しかし、現在の社会で種子油を完全に避けることは不可能という現実もあります
知らなかった種子油のいくつかの真実
植物油、正確には「種子油」については、以前書かせていただいたことがあります。
この「植物油(種子油)と動物性の油とはどちらがいいのか」というの概念は、一種の論争にもなっているのですが、米エポックタイムズで、そのどちらの主張も取りあげている記事を読みました。
種子油の製造法や問題点などについて初めて知ることも多く、参考になる記事でしたので、ご紹介したいと思います。
種子油とは、一般的なものとしては、大豆油、コーン油、キャノーラオイル、綿実油、ひまわり油、ベニバナ油、グレープシードオイル、米油などですが、これらは極度に工業的に作られているものだそうで、良いか悪いかはともかくとしても、実際の日々の料理や外食で、
「これらの油を避けることはほぼ不可能」
なのが現在の社会の現実です。スーパーにある食用油の大部分が種子油です。
かなり長い記事ですので、まずはその記事をご紹介したいと思いますが、ひとつだけ気になったのは、以下のアメリカ農務省のグラフでした。
現在のアメリカにおいては、「種子油に使われる作物は、100%近くが遺伝子組み換えされている」ことを知ったのです。
アメリカのおける遺伝子組み換え作物が締める比率の推移
USDA
1990年代の中盤くらいまでは、遺伝子組み換え作物は、ほぼ 0%に近かったのが、21世紀に入ってから、急速に比率が増加していて、食用油で最も多く食用油が製造されている大豆に至っては、もうすぐ 100%のレベルです。
以下は、6年前の記事で、遺伝子組み換え食品が、人間の細胞にダメージを与え、そして、「不妊と低体重の赤ちゃんを増加させる」ことが示された記事をご紹介しています。
・[衝撃]遺伝子組み換え食品の壊滅的な影響を知った日。すべての細胞内に殺虫剤を含むその作物たちは、腸内細菌を破壊し、不妊と低体重の赤ちゃんを増加させ、そして「自然界そのもの」を破壊する
In Deep 2019年5月26日
ともかく、エポックタイムズの記事をご紹介します。記事を書かれたのは、作家であり看護師であるシェラミー・ツァイさんという方です。
種子油と健康に関する事実
The Facts About Seed Oils and Your Health
Epoch Times 2025/03/18
10年ごとに新たな敵となる食物が登場する。最初は脂肪だった。次は砂糖だった。そして今、種子油が肥満や慢性疾患の原因として非難されている。
種子油を避けることはほぼ不可能だ。種子油は、サラダドレッシングやファーストフードからプロテインバー、さらには粉ミルクまで、あらゆるものに含まれている。
種子油を批判する人たちは種子油が有害だと主張しているが、支持者は種子油は安全で、価格が手頃で、さらには体に良いと主張している。
しかし、真実はもっと微妙だ。これらの議論は往々にして単純化されすぎている。「種子油」という用語でさえ誤解を招きやすく、何世紀にもわたって伝統的な食生活の一部となってきた油と、大規模な食糧生産のために作られた油をひとまとめにしてしまっている。
この論争は種子油が本質的に良いか悪いかということだけではなく、種子油がどのように加工され、消費されるかということに関するものだ。
種子油とは実際何なのか
健康トレンドをフォローしている方なら、種子油は有毒なので避けるべきだという主張を聞いたことがあると思う。
種子油とはいったい何なのだろうか。また、なぜ一部の人々は種子油を有害だと考えるのだろうか。
最も基本的な意味では、種子油は種子から抽出される。これは無害に思えるかもしれない。結局のところ、オリーブオイルはオリーブから、ココナッツオイルはココナッツから抽出される。
しかし、すべての種子油が同じというわけではない。ゴマ油や亜麻仁油など、何世紀にもわたって伝統的な食生活に欠かせないものもあり、それらは、栄養素や抗酸化物質を保存する自然なコールドプレス法 (食用オイルの原料となる果実や種子を低温で圧搾する製造方法)で抽出されている。
しかし、種子油には高度に加工されているものがある。
大豆、トウモロコシ、キャノーラ、ヒマワリ、ベニバナ、綿実、ブドウ種子、米ぬかなどの工業用種子油は、高温抽出と化学精製によって大量生産されている。
メーカーは、オイルを最大限に抽出するために、ヘキサンなどの溶剤を頻繁に使用する。これらのオイルは精製、漂白、脱臭されており、「RBD」オイルと呼ばれている。
