最悪レベルの「エンゲル係数」が高齢者の生活を圧迫…ますます広がる“老後不安”の深刻度

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日本の食卓 食糧問題

最悪レベルの「エンゲル係数」が高齢者の生活を圧迫…ますます広がる“老後不安”の深刻度

貯金を切り崩して食いつないでもいずれ枯渇する

 エンゲル係数が43年ぶりの高水準だという。家計の消費支出全体に占める食料費支出の割合を示すエンゲル係数は、昨年28.3%(2人以上世帯)と1981年以来の最高水準を記録した(総務省2月7日発表、24年家計調査による)。

 エンゲル係数は貧困の度合いを示す指数で、数字が高いほど貧困で生活水準が低く、生活にゆとりがないとされる。食費は生活に欠かせず削減は困難、そのため所得が低いほど食費への支出割合は大きくなり、他の消費への支出は小さくなる。こうした貧困化への道を進みつつある最大の原因は、食料品を中心にした物価の高騰だ。エコノミストの斎藤満氏がこう指摘する。
「エンゲル係数が28.3%という水準は貧困の象徴ともいえ大変なこと。所得水準が低く、経済レベルが低かった時代へ一気に戻し、日本経済の何十年分の成長を逆戻りさせたことになる」

 身近な食べ物の値上がりは消費に大きな影響を与えている。総務省が2月21日に発表した1月の消費者物価指数は、前年同月比4%の上昇(生鮮食料品を含む総合指数)。その半分は食料品の上昇による。コメ類は70%を超し、キャベツは3倍、ハクサイも2倍、他の野菜、食品も値上がりし、食費への支出が増す一方、他への支出に回す余裕はなくなってきているのだ。先の斎藤氏が言う。

「現在の物価の上昇に対する認識は、政府・日銀と消費者の間で大きく乖離している。日銀は物価上昇率の目標を2%といいますが、現在の水準を分かっているのか。『物価と賃金の好循環を目指す』とする目標はむしろ悪循環に向かっている。物価高による消費者の生活負担圧迫は拡大しています」

■続く「負のスパイラル」

 実質賃金は22年4月以降ボーナス時期(24年6.7月)を除いてマイナスが続いている。賃金が上がればコスト転嫁で物価も押しあげられ実質賃金はマイナスに動く、まさに負のスパイラルが続いているのである。

 エンゲル係数の上昇は高齢化にも大きく影響している。勤労世帯は28%台だが、定年退職した無職世帯は30%を超えている。所得水準が低いため、生活に欠かせない食料品の支出割合が大きくなってくるのだ。特にコメをはじめとする食料品の高騰は高齢者の生活を圧迫する大きな要因になっているのである。

 日本の個人金融資産は2179兆円(24年9月末)。60歳以上が6割を超えて所有している。現在の物価の上昇が今後も続けば、高齢者は貯蓄を取り崩して生活費に充てざるを得なくなる。高齢化社会で長生きするリスクを考えると、老後は貯蓄が減り、年金も減る不安を抱えたまま迎えることになる。物価対策の素早い実施が緊急の課題になっている。

(ジャーナリスト・木野活明)

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