生成AIに頼り過ぎるとバカになる…!米カーネギーメロン大学などが明らかにした「衝撃の調査結果」
頭脳労働者に求められる知的能力とは
同調査を実施したのは、米カーネギーメロン大学とマイクロソフト研究所(Microsoft Research)の共同チーム。
この調査はオンラインで実施され、その調査対象として選ばれたのは、英国、カナダ、米国、南アフリカ共和国、ポーランドの5ヵ国から無作為に抽出された319名の知識労働者(Knowledge Workers)だ。
年齢層は18~55歳以上までの5段階、性別は男女ほぼ半々である。業種的には「コンピュータと数学」「芸術、娯楽、デザイン、スポーツ、メディア」「金融」「教育」…など多岐にわたる。
これら調査対象者の自己申告制による主観的な評価に基づいて、(OpenAIの)ChatGPTや(マイクロソフトの)Copilot、(グーグルの)Geminiなど生成AIツールが、知識労働者(頭脳労働者)の仕事にどんな影響を与えているかを定量・定性的に見積もった。
この調査が特に重視したのは、知識労働者の「批判的な思考力(Critical Thinking)」である。それは具体的に以下の6項目に分かれる:
(1)知識力(Knowledge) ––知識や情報を記憶・想起する能力
(2)理解力(Comprehension) ––知識や情報を理解する能力
(3)応用力(Application) ––知識や情報を仕事に活用する能力
(4)分析力(Analysis) ––知識や情報を異なる要素に分けて、各々の性質や関係を明らかにする能力
(5)合成力(Synthesis) ––異なる知識や情報を総合して新たな知識や情報を創造する能力
(6)評価力(Evaluation) ––知識や情報を客観的基準に基づいて評価する能力
これら6つの要素は「批判的な思考力」というより、むしろ一般に知識労働者に求められる知的能力と言っても過言ではなかろう。
努力をしなくなった知識労働者たち
これら6種類の知的能力について(調査対象となった)319名の知識労働者からオンラインで回答を得たところ、全体の72パーセントが「生成AIツールを使うことで(各種の知的能力を発揮しようとする)努力(effort)が減少した」と回答した。
特に (2)理解力 の発揮では「努力が減った(Less effort)」「努力が大いに減った(Much less effort)」を合わせて78パーセント、また (5)合成力 の発揮では同76パーセントと減少の度合いが著しかった(図1/出典:”The Impact of Generative AI on Criticla Thinking,” Hao-ping Lee, et.al. https://www.microsoft.com/en-us/research/wp-content/uploads/2025/01/lee_2025_ai_critical_thinking_survey.pdf )。
つまり生成AIに仕事を任せることによって、調査対象者の多くはこれらの知的能力を発揮する努力をしなくなってしまった、ということだ。
もちろん努力しないからと言って、必ずしもそれらの知的能力が低下するとは限らないが、少なくともその可能性は高まるだろう。
生成AIを無意識に使い続けるとどうなる?
が、これらの結果は言われてみれば当たり前でもある。なぜなら「努力」とは見方を変えれば「負担」であり、そもそも知識や情報を記憶したり思い出したり、理解したり、分析したりする負担を軽減するために、知識労働者はChatGPTなどの生成AIツールを活用しているからだ。
結果的にそれらの努力が減少するのは当然と言えば当然なのである。あるいは生成AIツールが期待通りの働きを示しているとも言えるだろう。
問題はこれらの結果を知識労働者が普段意識しているかどうかにある。もしも各種の知的能力を発揮する機会が減少していることを意識せずに生成AIツールを使い続け、それを補うための何らかの努力や工夫を怠れば、いずれはそれら知的能力の低下へとつながるだろう。
この懸念に対し同調査レポートでは「生成AIツールによる長期的な影響を改めて調査すると同時に、批判的な思考能力(各種の知的能力)を維持・向上させる生成AIツールの開発も急務である」とする旨を提言している。
それは確かにおっしゃる通りだが、そもそも生成AIとは各種の知的能力を支援ないしは代替するツールである以上、それらの能力を逆に維持・向上させる生成AIツールとはいったんどのようなツールなのか、とつい考え込んでしまう。その辺りの具体的な事柄には、同調査レポートは言及していない。
変わりつつある「求められる仕事の性格」
他方、改めて図1を見直すと、生成AIを使うことで逆に各種の知的能力を発揮しようとする努力が増加したとする回答者も数は少ないが存在する。特に (6)評価 において、その能力を発揮する努力が増加したとする割合は16パーセント(More effortとMuch more effortを足した数字)と比較的大きい。
この理由は、生成AIツールの出力する情報が誤っていたり、不十分であったりした場合に、知識労働者自身の仕事に対する上司や同僚らの評価が低下する恐れがあるからだ。それを避けるために、知識労働者は生成AIの出力結果を評価する努力(出力情報の信頼性を確かめるなどの努力)を欠かすわけにはいかない。
これは生成AIの導入によって、頭脳労働者に求められる知的能力や仕事の性格が変わってきていることを意味する。つまり従来の「知識力」や「分析力」などから、生成AIが出力する情報を「評価」することへと仕事の比率が傾いているのだ。
いずれにせよ、こうした複雑な現状をまずは意識することが先決であり、それにどう対応していくかは個々人が改めて考えていくしかないだろう。
【さらに詳しく】 『医学界に大激震…ChatGPTは「医師よりも正確に病気を診断」する!権威あるアメリカ医学論文誌に発表された「驚きの調査結果」』
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