元国税調査官があばく生活保護と外国人の真実。「不正受給」という分断工作に釣られる人々が見落とす日本の大問題
日本人の生活保護受給率が諸外国と比べても圧倒的に低いことが問題であり、その原因は役所が申請書の提出を拒み追い返しているから。世界ではあり得ない行為。伊・仏・独では7割~8割がもらえている。日本人は1.6%という非現実的な状態。国民は憲法を守らない政府を非難すべき。
「日本で生活保護をもらう外国籍の人間はずるい」「不正受給しているに違いない」「外国人への生活保護を廃止せよ」――昨今、SNSでよく見かけるこれらの意見に、為政者たちはほくそ笑み、裏でこっそり「いいね」を押しているに違いない。本来なら真っ先に生活保護を受けるべき困窮日本人たちが、受給をはばむ役所や国に対して怒らず、自らの正当な権利を行使もせず、あさっての方向に恨みをぶつけて満足しているからだ。これに関して、本当の問題は「日本人の生活保護受給率が低すぎる」点にあると指摘するのは元国税調査官で作家の大村大次郎氏。データをよく分析することで、わが国の欺瞞が浮き彫りになるという。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:“外国人のほうが生活保護受給率が高い”は本当か?
日本社会を分断する「生活保護を受ける外国人はずるい」キャンペーン
「外国人のほうが生活保護を受けやすい」「日本に住む外国人は生活保護を受けている人が多い」と言われているのを、最近よくネットなどで見かけます。
本当にそうなのか、データで確認してみたいと思います。
まず、外国人が生活保護を受けられるのかどうか、法律的な面で確認しましょう。
日本の法律では、本来は外国人には生活保護を受ける権利はないということになっています。
が、人道的な見地から、永住者、特別永住者(主に戦前から日本にいた韓国、朝鮮、台湾の人とその家族)、日本人の配偶者、定住者については、生活保護を支給するということになっています。
定住者というのは、難民認定などで日本に一定期間住むことを認められた人です。留学や就労ビザで来日したような人には、支給されないことになっています。
次に、生活保護の支給割合を見てみましょう。日本人の生活保護受給率は約1.6%です。それに対し、外国籍の生活保護受給率は約2.3%となっています。日本人の約1.5倍も外国人のほうが受給率が高いのです。
しかも、この数字は、日本に住む外国籍のすべての人との割合を示しています。実際には日本に住む外国籍のうち、約半数は生活保護の受給資格はありませんから、外国籍で生活保護受給権がある人の受給率は、おおむね6~7%程度になります。
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本当の大問題は「日本人の生活保護受給率が低すぎる」点にある
つまり、日本人よりも外国籍の人のほうが、生活保護受給率は約3倍も高いということになります。これだけを見ると、「外国籍の生活保護受給率は高い」というのは、ある意味、事実だと言えます。
しかし、さらにデータをよく分析すれば、実は「外国籍の生活保護受給率が高い」のではなく「日本人の生活保護受給率が低すぎる」だけ、という実態が浮かび上がってくるのです。
そこで実際に、日本人の生活保護受給率が、ほかの先進国と比べてどうなのかを数字で検討してみましょう。
はたして日本の生活保護は、先進諸国と比べて多いのか少ないのか、充実しているのかいないのか。
日本人は皆、日本の社会保障は先進国並みと思っています。しかし、これは大きな勘違いです。驚くべきことかもしれませんが、日本は他の先進国と比べて、生活保護の支出も受給率も非常に低いのです。
生活保護の「不正受給」よりも「支給漏れ」に日本人が怒るべき理由
日本の場合、生活保護基準以下で暮らしている人たちのうちで、実際に生活保護を受けている人がどのくらいいるかという「生活保護捕捉率」は、だいたい20%程度とされています(「反貧困」湯浅誠著・岩波新書)。
つまり、本来は生活保護を受けるべき状況なのに受けていない人が、生活保護受給者の4倍もいるということ。
日本ではよく生活保護の不正受給が問題視されますが、実は「支給漏れ」のほうが不正受給よりもはるかに大きな問題だったのです。
これは先進諸国ではあり得ないことです。イギリス、フランス、ドイツなどの先進国では、要保護世帯の70~80%が生活保護を受けているとされています。
また日本の生活保護は、その予算自体も、先進国に比べれば圧倒的に少なくなっています。わが国の生活保護費は、社会保障費のうち10%にも満たないのです。GDP比ではわずか0.3%であり、あの自己責任の国アメリカの1割程度です。
また、生活保護受給者の数も圧倒的に少なくなっています。国民のわずか1%ちょっとであり、これもアメリカの1割程度です。
もちろんこれらの事実は、「日本は生活保護の必要が少ない豊かな国」ということを示しているわけではありません。
日本では、生活保護の必要がある人でも、なかなか生活保護を受けることができない。つまり「日本は生活保護を非常に受けにくい」ということを示しているのです。
欧米諸国は、国民の権利はきちんと守ります(少なくとも日本よりは)。生活保護の申請を、市役所の窓口でせき止めるなどということは、絶対にあり得ないのです。もしそんなことをすれば、国民から猛反発を受けるからです。
ここまでの話をまとめると、「外国籍の生活保護受給率が高い」のではなく「日本人の生活保護受給率が低い(低すぎる)」のが、わが国が抱える本当の問題ということになります。
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なぜ日本人ばかりが生活保護からあぶれているのか?
