ハリス支持者の半数が国外移住希望?

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勝利したトランプ大統領 アメリカ大統領選

ハリス支持者の半数が国外移住希望?

トランプ勝利後に起きている混乱と抗議運動=高島康司

トランプが地滑り的に勝利してからも、日本では米国内で起こっていることは伝えられていない。共和党が上下両院を制し「レッドウェーブ」とも呼べる政権基盤を確立する一方で、民主党支持者の間ではパニックと怒りが広がり、抗議活動や移住希望者の増加といった混乱が見られる。これを詳しく紹介する。(『 未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ 』高島康司)

トランプ勝利後、アメリカで何が起きているのか

トランプの地滑り勝利後のアメリカ国内の状況について解説したい。

 大統領選挙の最終結果が出た。選挙人獲得数は、ハリス226人、トランプ312人と歴史的にもまれな大差でトランプが勝利した。また、有権者の総得票数でも、ハリス48.1%、トランプ50.2%とトランプが上回っている。まさにトランプは国民からの付託を受けた大統領となった。

 さらに共和党は上下両院も過半数を制し、まさに大統領府、上院、下院を共和党が独占するレッドウェーブと呼べるような状況になっている。凄まじい躍進だ。これでトランプは、自分の実現したい政策は、大きな抵抗なしに実現できるフリーハンドの力を手にした。

米国内の状況、いまだにショック状態

 前回の記事でも書いたように、ここまで大差がついてトランプが圧勝すると、民主党はどんな手を使っても選挙の結果を覆すことは不可能だ。しかし、それにもかかわらず、ハリスに副大統領を辞任させ、高齢の最高裁判事と入れ替えてハリスを任命し、ハリスの主導で最高裁が選挙結果に異議を唱えるというような、現実性のない案まで出てきている。もちろん民主党がこれを実行することはないだろうが、このくらい民主党はパニック状態に陥っている。

 いまアメリカ国内では、大規模な暴動や抗議運動は起こっていない。しかし、11月8日に発表された世論調査会社、「YouGov/Economist」の調査によると、カマラ・ハリスに投票した人の47%が、トランプは正当な大統領にはなれないと考えていることが明らかになった。また、カマラ・ハリス支持者の半数近くが、ドナルド・トランプが選挙で合法的に勝利したとは考えていない。

つまり、不正があったと見ている。トランプが正当な大統領であることを認めていないのだ。

また、別の調査によれば、ハリス支持の有権者の54%が国外に移住したいと考えている。

 ハリスに投票した有権者のうち、5%が「必ず移住する」、5%が「おそらく移住する」と答えている。また、44%は移住を希望しているが、「おそらく移住しない」が27%、「間違いなく移住しない」は17%だった。引っ越したいと思っているが、その可能性は低いという人のうち、経済的な理由、家族、地域社会との結びつきが、その場所に留まり続ける理由となっている。

 引っ越しを考えている、または計画している人のうち、90%が他国、80%が他州への引っ越しを検討している。移住を検討している国のトップはカナダ(41%)、イギリス(19%)、メキシコ(16%)。 移住を検討している州のトップは、カリフォルニア州(14%)、ニューヨーク州(8%)、コロラド州(8%)などの民主党支持の州であった。

 もし仮に、ハリス支持の有権者の10%がアメリカ国外に移住することになったとしても、実に莫大な人口流出となる。

妊娠中絶が厳しくなることが主な理由

 同調査によれば、移住を検討する動機となる問題の第1位は妊娠中絶である。中絶が連邦政府によって禁止される可能性への懸念が61%、人種的不平等の拡大懸念が55%、進歩的権利が覆される可能性への不満が54%であった。これが、移住を望む理由の上位を占めている。

 さらに、医療アクセスの低下(54%)、社会的不平等の拡大(53%)も懸念している。 銃規制の欠如(50%)、環境規制緩和(43%)、公教育の弱体化(44%)も大きな懸念材料だ。

 ちなみに、中絶は10の州で投票対象となった。そのうち8つの州では、有権者の過半数が妊娠中絶支持の立場を支持し、1つの州(サウスダコタ州)では有権者の過半数が妊娠中絶支持の立場を拒否した。

 ミズーリ州、モンタナ州、アリゾナ州、ネバダ州の赤い州では、有権者が圧倒的に中絶の「権利」を支持した。

 もちろんこれは、「ロー対ウェイド裁判」が覆されて以来、全国的な傾向を引き継いでいるだけである。人工妊娠中絶が投票対象となった場合、賛成派はほぼ毎回敗北しているのだ。

いまだにショック状態

 いまの民主党支持者は、トランプが再びホワイトハウスに戻るので、ただパニックに陥っているという状態だ。ということでは、大規模な抗議運動や暴動が発生する状況にいまははない。

 リベラル派の女性たちがカマラ・ハリス副大統領の敗北を悼み、反抗的に頭を剃っている動画が、「TikTok」に出回っている。

 別の動画では、女性が座っている間に別の女性が髪を切り落とし始めている。動画中のキャプションによると、この女性は頭を剃ることが、「自分をコントロールするために残された唯一の手段」だということだ。そして、「私たちは戦い続け、すべての女性とマイノリティとともに立ち上がる」と書かれている。

 これは「TikTok」にアップされたトランプ勝利に怒り狂うハリス支持者の怒りの爆発だ。YouTubeにアップしたのでぜひ見てほしい。


 また、産婦人科の医師助手が、2024年の大統領選挙でドナルド・トランプを支持した有権者の娘や孫に対して、死を覚悟した報復をしたいと表明し、フィラデルフィアの病院を解雇されてもいる。

