ジェフリー・サックス:米国とNATOがウクライナでの戦争をどのように引き起こしたのかについて
いつの時代にも戦争を起こしたい勢力が存在し、それによって大規模戦争に発展してきた。拡大すればするほど停戦は困難になる。
ロシア・ウクライナ戦争の歴史的背景を見ると、われわれ一般庶民は西側の大手メディアによって徹底的に虚偽情報を吹き込まれて来たことを痛感させられる。米国を始めとして、米国の同盟国であるNATO諸国や日本、韓国、そして、代理戦争の戦場となったウクライナに至るまで、プロパガンダ・マシーンを朝から晩まで、休む日もなく、見事なまでに稼働させてきた。しかしながら、そこには綻びも目立ち、今や、虚偽情報が次々と暴露されている。もっとも重要な点は一般大衆が今まで告げられて来た嘘に気付き始めたことだ。
その構図は、大雑把に言えば、新型感染症によるパンデミックで新規に開発されたmRNAワクチン接種を世界中で推進するためにWHO・各国当局・大手製薬企業・ハイテック産業の複合体が新型のお注射の危険性や安全性に関する見解や反論を封じ込め、反論者を個人的に攻撃するといったさまざまな手法を採用した態勢と酷似している。その反動として、米国の最近のCDCからの報告書によると、大部分の成人は新型感染症用のお注射をもはや受けようとはしない。あれだけ多数の死者を出したのだから、当然の帰結であろう。
ここに、「ジェフリー・サックス:米国とNATOがウクライナでの戦争をどのように引き起こしたのかについて」と題された記事がある(注1)。歴史を観察することが如何に重要であるかがこの記事によって具体的に実証されているとさえ言える。目から鱗である。
原文はノルウェー語であることから、まず機械翻訳を使って英語に訳し、それから和訳を行った。ノルウェー語から日本語へ直接翻訳すると、私には翻訳の間違いを修正するチャンスがなくなる。つまり、ノルウェー語が理解できないから、機械翻訳から出て来た和文を鵜呑みにするしか術がないからである。それに比べて、ノルウェー語から英語への機械翻訳は同じヨーロッパ語族間の翻訳であるから、日本語への直接翻訳に比べて誤訳のチャンスは限りなく低くなる。そして、英語から日本語への翻訳では、いつものように私自身が言葉の選択に気を配り、読み易いように工夫をこらすことが可能だ。
本日はこの記事を仮訳し、読者の皆さんと共有しようと思う。
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高い評価を得ているジェフリー・サックスによるウクライナ戦争の裏話をわずか2分間で紹介することができる。ここで問うべきはノルウェーのメディアが中立的に情報を伝えたかどうかである。
動画からの書き起こし:
ジ ェフリー・D・サックスは世界的に有名な経済学教授であり、ベストセラー作家であり、革新的な教育者であり、持続可能な開発に関する世界的指導者でもある。タイム誌の「世界で最も影響力のある100人の指導者」に2回も選ばれている。この動画では、明らかにウクライナでの戦争につながったに違いないと思われる出来事、そして今では東の隣人(訳注:ウクライナ人)の多くを殺戮したさまざまな出来事を彼は年代順に示している。この無実の人々に対する大量殺戮は止めることが出来たかのように見える。
一番下の投票で本件におけるメディアの役割についてどう思うかを自由にお答えください。そして、コメントでも自由に詳しく説明してください。
米国とNATOがウクライナでの戦争をどのように引き起こしたのかについてジェフリー・サックスが解説:
ウクライナ戦争について、2分間で説明してみよう。これは、私たちが毎日言われているようなプーチンによるウクライナに対する攻撃などではない。
これは1990年(注:正しくは、1989年。これはマルタ首脳会談を指しているが、同会談は1989年の12月に行われた)に遡る。米国務長官のジェームズ・ベーカー3世はミハイル・ゴルバチョフに言った:「もしも(ソ連が)ドイツの再統一を受け入れるならば、NATOは1インチたりとも東には動かないだろう。」(注:当時のベーカー米国務長官とソ連のゴルバチョフとの間で交わされた内容の詳細については2016年2月23日に「芳ちゃんのブログ」サイトに掲載した記事「1インチたりとも東方へは拡大しない - どのように西側はNATOに関するロシアとの約束を破ったのか?」を参照していただきたい。)
その後、米国ではクリントンがNATOをウクライナまで拡大する計画を承認したのが1994年という早い時点においてであったが、このことについては誤魔化していた。これはいわゆるネオコンが権力を握った時期であった。
NATOの拡大は1999年にポーランドとハンガリー、チェコ共和国で始まった。その後、米国は1999年にセルビア爆撃を主導した。ヨーロッパのひとつの首都ベオグラードを78日間連続でNATOが爆撃を行い、国を分裂させるのに利用したのだ。ロシア人はこれはあまり好きではなかった。しかし、プーチンでさえもが親ヨーロッパと親米の両方に向けて一歩を踏み出し、ロシアはおそらくNATOのメンバーになるべきだとさえ示唆した。
そして、9.11同時多発テロがやって来た。アフガニスタンがやってきた。そして、ロシア人はこう言った:「そう、われわれはあなた方を支持するよ。われわれはテロと戦いたいというあんた方の願望を理解しているから。」
2002年、米国は弾道弾迎撃ミサイル条約から一方的に脱退した。これがきっかけで、米国は東ヨーロッパにミサイル・システムを設置することになったが、ロシアはこれを国家安全保障に対する直接的かつ深刻な脅威と見なした。それはモスクワから数分の距離にあるミサイルによって武装解除攻撃を可能にするものであったからだ。