ここで大きな疑問を持つ人がいるはずです。
「日本では生活保護は受給しにくいのに、なぜ外国籍の生活保護受給率は日本人の6~7倍もあるのか」と。
なぜそういうことになっているかは、様々な要因がある思われますが、まず日本人の場合、生活保護の申請をしても役所で追い返されることが多い、ということが挙げられます。
日本の役所は、なるべく生活保護を申請させないように、本当は生活保護の受給資格を満たしているのに、「あなたはまだ働ける」「怠けているだけ」などと難癖をつけて、申請用紙を渡さずに追い返すことが多々あります。
そのために生活保護のハードルが高くなり、申請する人自体が少なくなっているのです。
ですが本来は、窓口で追い返すなど違法行為です。申請用紙が欲しいと言っている人に申請用紙を渡さなかったり、突き返したりすることはできないのです。
だから、受給資格を満たしている人が、自分で申請用紙を取り寄せて送付すれば、受給できるようになっています。
ところが日本人の多くはバカ正直なので、わざわざ窓口に出向いて役人に頭を下げて申請書をくれるよう懇願し、嫌味をさんざん言われて追い返されるという状況になっているのです。
しかし、外国籍の人の場合、そういうバカ正直なことはしません。窓口に行っても、役人の言うことなどは聞かずに、申請用紙をくれるまで粘りますし、何を言われても申請書を提出します。
また外国籍の人の場合は、同国人の団体や外国人支援団体などを通じて情報を仕入れたり、手続きを手伝ってもらったりもします。
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生活に困窮しているなら、役所・役人の嘘にしたがう必要はない
日本の役所は、一個人に対しては非常に高圧的な態度を取りますが、団体や機関、弁護士などに対しては、法律通りの対応をします。
だから、当人が生活に困窮し、生活保護受給資格さえあれば、生活保護は支給されるのです。
逆に言えば、日本人は自分の権利をまともに行使していないということであり、日本の役所は国民の権利行使を阻害していることになります。
現在の外国籍の人に対しての生活保護支給政策が、すべて適切だとは言いませんが、一番大きな問題は「日本人にまともに生活保護を支給していないこと」なのです。
その点をはき違えずに、まずは一番大きな問題を解消したいものです。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:“外国人のほうが生活保護受給率が高い”は本当か?
日本社会を分断する「生活保護を受ける外国人はずるい」キャンペーン
「外国人のほうが生活保護を受けやすい」「日本に住む外国人は生活保護を受けている人が多い」と言われているのを、最近よくネットなどで見かけます。
本当にそうなのか、データで確認してみたいと思います。
まず、外国人が生活保護を受けられるのかどうか、法律的な面で確認しましょう。
日本の法律では、本来は外国人には生活保護を受ける権利はないということになっています。
が、人道的な見地から、永住者、特別永住者(主に戦前から日本にいた韓国、朝鮮、台湾の人とその家族)、日本人の配偶者、定住者については、生活保護を支給するということになっています。
定住者というのは、難民認定などで日本に一定期間住むことを認められた人です。留学や就労ビザで来日したような人には、支給されないことになっています。
次に、生活保護の支給割合を見てみましょう。日本人の生活保護受給率は約1.6%です。それに対し、外国籍の生活保護受給率は約2.3%となっています。日本人の約1.5倍も外国人のほうが受給率が高いのです。
しかも、この数字は、日本に住む外国籍のすべての人との割合を示しています。実際には日本に住む外国籍のうち、約半数は生活保護の受給資格はありませんから、外国籍で生活保護受給権がある人の受給率は、おおむね6~7%程度になります。
【関連】元国税調査官が教える「生活保護のススメ(1)」若い人や働ける人もOK! 健康で文化的なナマポ生活を堂々と享受しよう
本当の大問題は「日本人の生活保護受給率が低すぎる」点にある
つまり、日本人よりも外国籍の人のほうが、生活保護受給率は約3倍も高いということになります。これだけを見ると、「外国籍の生活保護受給率は高い」というのは、ある意味、事実だと言えます。
しかし、さらにデータをよく分析すれば、実は「外国籍の生活保護受給率が高い」のではなく「日本人の生活保護受給率が低すぎる」だけ、という実態が浮かび上がってくるのです。
そこで実際に、日本人の生活保護受給率が、ほかの先進国と比べてどうなのかを数字で検討してみましょう。
はたして日本の生活保護は、先進諸国と比べて多いのか少ないのか、充実しているのかいないのか。