このプロセスにより、味は中性になり、保存性も向上するが、ビタミン E や抗酸化物質などの有益な化合物も除去される。
そもそも、工業用種子油の多くは、人間の消費を意図して作られたものではない。
キャノーラ油は菜種油として始まり、主に機械の潤滑油として使われていたが、1970年代にカナダの科学者が毒性化合物を除去するために改良した。
キャノーラ油の名前自体は「カナダ」と「オイル」を組み合わせたもので、マーケティング上の発明だった。「植物油」も誤解を招く用語だ。これは多くの場合、実際よりも健康的であるように宣伝されている工業用種子油のブレンド油だ。
コーネル大学で学んだ食物脂肪を専門とする医師であり科学者であるケイト・シャナハン氏は、工業用種子油は栄養を考慮して開発されたものではないと説明する。
「これらの種子から採れる原油は食用にはなりません」とシャナハン氏はエポックタイムズに語った。
「大豆とキャノーラは栄養価を考えて栽培されたのではなく、高収量と工業的耐久性を考えて栽培されたものです」
米国で栽培される大豆のほとんどは、人間の食用には向いていない。アメリカ農務省によると、米国の大豆の 70%以上が家畜の飼料として使用され、残りの 5%はバイオディーゼルに加工される (農務省の資料)。残りは主に大豆油に精製されるが、これは大豆本来の栄養価のほとんどが失われた製品だ。
さらに、米国の大豆の 90%以上は、グリホサートなどの除草剤に耐えられるように遺伝子組み換えされており(農務省の資料)、農家は作物に害を与えることなく畑全体に除草剤を散布することができる。
この高強度農業と重工業による加工が組み合わさって、油は本来の形とはかけ離れたものになっている。
オリーブやゴマなどの天然の抗酸化物質を保持する伝統的な油とは異なり、工業用種子油は保存安定性を得るために徹底的な精製を必要とする。シャナハン氏は、このプロセスによって有益な化合物が除去され、酸化や劣化が起こりやすくなると主張している。
「機械に有効なものが必ずしも人間にも有効であるとは限りません」とシャナハン氏は言う。
種子油は健康に良いのだろうか、それとも悪いのだろうか
種子油の健康への影響については激しい議論が交わされている。
種子油はバターや他の動物性脂肪に代わる心臓に良い代替品だと主張する専門家もいるが、炎症や病気の原因になるかもしれないと考える専門家もいる。
心臓に良い代替品としての種子油の事例
科学者たちは何十年もの間、心臓の健康におけるさまざまな脂肪の役割について議論してきた。研究によると、バターや赤身の肉に含まれる飽和脂肪を種子油に含まれる多価不飽和脂肪 (PUFA)に置き換えると、心臓血管に良い効果がある可能性がある。
支持者たちは、科学的根拠は十分に確立されていると主張する。
「種子油に関する研究は一貫して肯定的です」と自然療法医のマシュー・ナグラ氏はエポックタイムズに語った。
「無作為化対照試験の多数のメタ分析により、飽和脂肪を多価不飽和脂肪が豊富な種子油に置き換えると、明らかな悪影響なしに、アメリカ人の最大の死因である心血管疾患のリスクを低下させることができることが実証されています」
大規模な研究がこの主張を裏付けている。2021年に 50万人以上を対象に行われた研究では、飽和脂肪をキャノーラ油、コーン油、オリーブオイルなどの油に置き換えた人は心臓病や早期死亡のリスクが低いことがわかった (論文)。
論文の著者たちは以下のように書いている。
「私たちのこの研究結果は、心臓代謝の健康と長寿のために、固形脂肪から非水素化植物油への摂取量を増やすことを裏付けている」
固形脂肪の例にはバターやラードなどがある。
2025年の JAMA に掲載された研究はこれらの研究結果を裏付け、オリーブ、大豆、キャノーラなどの植物性油を多く摂取した人は寿命が長く、心臓病やがんの発生率が低いことを明らかにした。
一方、バターを多く摂取した人は早期死亡のリスクが高かった。
研究者らは、バターを植物油に置き換えることで、がん関連死が 17%減少するなど、全体的な死亡リスクが 17%減少すると推定した。
こうした証拠が増えているため、アメリカ心臓協会(AHA)は、心臓に良い食事の一部として種子油を推奨し続けている。
種子油の欠点:酸化と炎症
アメリカ心臓協会による種子油の推奨に誰もが同意しているわけではなく、その背後にある研究に疑問を呈する専門家もいる。
「この研究は質が低い」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の血液腫瘍学者で疫学・生物統計学教授のヴィナイ・プラサド博士はエポックタイムズに宛てた電子メールで述べた。
