年収300万→80万円、年収700万→189万円…日本人の「本当の天引き額」と「手取り」計算してみたらヤバすぎた
この国は国民を飼い殺しにする制度でギブアップ寸前の状態
「五公五民」の時代
この30年、税金と社会保険料は上がりに上がり、そして手取りは下がりに下がった。
かつて真水だった、会社員のボーナスから社会保険料が天引きされ始めたのが1995年。料率はしだいに引き上げられ、2003年、月給と同じおよそ11%に達した。2004年には配偶者控除と配偶者特別控除の併用ができなくなり、2011年になると15歳以下の年少扶養控除もなくなった。
その一方で、東日本大震災復興のための時限増税、所得税の引き上げ、そして3度にわたる消費税の引き上げ……。
「年収700万円の人で言えば、2023年の手取り額は約536万円と、この20年のあいだに50万円も減っています。率直に言って、『やりすぎ』とも言える負担増です」(ファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏)
いわゆる「天引き」で取られる所得税や社会保険料などだけでなく、平均的な消費税の納付額も加味して、現在の年収ごとの「本当の手取り」を一覧にしたのが上の図だ。年収300万〜700万円の人でも4分の1以上、1000万円を超えると30%以上が召し上げられてしまうことがわかる。
この中には相続税や贈与税、ガソリン税、酒税やたばこ税などは入っていない。それらを含めれば、いまや日本は事実上、「五公五民」の重税国家と化している……そう言っても決して過言ではないのだ。
「103万」より、高く厚い壁
パートタイマーの収入に所得税がかかり始める「103万円の壁」の引き上げに向けて、少数与党の自民党・公明党と、野党・国民民主党の折衝が、年をまたいで続いている。与党側は「123万円」への引き上げで手を打とうとしているが、国民民主党は「178万円」への引き上げを主張して譲らない。
この攻防については、こちらの国民民主党・古川元久代表代行のインタビューを参照してほしいが、本当に高く分厚いのは、じつは103万円の壁ではない。深田氏が続ける。
「夫が正社員で妻がパートタイマーの場合、妻の収入が『103万円の壁』や、住民税がかかり始める『100万円の壁』を超えても、手取りはほとんど減りません。子供が学生でアルバイトをしている場合、収入103万円を超えると扶養から外れて親の手取りが減りますが、今年度の税制改正で、学生の『103万円の壁』は150万円まで引き上げられる方針です。
パートで問題なのは『106万円の壁』と『130万円の壁』。これらは、超えると社会保険料を負担しなければならなくなる『壁』で、大幅に手取りが減ってしまいます」
60歳以上は要注意「180万円の壁」
社会保険料の壁がふたつあるのは、勤め先の規模が大きい場合(51人以上)と小さい場合(50人以下)で区別しているため。社会保険料は働く人と会社で折半するので、小さい会社にとっては重荷になる。だから、大きな事業所で働く人のほうが、早く壁にぶち当たるということだ。
「『106万円の壁』を超えた瞬間に約15万円の社会保険料がかかり、手取りは90万円ほどに急減します。つまり、106万円のときの手取りに回復させるには125万円まで稼ぐ必要があるのです。
また『130万円の壁』を超えると、約153万円稼がないと130万円のときの手取りに戻れません」(深田氏)
60歳以上のパートタイマーの場合は、50人以下の職場で働く人にかぎり、130万円ではなく『180万円の壁』を超えると手取りが減るので注意したい。年金を受け取っている人は、年金収入と給与収入の合計額で判定される。
つまり『壁』の議論は現役世代だけでなく、年金生活者にも関係が深いわけだ。
夫などが受ける配偶者特別控除が減り始める「150万円の壁」は、早ければ今年、160万円に引き上げられる見通しだ。だが「100万円」「103万円」「150万円」の「税金の壁」と違い、「106万円」「130万円」の「社会保険料の壁」を動かすのは、複雑きわまりない年金や健康保険のしくみをいじる必要があり、容易ではない。
なお「106万円の壁」は来年度から撤廃される方針だが、これで起きるのはむしろ「社会保険料を払う人の増加」である。要するに、これまで「壁」に当たらずに済んでいた人まで、保険料を取られるようになるという本末転倒の事態だ。
とにもかくにも、あの手この手でカネを巻き上げようとする、悪知恵には呆れるほかない。
「週刊現代」2025年1月25日号より
コメント