「転職者は急増」なのに「人材派遣会社は倒産」が増えているワケ
「正規」から「正規」への転職希望者が増加する一方で中小人材派遣会社が倒産している。条件の良い大手人材派遣会社は安泰のよう。
生産人口の減少に伴う労働力不足と働き方や処遇の多様化を背景に転職者の増加が続いている。
深刻な人手不足で売り手市場が活発化する一方、職業紹介業や人材派遣業などの人材関連サービス業の倒産が急増する皮肉な状況が生まれているのだ。
総務省統計局が2月14日に発表した労働力調査によると、2024年の転職者数は331万人。前年比3万人増え過去3年連続の増加となった。年齢別では35歳未満の若手現役世代が多く、転職者比率(転職者数÷就職者数×100)では、24歳未満が10%を超え最も多い。
コロナ禍を経て経済活動が活発化するなか、条件のいい求人の増加が転職者の増加につながっている。これまでも景気回復期には好条件を出す企業が増え、非正規雇用者を中心に転職者が増える傾向が見られた。ところが近年は、従来少なかった正規から正規への転職が目立つ。日本総研・調査部の小方尚子主任研究員が「活性化する転職市場の現状と経済への影響」とするリポートでこう分析している。
「正規から正規への転職は2013年の61万人から昨年は99万人と2倍近くに増えています。キャリアアップにつながる転職が多く、賃金を含み処遇が多様化するなか、企業間格差の拡大で自分に適した職場環境を求める動きが広がってきています」
さらに、「リーマン・ショック後に不本意な就職を強いられた世代が、新たな職場を求めていること。また転職支援サービスが充実し、ビジネス向けSNSや転職支援サービスのアクセスで求人情報や転職先の情報を安易に得ることができることも転職者が増加している背景です」としている。
潜在的な転職者である転職希望者は1000万人と前年比7万人減り8年ぶりに減少したが、正規から正規への転職希望者は増え続け、10年前の2倍近い600万人に達する勢いだ。
■「人材関連サービス業」の倒産は過去10年間で最多
人手不足から転職が増え続ける一方、人材派遣業など「人材関連サービス業」の倒産が増加中だ。東京商工リサーチによると2024年度4~2月の合計は92件(職業紹介業21件、人材派遣業71件)と、前年同期比10.8%増加し過去10年間で最多となった。転職市場の活発化と人材関連サービス業の倒産増加はまさに皮肉な状況。先の小方氏がこう指摘する。
「転職希望者の増加で人材派遣会社が増えた一方、実際の転職者は一部で、設立時のもくろみが外れたことや過当競争の結果です。企業が求める人材を提供できる人材派遣会社は大手に集中する傾向が強く、人材確保が難しい中小企業の淘汰が進んでいる状況です」
人口減少が進むなか、適材適所の人材配置はますます重要性を増しているのだが。
(ジャーナリスト・木野活明)
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