「エキストラバージンオリーブオイルを大豆油やベニバナ油とひとまとめにしているが、これはおかしい」
また、同博士は研究方法論を批判し、バターの消費量を正確に測定しておらず、不正確な推定方法に頼っていると主張した。
「この種の栄養疫学は、明確さを提供するのではなく、教義を助長するだけです」
批評家たちは、研究方法に関する懸念を超えて、種子油の本当の問題は酸化であると主張している。
精製すると種子油は腐敗しにくくなり、店頭でより長く保存できるようになる。しかし、特に調理中に熱、空気、光にさらされると、その化学構造は分解し始める。
オリーブやゴマなどの伝統的な油には、劣化を防ぐ抗酸化物質が自然に含まれているのに対し、工業用種子油は加工中にこれらの安定化合物を失う。
その結果、酸化に対して脆弱になり、アルデヒドやフリーラジカルなどの副産物が発生する。これらの化合物は細胞を傷つけ、炎症を促進し、慢性疾患の一因となる可能性がある (論文)。加熱はこのプロセスを加速する。
研究によると、レストランのフライヤーで使用されるような植物油を繰り返し加熱すると、実験動物の組織損傷やコレステロール値の上昇につながる酸化副産物が発生することがある(論文)。また、他の研究では、オメガ6脂肪の劣化形態である酸化リノール酸が人間の脂肪組織や動脈プラークに蓄積していることがわかっており、長期的な健康への影響が懸念されている (論文)。
しかし、このような種子油の酸化が大きな脅威であることにすべての専門家が同意しているわけではない。
「こうした処理には長所と短所があります」とスタンフォード大学の栄養学教授クリストファー・ガードナー氏は言う。「油の分解を防ぐのに役立つが、有益な成分も取り除いてしまいます」
『サイエンティフィック・ワールド・ジャーナル』のレビューによると、精製によってビタミンEやポリフェノール(細胞を保護するのに役立つ化合物)などの抗酸化物質が除去される一方で、不純物も除去されるため、オイルがより安定し、腐敗しにくくなるという。
それでも、種子油は他の脂肪よりも酸化が早く起こる。研究によると、植物油の多価不飽和脂肪 (PUFA)は熱、光、空気にさらされるとより早く分解するが、一価不飽和脂肪(オリーブオイルに含まれる)と飽和脂肪(バターや牛脂に含まれる)はより安定したままだ。
加工食品とのつながり
種子油に対しての批判者と擁護者が一致していることが一つあるとすれば、それは種子油がどこにでもあるということだ。そしてそれは偶然ではない。
安価で豊富、そして多額の補助金が出ている種子油は、現代の食品産業の柱だ。米国政府は、大豆、トウモロコシ、綿実などの作物の支援に数十億ドルを投入しており、これらの油はオリーブやアボカドなどの代替品よりもはるかに手頃な価格になっている。
大豆は市場を独占しており、米国の油糧種子生産の約 90%を占めている。2016年には、大豆業界だけで 16億ドル (約 2400億円)の補助金が支給され、生産量の増加とコストの低減につながっている。
政府の支援により、種子油は家庭料理人にとって安価になっただけでなく、現在アメリカ人の食生活の約 60%を占める超加工食品 (UPF) の主力製品にもなった。
精製穀物や添加糖とともに、種子油は現代の加工食品の基礎を形成し、低コストで食感を高め、保存期間を延ばし、風味を高めるために使用される。これらの原料は朝食用シリアルから冷凍食品まであらゆるものに使用されており、一般的なスーパーマーケットで避けることはほぼ不可能だ。
32オンス(約 950ミリリットル)のキャノーラ油のボトルは約 5.79ドル (約 860円)だが、同じ量のエキストラバージン・オリーブ オイルは 13.99ドル(約 2090円)以上する。
コストを抑えようとしている食品メーカーにとって、選択は明らかだ。
安価で、風味が中性で、比較的保存がきく種子油は、食品メーカーにとって夢の製品だ。加工食品の保存期間が長くなり、味が良くなり、利益も上がる。
シャナハン氏は、種子油が平均的なアメリカ人の 1日の摂取カロリーの 20~ 30%を占めると推定している。
種子油はカテゴリーとして追跡されていないため、この数字を計算するのは簡単ではなかった。シャナハン氏は、政府や業界の報告書を使用して、大豆やキャノーラなどの作物の数十年にわたる生産データを分析し、現代の食生活における種子油の存在範囲を明らかにした。
