「どこの激安スーパー?」石破首相、コメ高騰に「倍とは言わないが5割増の実感」発言に国民失笑

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予算委員会で答弁する石破総理 食糧問題

「どこの激安スーパー?」石破首相、コメ高騰に「倍とは言わないが5割増の実感」発言に国民失笑

「簡単に決断できない」逆ギレ江藤農水相

 物価上昇の波が国民生活に打撃を与える中、石破茂政権がようやく重い腰を上げた。高止まりする米価の背景にある流通円滑化に向け、政府備蓄米の放出を決めたのだ。ただ、店頭に並ぶのは3月下旬以降と見込まれ、輸入米を取り入れながら窮地を耐えようとする外食産業や消費者は後を絶たない。経済アナリストの佐藤健太氏は「コメ価格は9割近く高騰し、政府が何ら効果的な手を打たず“失政”を続けた責任は重い。今回の備蓄米放出で値下がりに転じるかも不透明だ」と指弾する。

石破「倍とは言わないが、5割は上がったという実感」

「高いですね。倍とは言わないが、5割は上がったという実感は持っている。実際、スーパーに行くとコメそのものがないということもあるので、消費者にとって極めて深刻であるという認識は共有している」。2月17日の衆院予算委員会で、立憲民主党の近藤和也氏から「総理、今のコメの値段は高すぎると思わないか」と問われた石破首相はこのように述べた。相変わらず、“評論家・石破茂”を思わせる他人事のような言い方に釈然としなかった人も多いだろう。ネットには「どこの激安スーパー?」と批判の声も上がっていた。

 石破首相の発言は、“評論家”としても国民感覚とズレている。農林水産省が2月18日発表したスーパーで販売されたコメ5キロあたりの平均価格は、前週よりも高い水準で推移し、3829円(全国、2月3~9日)だった。これは前年同期に比べて89.7%も高い。ネット上には「5割?どこの話をしているんだ」「いや、2倍に跳ね上がっているんだけど」といった厳しい声が相次いだ。

 販売価格の推移を見ると、昨年3~6月は5キロが2000円超だったが、台風や地震などによる買い込む需要が発生し、同8月は2600円、同9月は3000円と著しく上昇してきたことがわかる。昨年夏は「令和のコメ騒動」といわれるほどコメの流通量が不足し、品薄状態が続いた。

 政府は「新米が順次供給され、円滑なコメの流通が進めば、需給バランスの中で一定の価格水準に落ち着いていく」と説明していたが、新米流通後も価格高止まりは解消せず、政府は新米が流通する秋に入れば解消に向かうとしていたが、やっとの思いでコメ袋を発見しても購入点数が制限される状況だった。

江藤農水相の逆ギレ「そんなに簡単に決断できるものではない」

 近藤氏は「政府からは昨年秋になったら(コメが)出回るから大丈夫とアナウンスがあった。だが、9月も10月も価格が上がり、1月には4100円を超えた。『集荷が思ったようにされていない』『備蓄米の活用ルールを柔軟にすべき』という意見もなされてきた。備蓄米放出の判断は遅かったのではないか」と迫った。だが、江藤拓農林水産相は「あらゆる批判は受け止めたい。判断が遅かったという批判についても受け止めたい」としながらも、「営農者の生産意欲をそぐということがすごく怖かった。放出もすごく迷った。様々なイレギュラーなことが起こった。そんなに簡単に決断できるものではない。ご理解いただきたい」と述べるにとどめた。

 総務省が公表している小売物価統計によると、東京都区部では今年1月にコシヒカリ(5キロあたり)が対年同月比71.5%増の4185円となった。コシヒカリ以外の銘柄の平均も77.4%増の4051円だ。1年前の2024年2月は「コシヒカリ」2441円、「コシヒカリ以外」2300円であり、事態は深刻と言える。

消費税込みで5000円を超える事態に

 実際、東京都内のスーパーでコメ価格を見ると、消費税を入れて5000円を超えることも珍しくない。コメ価格の高止まりは、物価上昇に苦しむ国民の生活に打撃を与えている。総務省の家計調査によれば、昨年12月のコメの購入数量(2人以上世帯)は対前年同月に比べ1.5%減の5.2キロだった。

 流通円滑化に向け、備蓄米21万トンを放出すると決定した江藤農水相は2月18日の記者会見で「流通正常化に向かえば、価格も落ち着くことが期待される」「流通市場が動き出したと受け止めて良いのではないか」と強調した。ただ、玄米60キロあたりの価格指数は2万6260円(2月18日)に上昇した。昨年12月までは全銘柄平均が2万3715円であり、「平成のコメ騒動」(1993年の大凶作)時の2万3607円を超えて過去最高値を記録している。値上がりする「パン」や「麺類」と比べても異常な状況だ。

 コメ価格が高止まりする要因には、「転売ヤー」の存在も指摘されている。2024年産米の生産量は、679万トンと前年産より約18万トン増加した。

少なくとも、「放出カード」をにおわせておけば…

 だが、一方の集荷量は約21万トン少なかった。コメは生産者からJAなどの集荷業者が買い、卸売・小売業者を通じて消費者に流れるのが一般的だ。しかし、最近は生産者がJAを通さずに直接取引するケースや、一部業者が高値で売ることができるタイミングを見定めてストックするケースもみられている。その結果、流通量の減少が生じて価格が上昇するという流れだ。

 ただ、生産者から直接買い取る業者の増加は予測できていたことだ。にもかかわらず、政府は昨年夏の「コメ騒動」の際に備蓄米放出の可能性について「民間流通が基本となっているコメの需給や価格に影響を与える恐れがある」「年間を通じて供給不足が見込まれる場合に備えて行うもの」と完全否定してしまっていた。少なくとも、「放出カード」をにおわせるアナウンスを発していれば高値を見定める一部業者を強く牽制できていたはずだ。その点は、ぜひ日本銀行にアナウンス効果を学んでもらいたい。

本当に「政府の読み」通りに行くのだろうか

 では、実際にコメはいつから安くなるのか。江藤農水相は「政府から放出される分に加えて、民間のどこかにあると言われる21万トンがどのようなタイミングで、どのように市場に影響を与えるか、これは読みようがありません」と説明。その上で「普通に考えれば、市場に21万トン余計に流通に乗ってしまうので、これが先んじて流通に乗れば、もっと早いタイミングで、流通が正常化する期待も持てると思います」と語っている。つまり、店頭に並ぶ3月下旬以降にコメ価格が下がってくるというわけだ。

 ただ、本当に「政府の読み」通りに行くのだろうか。シナリオに基づけば、備蓄米放出によって在庫が押しのけられ、店頭に並んでいく流れになる。その好循環が生まれれば5~6月頃には5キロあたり3000円程度まで価格が下がる可能性はあるだろう。だが、コメの需要増を見込んで売り渋りをする一部業者がコメを手放さなければ、その目論見は外れると言える。

 林芳正官房長官は「今回の措置によってコメの流通の目詰まりが解消し、上昇した価格が落ち着くことを期待している」と自信をのぞかせるが、過熱するコメの買い付け競争が沈静化するかは見通せない。昨年夏に「新米が供給されれば一定の価格水準に落ち着いていく」と説明しながら“予想”を見事に外し、備蓄米放出の可能性を完全否定していた石破政権。後手に回る政府による今度の“予想”は、はたして当たるのだろうか。

 いずれにしても、「楽しい日本」をつくると豪語する石破首相には、まずは国民の生活に寄り添うよう望むばかりだ。

 

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