「財務省は行うべき減税すら議論の俎上に載せない」「老後の不安は増すばかり」 退職金増税について専門家が徹底解説
財務省にとって減税は悪!財務省の敗北を示すので国民が困ろうがどうなろうが絶対減税はしない方針。減税した財務官僚は左遷させられる。
「増収額は2000億円から5000億円」
【前後編の後編/前編からの続き】
サラリーマンを狙い撃ちする「退職金増税」について石破茂首相が国会で言及した。そもそも退職金税制とはどのような仕組みなのか。なぜ財務省は「優遇制度見直し」を諦めないのか。「雇用の流動化が促進される」という説明は本当なのか――専門家による徹底解説。
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前編【「1円でも多くの税金を搾り取るのが財務省の『仕事』」 サラリーマンを追い詰める退職金増税の実態】では、退職金増税の中身と財務省の思惑などについて、専門家に聞いた。
「2分の1課税」の優遇措置が残されたとしても約40万円の増税。実際に見直しが実行される際には「激変緩和措置」が取られるようだが、サラリーマンにとっては看過し難い負担増である。一方、
「平均的なサラリーマンの増税額がおよそ40万円だとすると、国の増収額は2000億円から5000億円ほどになるでしょう」
そう話す、京都大学大学院教授で元内閣官房参与の藤井聡氏は、この見直しにより「雇用の流動化が促進される」という政府の展望に疑問を投げかける。
「そもそも人が『転職するか否か』という重い決断をするにあたっては、実にさまざまな要因が存在します。現状への不満、新天地への期待が主要因であると考えられますが、『退職金の課税額』がその中で主要な役割を果たすとは到底考えられません。従って、『雇用の流動化』は相当に無理のある理由であり、おおむね詭弁、ないしはウソと断定せざるを得ない」
「『雇用の流動化』との理由は苦しい」
青山学院大学元学長で元政府税制調査会専門家委員会委員、弁護士でもある三木義一氏も、
「『雇用の流動化』との理由は苦しいと思います」
と、次のように語る。
「今までは20年超会社にいれば退職所得控除額が増えるという話だったところ、今後は長くいても税金は取るぞというシステムに変えることで雇用の流動化を図るというのが政府の考えだと思います。けれどそもそも長く勤めれば勤めるほどもらえる退職一時金は増えていくのですから、控除額引き下げは転職のインセンティブにならないと思うのです」
「転職先にも退職金を引き継げるシステムを構築することのほうが効果的」
本当に雇用の流動化を図るのであれば、
「控除額を調整するよりもむしろ転職先にも退職金を引き継げるシステムを構築することの方がよほど効果的でしょう」
と、三木氏は言う。
「現状のシステムだと転職する度に退職金をもらい、その都度税金がかかり、もらえる額は少なくなってしまいます。転職先に退職金履歴を引き継いでいき、最後、職を辞める時に一括で税をかけて受け取るというシステムにした方がよほど雇用の流動化を実現できるのではないでしょうか」
「ご都合主義が過ぎる」
退職金税制は2012年と21年の改革で、勤続5年以内の役員や従業員に対する「2分の1課税」が撤廃された。
「それが今になって『雇用の流動化』という理由で20年以上働く人からもしっかり税金を取ろうとしている。退職金は長年働いた報奨金という側面もあるのですから、急に20年以上働いた人からも取るというのはちょっとご都合主義が過ぎるのではないでしょうか。ただでさえ年金の額が下がっていく中、退職金の税負担まで増えるとなったら老後の不安は増すばかりですよ」(経済ジャーナリストの荻原博子氏)
こうした増税策とバランスを取る形で減税も実現するのであれば、まだ理解できる。しかし、国民民主党が訴えてきた「103万円の壁の引き上げ」は、年収別の基礎控除額が導入されるなどして「骨抜き」となった。
「最低賃金には課税しない、という税制の基本理念を曲げてまで……」
最終的に衆院を通過した案では、基礎控除額(48万円)と給与所得控除の最低保障額(55万円)をそれぞれ10万円ずつ上げる。その上、年収200万円以下の人は基礎控除にさらに37万円を上乗せする。また、25~26年の2年間の時限措置として、年収200万円超~850万円以下の人には30万~5万円を上乗せする。
これをもって、税金がかかり始める「壁」は160万円まで引き上げられたが、これらの措置による減税額は多くの人にとって年2万円ほどに過ぎない。いかにも物足りないのだ。
「財務省は、減税額を最小化するため、国民の文化的な生活を保障するために最低賃金には課税しない、という税制の基本理念を曲げてまで、いびつな税制を考え出した、というのが実態です。国民から1円でも多く搾り取るために考え出された無理筋の、異形の税制と言えるでしょう」(藤井氏)
「減税すら議論の俎上に載せないのはどうなのか」
元財務官僚で信州大学特任教授の山口真由氏の話。
「主要国を見ると物価上昇に伴って基礎控除を上げるのが主流ですし、私もそうすべきだと考えています。基礎控除引き上げについて政府はあそこまで渋るべきではありません。増税することばかり考えていて、理論的に行うべき減税すら議論の俎上(そじょう)に載せないのはどうかと思います」
先月以来、財務省本庁舎前などで財務省の解体を求めるデモが起こっている。不満を訴える人々の声は、財務省に届いているだろうか。
前編【「1円でも多くの税金を搾り取るのが財務省の『仕事』」 サラリーマンを追い詰める退職金増税の実態】では、退職金増税の中身と財務省の思惑などについて、専門家に聞いた。
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