「人類は、これまでこれほどの量の多価不飽和脂肪酸(種子油)を摂取したことがありません」と彼女は警告する。
「歴史的に、人間の食生活は主に動物性脂肪に頼っており、多価不飽和脂肪酸を豊富に含む油には頼っていませんでした。(現代の生活では)多価不飽和脂肪酸を避ける方法を知らないと、大量に摂取していることになります」
ガードナー氏も同意見だが、問題は種子油だけではないと言う。
種子油の消費量が増えているのは、自家製のサラダドレッシングを作る人が増えたからではないと同氏は言う。種子油を大量に使用する超加工食品が今やアメリカ人の食生活の主流になっているからだ。
ガードナー氏は、たとえ明日、種子油が食糧供給から排除されたとしても、超加工食品が消えることはなく、単に配合が変更されるだけだと主張する。
「同じ超加工食品がバター、牛脂、ラード、ココナッツ脂肪などの別の油で作られたとしても、それらの食品が突然健康食品になることはありません」
本質的に、種子油をめぐる議論は、油そのものについてだけではない。種子油が含まれている加工食品について、そしてそもそも私たちは種子油をこれほど多く食べるべきかどうかについてだ。
では、何を使って調理すればいいのだろうか
専門家は、種子油を完全に排除することに固執するのではなく、自宅で調理する際には超加工食品を減らし、高品質で安定した脂肪を選択することのほうが大きな問題だと述べている。
「種子油を減らして健康を改善したいなら、超加工食品の摂取を減らすのが一番です」とガードナー氏はアドバイスする。
「砂糖、精製穀物、ナトリウムの摂取を減らすなど、さまざまな点でメリットがあります」
キッチンでより良い選択をしたいと考えている人のために、専門家は、酸化しにくい安定した、加工が最小限に抑えられた油の使用を推奨している。
料理のより良い選択肢
・アボカドオイル:一価不飽和脂肪が多く、高温でも安定している
・エキストラバージンオリーブオイル:抗酸化物質が豊富で、ふりかけたり軽い調理に最適
・バターとギー:高温調理でも自然に安定
・ココナッツオイル:飽和脂肪が多く、酸化しにくい
冷たい状態で使うのがベストなオイル
・亜麻仁油:オメガ3が豊富でドレッシングに最適
・クルミオイル:抗酸化物質が豊富で、サラダに風味を加える
・ゴマ油:芳香があり、適度に熱に安定している
工業的に精製されている油
・大豆油
・トウモロコシ
・キャノーラオイル
・綿実油
・ひまわり油
・ベニバナ油
・グレープシードオイル
・米油
これらの種子油の中にも、コールドプレスされた特別なバージョンもいくつか存在するが、大量生産され、高度に加工されたバージョンに比べると、一般的ではない。
結論
種子油をめぐる議論はまだ終わっていないが、ひとつはっきりしているのは、種子油をどのように摂取するかが重要だということだ。
自家製サラダにキャノーラ油を少しかけるのと、古いレストランの油で揚げたフライドポテトを食べるのとは違う。安価な油、砂糖、添加物で満たされた超加工食品に頼ることこそが、より大きな問題なのだ。
ほとんどの人にとって、食生活を改善する最善の方法は、種子油の一滴を気にすることではなく、新鮮で加工されていない食品をもっと食べることだとガードナー氏は言う。
「植物油を非難して、それを含む超加工食品を非難しないのは奇妙に思えます」
ここまでです。
植物油について書いた In Deep の過去記事には以下のようなものがあります。
・植物油のほぼすべてが「顕著な生殖毒性」を持つことが研究で見出される。卵巣のほぼすべての部位が萎縮し、さらにオキシトシン生産遺伝子が調節不全に
In Deep 2023年5月1日
・植物油が若者の大腸ガンの急増を助長している可能性
In Deep 2024年12月12日
今のように「食用油のシステム」が完成している現状では、どのような方法がいいのかは結論が出るような問題ではないかもしれないですが、少なくとも、赤ちゃんや小さな子どもへの食事や、妊娠中の女性の食事と種子油の関係については、多少慎重になっていもいいのかもしれません。
しかし、ゴマ油やエキストラバージンオリーブオイルなどを除けば、スーパーなどで販売されている食用油は、ほぼすべてが工業的に製造された種子油です。その他の油、たとえばアボカド油やココナッツオイルを普通のスーパーで購入することは難しいと思われる上に、あったとしても大変に高価です。
現実としての選択肢はなかなか厳しいことだとも思います。
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