2004年から2005年にかけて、米国はウクライナにおけるソフトな政権転覆、いわゆる第一次カラー革命に関与した。ところが、2009年、ヤヌコーヴィチが選挙に勝利し、彼はウクライナの中立性を根拠にして2010年に大統領に就任した。
その後、2014年2月22日、米国はヤヌコーヴィチ打倒に積極的に参画した。ビクトリア・ヌーランドと今も国務省の高官である当時の駐ウクライナ・米国大使のジェフリー・パイアットとの間で交わされた非常に醜い会話の録音が存在する。彼らは政権転覆について話した。こうして、彼らはウクライナに傀儡政府を樹立した。
そこで米国はこう言った:「今こそ、NATOを本当に拡大するべきだ。」だが、プーチンは「やめろ」と言い続けた。「あんた方はNATOを拡大しないと約束していた。エストニア、ラトビア、リトアニア、ブルガリア、ルーマニア、スロバキア、スロベニア。東には1インチたりとも移行させないという約束をしながら、7カ国も参加している。」
2021年12月15日、プーチン大統領は米ロ間の安全保障協定の草案を提出した。この合意の本質はNATOを拡大しないという点にあった。
ロシア軍による特別軍事作戦が始まり、その5日後、ゼレンスキーは「よし、中立だ!」と言った。だが、米国と英国はこう言った:「人生では中立なんてない!あんた方は戦い続ける。われわれが支援する。われわれはあんた方を支える。しかし、われわれはあんた方の前に立つわけではない。あんた方はみんな死ぬんだ。われわれはみんなの背中を押してやる。」ボリス・ジョンソンがキエフに飛んで、彼らに勇敢になるよう説得してからというもの、60万人ものウクライナ人将兵が死亡した。本当に恐ろしい話だ。
われわれは、毎日言われているようなヒトラーのような狂った男に直面しているわけではないことを明確に理解しなければならない。これ(ウクライナ戦争)はまったく嘘の話だ。これは米国政府による純粋なPRだ。われわれはウクライナで火遊びをしている。核保有国がわれわれに対抗するなんてことは神が禁じているのだが、何が起こるのかは分からない。
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これで全文の仮訳が終了した。
政治の世界のもっとも醜い部分がここに曝され、纏められている。覇権を標榜する勢力は自分たちの手中にある力を際限なく誇示し、彼らの野心や利益を最大限に達成しようとして全力を尽くす。そこには倫理観とか価値観、常識、国際法の準拠といった考え方や姿勢は微塵も見られない。極めて単純で、冷酷な世界である。21世紀の今、われわれが知る限りでは、これが西側の指導者らが営々と築き上げて来た世界なのだ。
その結果、今、われわれはいったい何を得たのだろうかか?
ロシア・ウクライナ戦争は、最近、正式に「ロシア・NATO戦争」へと衣替えをした。
最近の11月17日から22日までウクライナ・NATOとロシアとの間で起こった一連のミサイル攻撃の応酬についての詳細は、11月20日の投稿「もしもウクライナがATACMSミサイルを用いてロシア領内を攻撃したら、NATOは公式にロシアとの戦争状態になる ― 元オーストリア外交官」、ならびに、11月23日の投稿「プーチンは最新型のミサイルを発射することによって西側にメッセージを送った」を参照していただきたい。
現時点までに分かっている点としては次の事項が挙げられる:
ロシアは新型の極超音速ミサイル「オレシュニク」を開発し、今回、ウクライナのドニエプロペトフスクにある軍需工場を攻撃した。マッハ10の飛行速度で飛来するこのミサイルを迎撃することが可能な対空防衛システムは現時点で西側には存在しない。このミサイルは欧州各国に配置されている米空軍基地を、何の反撃も受けずに、攻撃することが可能だ。核弾頭を装備することも可能。ロシアから一番近いルーマニアやバルト3国、ポーランドから始まって、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ギリシャ、スペイン、ポルトガル、英国、スウェーデン、ノルウェー、等に展開する米軍の軍事施設はことごとくこの新型極超音速ミサイルの標的範囲内に収まる。
極超音速で飛来するこの多弾頭型弾道ミサイルはその運動エネルギーが極めて大きく、そのすべてが破壊力に変換され、地下深く築かれている軍事施設さえをも破壊してしまうという。つまり、戦術核兵器を使用しなくても、NATO各国の軍事施設に甚大な被害を与えることができるのである。
最後に残された最大級の不確定要素はNATOの戦争屋がロシア側のハイテック兵器には対抗することができないことを自覚した時の反応がどうなるかという点であろう。
もしもNATOの指導層がクールな思考形態を持っているならば、彼らはロシアとの和平交渉を選択するであろう。あるいは、自暴自棄になった西側の戦争屋は自分たちが所有する核兵器を最後の頼みとして使い、彼らが今までしばしば述べていた先制核攻撃を引き起こすかも知れない。いつものように、偽旗作戦を使って・・・
たとえロシアが米国による先制核攻撃に見舞われたとしても、ロシア側には移動式の核兵器や核搭載型潜水艦が配備されていることから、ロシア側の反撃能力の一部は温存され、核兵器で応酬することになる。こういった形で核大国間で核兵器の応酬が行われると、地上の生命は破壊され、人類の文明は人間社会の愚かさが故に消滅することになろう。
昨今の核戦争のリスクは数十年前に起こったキューバ危機以上に緊迫した状況にあると言えるのではないか?
参照:
注1:Jeffrey Sachs om hvordan USA og NATO provoserte fram krigen i Ukraina: By SUSANNE HEART, NOV/12/2024
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