大阪府議会が24日、こうした内容を盛り込んだ全国初の条例改正案を全会一致で可決した。相次ぐ特殊詐欺の被害を食い止めることがねらいで、8月から順次施行される。

 

 条例改正では、ATM前で65歳以上の高齢者の携帯電話での通話を禁止し、銀行などの金融機関には啓発のポスター掲示といった措置を講じることを義務づけている。

 また、特殊詐欺の恐れがある取引を確認した場合の金融機関からの通報を義務化するほか、70歳以上の高齢者が府内で開設している口座のうち、過去3年間にATMから振り込みを行っていない口座について、振り込み上限額を1日あたり10万円以下に引き下げることも義務とする。

 さらに、プリペイド型電子マネーを悪用した詐欺の手口が多く発生していることから、コンビニなどの販売店舗は一度の会計が5万円を超える場合に詐欺の恐れがないかどうかを確認することなども義務づけた。

 府によると、こうした対策を「義務」として定めた条例はない。いずれも罰則規定はないが、これまでより踏み込んだ対策で防犯意識を浸透させていきたい考えだ。

 今回の条例改正の背景には、深刻な詐欺被害の状況がある。2024年の府内の詐欺被害件数(速報値)は被害件数2658件、被害総額約63億8275万円でいずれも過去最高を更新。被害にあった人の約70%が65歳以上の高齢者だった。単純計算で1日あたり1700万円余りがだまし取られており、府は条例改正に向けた検討を進めていた。

 吉村洋文知事はこの日、記者団に「高齢者の老後の資金を狙った非常に悪質な犯罪だ。何とか少しでも減らしていきたい」と語った。(野平悠一)