万博2億円トイレ「手を拭く紙がない」感染症や衛生面への懸念が広がる
レジ袋禁止に続く衝撃!万博広報「SDGsの観点から」…衛生面への懸念広がる
大阪・関西万博が4月に開幕する。大阪府と大阪市が行ったアンケート調査では、来場する意向を示した人は全体のおよそ35%(全国)となっており、いまいち盛り上がりにかける。一方で万博開催にかかるコストに対する批判は絶えない。”2億円トイレ”でも注目を浴びたが、この万博はとにかく金がかかっている。13兆円という巨額の予算がぶち込まれているのだ。そんな中で経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏は新たな問題を提起する。小倉氏によると万博のトイレには手を拭く紙やハンドドライヤーが設置されないのだという。一体なぜなのか。小倉氏が解説するーー。
レジ袋配布の禁止だけじゃなかった、トイレに手を拭く紙がない
半年で解体される「トイレ」1つに、デザイナーが関わり、総額2億円が投じられる大阪万博。開幕に向けて建設工事が進む中、その2億円トイレに重大な問題が発覚した。手を拭く紙が設置されていないのだ。日本万博協会は、先月、万博の出展者や営業施設に対し、レジ袋の配布を原則禁止することを明らかにしたが、関係者に衝撃が走っている。
万博協会広報部は、みんかぶ編集部を通した質問に対して、以下のような回答を寄せた。
ーー万博会場内のトイレにはペーパータオル、ハンドドライヤーといった「洗った手を乾かすもの」は設置されますか。
(万博協会)
洗った手を乾かす什器などは設置されておりません。
ーーその理由を教えてください。
(万博協会)
使い捨てのペーパータオルなどは、SDGsの観点で設置しません。また、ハンドドライヤーに関しましては、会場計画時がコロナ下の状況でハンドドライヤーの利用を停止していた時期のため、設置を見送っています。
ーー設置されないのであれば、主催者としてハンドタオルの持ち込みなどを来場者に呼びかけるのでしょうか。
(万博協会)
来場者への呼びかけについては、予定はしておりません。
SDGsより、感染病などのウィルスを蔓延させないほうが大事とは考えないのか。あまりの回答に呆然としてしまうが、2億円の万博トイレ設置の経緯を振り返りつつ、正気を取り戻してみたい。昨年2月20日の記者会見で、大阪府の吉村洋文知事は「建築家が万博会場で新しい建築技術や建築価値観というのを、トイレにも魂を吹き込んで」と2億円の投入について理由を説明していた。しかし、この説明には疑問が残る。
万博は、トイレに2億円かけただけではない
たとえば、HAMANETSU社の屋外トイレユニット(ハイグレード仮設トイレ コムズトイレプラス 3室水洗 小便+手洗+洋式 TU-COP3SMW ベーシック)は255万2000円(税込・送料込み)である。他にも大阪府吹田市ウェブサイトにある『公園便所の仕様標準』(2023年11月30日、※1)によれば、大タイプの公園便所の建設費(建築工事、外構工事、機械設備工事、電気設備工事、共通費、消費税の合計)は、3,600 万円/箇所とある。
さらに、「デザイナーの魂を吹き込んだからOK」という理屈がまかり通るなら、吉村知事がかつて批判した京都市の500万円の漆塗りエレベーターも、「魂が吹き込まれた」として容認されるべきではないのか。これでは、単なる自己都合ではないか。納税者として、あまりにも理不尽である。
万博は、トイレ1つに2億円かけただけではない。
<政府の国際博覧会推進本部事務局が23年12月(24年2月更新)に公表した大阪・関西万博関連の国の費用によると、会場建設費以外に、インフラ整備計画関係の施策として約9兆7000億円、「空飛ぶクルマ」の実現や水素発電技術の実証などの「アクションプラン」に登録された施策に約2兆8000億円などが計上された。会場建設費や日本政府館建設なども含め、万博関連費用は総額約13兆円に及んだ>(日経ビジネス、2024年5月22日)
とある。
13兆円にも及ぶ巨額の予算を注ぎ込んだ一方で
万博に13兆円にも及ぶ巨額の予算を注ぎ込んだ一方で、水増しに水増しを重ねた万博の経済波及効果は数兆円ほどだ。13兆円というが、ディズニーランドは約1800億円、ディズニーシーの建設費は約3350億円だ。万博予算はディズニーランドの72回、ディズニーシー39回つくれる計算となる。水増しとは、日本は建設工事の受注が溢れており、万博がなくても同等程度の経済効果を得られていたことや、大阪出張に行って最終日に万博へいくようなケースでも、出張代すべてが万博の経済効果に参入されていること。
さらには、日本全体で見れば、沖縄へ行く予定だったのが万博へ行ったケースでは、沖縄観光にマイナスがあるが、そのネガティブ部分は参入されていないことだ。昼ごはんを神戸でステーキを食べるつもりだったが、万博会場で食べた場合もさきほどの旅行と一緒で、神戸のステーキ屋が被ったマイナス分を計算していない。
大阪万博、経済面では惨敗が確定している?
