イスラエル軍がガザ北部での地上作戦を継続し、この5週間で最大13万人が家を追われる中で発表された。

イスラエルはガザ北部での作戦について、ハマスの再編を阻止するためだとしている。ガザ北部のジャバリア、ベイトラヒア、ベイトハヌーンでは7万5000人が包囲されたまま、水や食料の供給が減少しつつあると、国連は指摘している。

戦争法では、占領地にいる民間人の強制移動は、民間人の安全を確保する目的や、軍事上絶対的な必要性がある場合を除いて禁止されている。

強制移動が合法とされるのは、民間人が安全に移動でき、宿泊場所や必要な物資が提供される場合に限られる。また、その地域での敵対行為が収束した後に故郷に帰還できることも条件とされている。

今回のHRWの報告書は、家を追われたパレスチナ人の証言や、イスラエルの避難命令に関する分析、破壊された建物を捉えた衛星画像、空爆の動画や画像に基づいて作成された。

HRWはガザ住民のほぼ全員が家を追われることを正当化する、もっともらしい軍事上の絶対的な理由はなく、合法とみなされるためのほかの条件も満たしていないと結論づけている。

アメリカを拠点とするHRWは、イスラエルの避難命令は「一貫性がなく、不正確で、民間人に十分な時間的猶予をもって伝えられていないことが多い」とし、「障害がある人など、避難が困難な人々のニーズを考慮していない」と指摘。また、イスラエル軍が「指定された避難ルートや安全地帯を繰り返し攻撃した」とも付け加えた。

さらに、イスラエル当局が「人道援助や水、電気、燃料を、ごく一部を除いて、必要としている民間人に届かないように」していると主張。病院やパン屋などの不可欠なリソースを損なうあるいは破壊する攻撃も行っていると、報告書は非難している。

「意図的に民間インフラを破壊」


HRWはイスラエル軍が「イスラエルとガザの境界沿いで拡張された『緩衝地帯』と、ガザを二分する回廊をつくるという明らかな目的をもって、家屋の破壊など、意図的に民間インフラを破壊したり深刻な損傷を与えたりしている」とも主張している。

「破壊行為は非常に大規模で、多くの人に永久的な避難を余儀なくさせる意図があることを示している」と、報告書は警告している。

報告書によると、イスラエルの閣僚たちは、ガザの領土は縮小し、イスラエル人入植者の手に渡るだろうと述べたとされる。

「強制移動は広範囲に及んでいる。それが組織的かつ国策の一環であることが証拠で示されている。このような行為は人道に対する罪にもあたる」とHRWは指摘している。

さらに、「ガザの緩衝地帯や安全回廊において、他民族であるパレスチナ人の組織的かつ暴力的な強制移動が恒久的に計画されている可能性が高い」とし、こうした行為は「民族浄化に相当する」としている。

米国務省のヴェダント・パテル報道官は14日の記者会見で、イスラエルの戦法がジェノサイド(集団虐殺)にあたるという主張には「まったく同意できない」と述べた。

「我々はそのような言い回しや非難は、まったく根拠のないものだと考えている」

イスラエル軍は恒久的な緩衝地帯の設置を模索しているとの指摘を否定している。イスラエルのギドン・サール外相は最近、ガザ北部の避難民はこの戦争が終われば故郷への帰還が認められるだろうと述べた。

ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を奇襲し、約1200人を殺害、251人を人質に取った。これを受け、イスラエルはガザでハマス壊滅作戦を開始した。

以来、ガザでは4万3700人以上が殺害されていると、ハマス運営のガザ保健省は発表している。

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