日本人は皆、日本の社会保障は先進国並みと思っています。しかし、これは大きな勘違いです。驚くべきことかもしれませんが、日本は他の先進国と比べて、生活保護の支出も受給率も非常に低いのです。
生活保護の「不正受給」よりも「支給漏れ」に日本人が怒るべき理由
日本の場合、生活保護基準以下で暮らしている人たちのうちで、実際に生活保護を受けている人がどのくらいいるかという「生活保護捕捉率」は、だいたい20%程度とされています(「反貧困」湯浅誠著・岩波新書)。
つまり、本来は生活保護を受けるべき状況なのに受けていない人が、生活保護受給者の4倍もいるということ。
日本ではよく生活保護の不正受給が問題視されますが、実は「支給漏れ」のほうが不正受給よりもはるかに大きな問題だったのです。
これは先進諸国ではあり得ないことです。イギリス、フランス、ドイツなどの先進国では、要保護世帯の70~80%が生活保護を受けているとされています。
また日本の生活保護は、その予算自体も、先進国に比べれば圧倒的に少なくなっています。わが国の生活保護費は、社会保障費のうち10%にも満たないのです。GDP比ではわずか0.3%であり、あの自己責任の国アメリカの1割程度です。
また、生活保護受給者の数も圧倒的に少なくなっています。国民のわずか1%ちょっとであり、これもアメリカの1割程度です。
もちろんこれらの事実は、「日本は生活保護の必要が少ない豊かな国」ということを示しているわけではありません。
日本では、生活保護の必要がある人でも、なかなか生活保護を受けることができない。つまり「日本は生活保護を非常に受けにくい」ということを示しているのです。
欧米諸国は、国民の権利はきちんと守ります(少なくとも日本よりは)。生活保護の申請を、市役所の窓口でせき止めるなどということは、絶対にあり得ないのです。もしそんなことをすれば、国民から猛反発を受けるからです。
ここまでの話をまとめると、「外国籍の生活保護受給率が高い」のではなく「日本人の生活保護受給率が低い(低すぎる)」のが、わが国が抱える本当の問題ということになります。
【関連】トヨタという“日本の病巣”を国税OBが告発! 株価以外すべて破壊「日本人の給料を下げ続けたトヨタ」失われた30年の真実
なぜ日本人ばかりが生活保護からあぶれているのか?
ここで大きな疑問を持つ人がいるはずです。
「日本では生活保護は受給しにくいのに、なぜ外国籍の生活保護受給率は日本人の6~7倍もあるのか」と。
なぜそういうことになっているかは、様々な要因がある思われますが、まず日本人の場合、生活保護の申請をしても役所で追い返されることが多い、ということが挙げられます。
日本の役所は、なるべく生活保護を申請させないように、本当は生活保護の受給資格を満たしているのに、「あなたはまだ働ける」「怠けているだけ」などと難癖をつけて、申請用紙を渡さずに追い返すことが多々あります。
そのために生活保護のハードルが高くなり、申請する人自体が少なくなっているのです。
ですが本来は、窓口で追い返すなど違法行為です。申請用紙が欲しいと言っている人に申請用紙を渡さなかったり、突き返したりすることはできないのです。
だから、受給資格を満たしている人が、自分で申請用紙を取り寄せて送付すれば、受給できるようになっています。
ところが日本人の多くはバカ正直なので、わざわざ窓口に出向いて役人に頭を下げて申請書をくれるよう懇願し、嫌味をさんざん言われて追い返されるという状況になっているのです。
しかし、外国籍の人の場合、そういうバカ正直なことはしません。窓口に行っても、役人の言うことなどは聞かずに、申請用紙をくれるまで粘りますし、何を言われても申請書を提出します。
また外国籍の人の場合は、同国人の団体や外国人支援団体などを通じて情報を仕入れたり、手続きを手伝ってもらったりもします。
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生活に困窮しているなら、役所・役人の嘘にしたがう必要はない
日本の役所は、一個人に対しては非常に高圧的な態度を取りますが、団体や機関、弁護士などに対しては、法律通りの対応をします。
だから、当人が生活に困窮し、生活保護受給資格さえあれば、生活保護は支給されるのです。
逆に言えば、日本人は自分の権利をまともに行使していないということであり、日本の役所は国民の権利行使を阻害していることになります。
現在の外国籍の人に対しての生活保護支給政策が、すべて適切だとは言いませんが、一番大きな問題は「日本人にまともに生活保護を支給していないこと」なのです。
その点をはき違えずに、まずは一番大きな問題を解消したいものです。
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