米国のトランプ大統領は、就任直後から関税関連の大統領令に次々に署名し、「トランプ関税」に世界が戦々恐々としている。

【画像】「トランプの標的は自動車関税より消費税」と指摘する岩本さゆみ氏

 鉄鋼、アルミニウム、自動車、半導体への関税措置には、日本も無関係ではない。だが、米国共和党の通商政策の伝統を長年ウォッチしてきた元為替ディーラーで経済評論家の岩本さゆみ氏によれば、“本丸”は別のところにある。

 それは日本の消費税だ。


大統領覚書に署名するトランプ米大統領 ©時事通信社

日本で長く報じられなかった「通商問題としての消費税」

〈この問題は、日本では長らく論じられてきませんでした。日本の新聞で「消費税」が「通商問題」として本格的に報じられるようになったのは、つい最近のことです。トランプ大統領が「相互関税」の導入を表明してからです。しかし、米国の公文書からは、共和党の主流派の一部で脈々と、日本の消費税に相当するVAT(付加価値税)を「不公平な税制」と問題視してきた流れが確認できます〉

 消費税が「不公平な税制」とは、どういうことなのか?

 現在、米国を除く約150カ国で採用されているVAT(付加価値税)は、1954年にフランスが最初に導入した。フランス政府が自国企業に供与したかった「輸出補助金」は、「関税および貿易に関する一般協定(GATT)」に違反するため、「自国の輸出企業へ補助金を与える合法的手段」として考案されたのだ。「付加価値税」という名称だが、「実質的には輸出企業を援助する目的が強い税金」(米公文書の説明)として活用が始まった。

 

消費税(付加価値税)の“からくり”

 消費税(付加価値税)の“からくり”について、元米通商代表のライトハイザー氏は、次のように解説する。

(税率をEUの平均である21%とした場合)
・ニューヨークで100ドルの米製品は、欧州では121ドルになる。
・パリで100ドルの欧州製品は、輸出還付金のため米国では79ドルになる。

 この差額42ドルが、付加価値税が生み出す「障壁」であり、EU企業は輸出時の付加価値税の控除により、価格競争で優位に立てる。

 日本はどうか。消費税に伴う還付金は膨大な額だ。国税庁の統計情報によると、2022年度の還付申告は約7.1兆円(還付に伴う処理費用等を含む)に達している。トランプ大統領からすると、この消費税還付金が「非関税障壁」となる。

 第2次トランプ政権の経済・通商政策とその影響を、岩本さゆみ氏が読み解いた「トランプ大統領次の獲物は日本の消費税」の全文は、3月10日発売の「文藝春秋」4月号、および月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」は3月9日から掲載されている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2025年4月号)