こうした水増し効果ですら数兆円であり、注ぎ込んだ税金の額を考えれば、経済面では絶望的なプロジェクトと言える。今後IRなどに活用して地域の発展が見込めるかのような言い分もあるが、東京のお台場とて45年も前にできたが、都心からアクセスがあまりよくなく、他の地域と比べて発展をしているかというとかなり微妙だ。万博会場も大阪の中心からとても遠く、同じことになるのではないだろうか。
経経済面では惨敗がほぼ確定的とみえる大阪万博であるが、今回は衛生面とSDGsというお役所仕事にありがちな行政の不作為も目立つ。
まず、衛生面だ。
トイレに手を拭く紙がないことで、何が起きるだろうか。2019年の研究で『手指衛生の見落とされがちな要素 – 手乾燥の重要性、異なる方法の効率性および臨床的影響: レビュー』(スウォンジー大学)がある。そこには、医療環境では感染管理が極めて重要であり、手洗い後の適切な乾燥が不可欠であるという。
トイレ後に洗った手を乾かさないとどうなるのか
この研究では、手の乾燥方法が感染予防に与える影響について詳細に分析されている。「医療現場ではペーパータオルの使用が推奨される」とされており、「WHOおよびNHSのガイドラインにおいて、ペーパータオルは感染制御のための最も効果的な乾燥方法と位置付けられている」と記載されている 。この推奨の根拠として、「ペーパータオルは摩擦による細菌の除去効果があり、環境表面への微生物の拡散リスクを最小限に抑える」と述べられている 。さらに、「乾燥時間が短く、即座に手が清潔な状態になる点も医療環境での使用に適している」と指摘されている。手洗い後の乾燥を徹底することの重要性も強調されている。「手洗い後に水分が残っていると、微生物の拡散率が著しく増加する」と指摘されており、「湿った手では細菌の移動が2倍以上増加することが確認されている」との記述がある 。「医療従事者が十分に手を乾燥させない場合、患者との接触時に細菌が伝播するリスクが大幅に高まる」との研究結果も示されている 。このため、「手洗いの徹底とともに、乾燥工程も確実に実施する必要がある」と述べられ、手洗い後に手が完全に乾燥するまでのプロセスを徹底することが不可欠である。
大阪府のホームページ「感染性胃腸炎にご注意!」(※2)にも以下の記載がある。
<感染経路/(1)人から人への感染/感染者のおう吐物や便を触った手や、手で触れたものを介して口に入り感染します>
<感染予防のポイント/手洗い後のタオルは共用せず、個人用タオルかペーパータオルを使用しましょう>
感染症うんぬんよりSDGsが優先される
感染症は、感染性胃腸炎だけではないが、予防法としては同じようなものであろう。つまり、手洗い後に、親が子どもにハンカチを渡せばいいというものではなく、親が使っているものとは別のものを渡す必要がある。2億円もかけたトイレなのだから、手を拭く紙をおいておけばいいものを、大阪万博は大阪府の示したガイドラインにも従わず、手を洗ったら拭くものがない状態で放置している。手を拭く方法がないからという理由で、手を洗わない人もあらわれるだろう。
自己申告で男性の24.8%、女性の4.9%がハンカチ類を持ち歩いていないというデータがある(※3)。実態はもっと多いだろう。自己申告を信じるにしても、男性の4人に一人は万博トイレで手を洗わないか、洗ってもズボンで拭く、もしくは濡れたまま歩くということになる。感染症の発生源になりかねない。何より「来場者に呼びかけをしない」(万博広報)というのはあまりに気がかりだ。
「SDGsの観点から手を拭く紙を撤去した万博トイレは、感染病が蔓延する怖があるので、ハンカチを持ってきてください」
と正直に告知する必要がある。
万博関係者はため息…
ドバイ万博、ミラノ万博のトイレには、当然トイレにダイソン製の高性能ハンドドライヤーなどがあった。建設費に2億円もかけておいて、ハンドドライヤーも紙を置くこともしない。万博視察に行った吉村知事は、トイレに入ることはなかったのだろうか。
万博関係者は、こうため息をつく。
「調達コードの会議は紛糾しています。SDGsの観点から万博はレジ袋の持ち込みや販売・配布を禁止する方針です」
またハンドドライヤー設置見送りについて「会場計画時がコロナ下の状況でハンドドライヤーの利用を停止していた時期のため」と万博協会広報部が説明していることにも首を傾げる。
「ポストコロナといえるここ2年間、デザイナーズトイレの入札不成立が続き、計画変更のチャンスはいくらでもありました。万博会場の立地のせいで深刻な電力不足が懸念され、これ以上電気が必要な提案は、ロクな検討すらされていません。当初計画されていた『自動掃除機』の運用も、電力不足を念頭に中止です。外国の観光客が多く詰めかける万博において衛生面をあまりに軽視しており、一方で、SDGsを強調しているのはいびつです。行政の衛生担当者も万博に何か注文することはできず萎縮してしまってます」
SDGsもいいが、あまりに不潔
2億円もかけておいて、トイレに紙ぐらい置いてもらえないのだろうか。SDGsもいいが、あまりに不潔だ。税金つかってウィルス蔓延させるなんて、大阪維新はどうかしてしまったのだろうか。
※1
大阪府吹田市ウェブサイト『公園便所の仕様標準』(2023年11月30日)
※2
大阪府「感染性胃腸炎にご注意!」
※3
世の女性8割「ハンカチ持ち歩かない」驚きの理由…通常のハンカチではできない
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