アフリカ・コンゴの謎の感染症に「病原体X」という名称がつけられている…
アフリカ疾病管理予防センターの所長が言う、今後 5、6週間で何か起きるとでもいうのでしょうか。
それはコロナ前にWHOと世界銀行が発表した病原体の名
アフリカ中部のコンゴ民主共和国で「原因不明の感染症」が流行していると、12月5日頃に唐突に発表されました。
これがまた不思議な報道で、同じ日の報道なのに、死者が 27名という報道があったり、死者が 76人という報道があったり、同一の保健当局からの情報なのに、なぜこんなに情報にばらつきがあるのかなとは思っていました。
そうしましたら、今日(12月6日)、この謎の感染症を「病原体 X (Disease X)」と表現していたビジネス・スタンダードという、おそらくインドのメディアの記事を見ました。
この「病原体 X」というのは、新型コロナが武漢に登場する2か月ほど前の 2019年9月に、WHOと世界銀行が、
「36時間以内に地球の人間を 8000万人殺すパンデミックを起こす可能性がある病原体」
だと発表したものでした。
Disease X の日本語訳は、疾病X とか、病気X とかなどもあるのですが、何だかゴロが悪いですので、ここでは、病原体 X としています。
以下の記事で取り上げています。
・WHOと世界銀行が「36時間以内に地球の人間を8000万人殺すパンデミックを起こす可能性」を懸念する《病原体X》とは一体何なのか?
In Deep 2019年9月25日
その直後に来たのは、病原体 X ではなく、新型コロナのパンデミックでしたが、この WHO と世界銀行の発表も不思議なものでした。
ここでご紹介した記事では、以下のような部分があり、やや面白く感じていました。
病原体Xは、将来的に、致命的な感染症の流行やパンデミックを引き起こす可能性のある未知の病原体に指定されたコードネームだ。エボラウイルスとともに、WHO の危険な疾患の優先リストに含まれている。
何を面白く感じたかというと、「 WHO の危険な疾患の優先リスト」にあるのは、
「病原体 X 以外のすべてが、すでに存在していて知られている病気」
なんです。
そこに「どんな病気かわからない、これから出現するかどうかさえわからない病原体 X が入っている」ということです。
以下が WHO の重大な感染症リストです。2019年当時も現在も、このリストは変更されていません。
WHOによる重大な感染症リスト
・クリミアコンゴ出血熱
・エボラウイルス病
・マールブルグウイルス病
・ラッサ熱
・中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS)
・重症急性呼吸器症候群(SARS)
・ニパウイルス病
・リフトバレー熱
・ジカ熱
・病原体X
ともかく、この「病原体X」の名称が、コンゴで謎の伝染病の流行の話が報じられた後に唐突に出てきたわけです。
まず、報道をご紹介します。
コンゴで79人が死亡した「病原体X」の原因が調査される
Cause of ‘Disease X’ investigated after it killed 79 people in Congo
Business Standard 2024/12/06
コンゴ民主共和国の保健当局は、10月下旬以来、数百人が罹患し、少なくとも 79人が死亡した「病原体 X(Disease X)」と呼ばれる感染症の発生原因が数日以内に判明すると予想している。
アフリカ疾病管理予防センターのジャン・カセヤ所長によると、インフルエンザのような症状を呈している 376人のうち、約 200人が 5歳未満だという。
発熱、頭痛、咳、呼吸困難、貧血の症例は 10月24日に南西部クワンゴ州のパンジ保健区域で初めて報告され、12月1日に国家当局に警告が出された。
「(病気の発生から)約 5~ 6週間経っており、今後 5~ 6週間の間にはさまざまなことが起こる可能性がある」とカセヤ所長は 12月5日、記者との週例電話会議で述べた。
「継続中の検査が、問題の原因を理解するのに役立つだろう」
国立公衆衛生研究所のディウドネ・ムアンバ所長は、この病気はインフルエンザの流行が拡大していた時期に発生したため、原因は空気感染である可能性が高いと述べた。
患者の検体は、発生地域から約 500キロ離れたキンシャサの国立研究所で分析されている。
当局者たちによると、検査は 48時間以内に完了し、週末には結果が発表される可能性があるという。
新型コロナウイルスにより各国が国境を封鎖し、経済・社会活動が停止してからわずか数年で、今回の流行により、世界中に広がる可能性のある新たな病原体の出現に対する懸念が再燃している。
今年初め、新たな MPOX (サル痘)株の蔓延を受けて世界保健機関は、この病気を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態と宣言したが、アフリカ以外でのウイルスの蔓延は依然として散発的だ。
香港の保健当局は 12月5日遅く、コンゴ民主共和国からの渡航者を運ぶ可能性のあるアフリカの 2つの中継拠点であるヨハネスブルグとアディスアベバから到着する渡航者に対し、空港での検査を強化すると発表した。
日本でも外務省が感染拡大の影響を受けている地域への不要不急の渡航を控えるよう勧告した。
アフリカ CDC は疫学者、実験
科学者、感染予防・管理の専門家を擁してコンゴ当局を支援しているとカセヤ所長は述べ、今回の流行は、多数の致命的な流行が同時に発生している広大な国土で病気を発見することの難しさを浮き彫りにしていると付け加えた。
「だからこそ、我々は監視に関する強力な能力の構築を国に支援しているのだ」と彼は語った。
ここまでです。
このコンゴに関する報道は矛盾が多く、たとえば、昨日のひとつの報道では、BBC が報じたとして、
> 亡くなった大半は高齢者に比べ免疫力が高いはずの15~18歳だという。
とあり、十代の若者の死亡率が高いとありましたが、先ほどの記事では、
> 症状を呈している 376人のうち、約 200人が 5歳未満だという。
とあり、患者の多くが乳幼児であるとあります。
これは乳幼児の死者数の記載ではないですが、どうも矛盾を感じます。
さらに、香港の保健当局の対応は以下のようにあります。
香港の保健当局は 12月5日遅く、コンゴ民主共和国からの渡航者を運ぶ可能性のあるアフリカの 2つの中継拠点であるヨハネスブルグとアディスアベバから到着する渡航者に対し、空港での検査を強化すると発表した。
> 空港での検査を強化する
とありますが、「何の検査を強化する?」とは思います。
現地でも「何の病原体かわかっていない」ものを、どう検査を強化すると対応できるのか。
そして、記事の締めは、アフリカ疾病管理予防センターの所長の以下の言葉で締められています。
「だからこそ、我々は監視に関する強力な能力の構築を国に支援しているのだ」と彼は語った。
> 監視に関する強力な能力の構築
という表現が出てきますが、コロナの初期に出された概念と同じです。
「何をしようとしてる?」とは思いますが、病原体 X の名称が使われたのは偶然かもしれないですし、そういう話ではないのかもしれないですが、矛盾だらけのコンゴの感染症の報道を読んでいると、漠然とした不安も感じないでもないです。
アフリカ疾病管理予防センターの所長が言う、今後 5、6週間で何か起きるとでもいうのでしょうか。
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