 また、いま「アクア・トファナ」という語句が多く検索されている。「アクア・トファナ」とは、1630年頃シチリアでジュリア・トファナという名の女性によって作られた強力な毒薬で、歴史的に女性が男性を殺すことで関係から解放されるために使われていた。ソーシャルメディア上では、一部の狂信者たちが、アクア・トファナをトランプ支持者に使うべきだと提案しているのだ。この新しいムーブメントは、「MATGA – make aqua tofana great again」と呼ばれ、トランプ支持者を植物や花で毒殺する方法を女性たちに教えている。選挙の余波でこれほどの怒りを見たことはない。

来年の1月20日の就任式までが正念場

 トランプが初めて勝利した2016年の選挙や、また選挙の結果で対立した2020年でも相互の憎しみは大きかったが、今回は大敗した民主党支持者の落胆と憎しみが凄まじい。いまはショック状態で比較的に静かだが、これから次第に憎しみを発散する抗議運動が多発することは確実である。

 しかし、トランプに対する大規模な抗議活動はすでに始まっている兆候もある。例えば、11月8日にはトランプが経営するシカゴのホテルの外で大きな抗議行動があった。ハリス支持の抗議者たちが、シカゴにある「トランプ・ホテル」の前に集まったのだ。主催者たちはメガホンで「トランプはファシストだ」「人種差別主義者だ」と叫び行進した。

 そして、ニューヨークとフィラデルフィアでも大規模な抗議デモが行われている。「ニューヨーク大学」の学生たちは、トランプ次期大統領の勝利に抗議するため、ニューヨークの「キャドマン・プラザ公園」付近に集まり、「多くを虐殺して手が血に染まっている!」や「ドナルド・トランプは出て行け!」といったスローガンを唱えている。

 これらの抗議運動は氷山の一角にすぎない。これらのデモのタイミングがシンクロしていることから、組織的な資金調達が背後にあるのではないかとの憶測が広がっている。いずれにせよ、2016年の規模を越えて、トランプ大統領の就任式が近づくにつれ、事態は本当に狂い始めるだろう。

 民主党支持者の中には、トランプが大統領に就任すれば、公然と衝突が起こると予想しているメディアもある。「ワシントン・ポスト紙」は、マイケル・ファノンという連邦議事堂警察の元警官に関する特集記事を掲載した。彼は森の中の屋敷に一人で住み、トランプ大統領誕生による最悪の事態を恐れている人物だ。

 トランプの勝利が発表されたとき、ファノンは武装すべきだと確信したという。ファノンは、自分は犯罪者予備軍などではなく、アメリカの民主主義をファシストであるトランプから守る愛国者だという。

 言うまでもなく、ファノンは孤独ではない。いまのアメリカには、彼のような人は何百万人もいる。民主党のスター、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員は次のように言い、警戒を怠らないように促した。

 「我々はファシズムと権威主義の政治的時代に入ろうとしている。政治的反体制派や立法反対派を投獄することは珍しくなくなるはずだ」

 また、「MSNBC」の人気キャスター、レイチェル・マドーも、共和党の次期大統領への投票率は、アメリカ人が「民主主義を手放し」「強権的で権威主義的なシステム」を選んだ証拠だと主張している。

 さらに、次期トランプ政権の政策的な骨子になると思われる「プロジェクト2025」は、リベラルな主要メディアから次のように強く批判されている。

プロジェクト2025は、米国の民主主義が依存する政治規範を破壊するだろう。

 米国の民主主義の統治は、法律だけでなく、より重要な規範に根ざしている。規範とは、多くの場合、政治的自制を示すこと、選挙で勝利した反対党の正当性を受け入れること、党派的行為者が望む結果が得られない場合でも反対派と交渉することである。規範を破ることの危険性は、法の支配にとって非常に大きい可能性がある。

 最近の共和党は、政府の役割に関する不穏な見解をしばしば支持しているが、確立された法律を根本的に再解釈し、抑制と均衡を尊重する古くからの政治規範を覆すことまでは主張していない。しかし、プロジェクト2025は、独裁的大統領を創設し、政治家、裁判官、企業に一般のアメリカ国民を規制する強大な権力を与えることを目指して、その重要な民主主義の原則を臆面もなく破っている。


 こうした状況を見ると、アメリカ国民の半数近くがトランプを嫌い、彼に統治されることを絶対に嫌っていることは確かなようだ。

 民主党の支持者は、トランプは民主主義に挑戦するファシストの独裁者だと見ている。来年1月20日のトランプの大統領就任式が近づくと、ファシストの独裁者から民主主義を守ることをスローガンにした激しい抗議運動が激増することだろう。

 そうしたなかには、民主主義を守るためにはファシストで独裁者のトランプを暗殺しなければならないと考え、実行するものも出てくるに違いない。

 トランプが圧勝でしたので大きな混乱はなかったが、これで安心してはならない。アメリカの本格的な不安定な状況は、大統領就任式までの時期までがひとつの山場になるはずだ。決して安心してはならないだろう。

 米国内の混乱が大きくなり、そのコントロールが難しくなると、大手格付け機関による米国債の格下げが行われ、それが世界経済に大きな影響を及ぼすことにもなりかねない。そうした事態も十分にある。

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