「車の税金」今年度から変わる?…元経済誌編集長「実質的な増税を含む構成に、本気で怒るべき」ガソリン減税進まず貧困層に直撃!
国民生活を無視した徴税構造に怒るべき!地方在住者や貧困層を直撃する自動車関連税の大きな問題は解消されない模様。
軽自動車税に関する重要な変更とは
2025年度から、自動車に関する税制度が変わる予定である。政府は「自動車税制の抜本的見直し」と称し、自動車税・自動車重量税・環境性能割の仕組みを変える方針を示している。
税負担が軽くなると期待する向きもあるが、内容を詳細に見ると、既存の課税構造が維持されており、一部には新たな負担増も含まれている。名目上の改革でありながら、実質的な増税を含む構成になっている。
令和7年(2025年)度税制改正大綱(2024年12月27日閣議決定)には、軽自動車税に関する重要な変更が含まれている。125cc以下の原動機付自転車に対して、一律2,000円の税金を課す方針が明記された。対象となる車両は、小型バイクとして通勤や通学で使われることが多く、利用者は学生、高齢者、低所得者層が中心である。
物価上昇が続く中、賃金が伸び悩む状況において、こうした層に負担を求める政策は不適切である。
自動車重量税についても、見直しは行われず、13年または18年を超えて使用された車に対する重課措置が継続される。新車の購入が困難な者や、長期間車両を大切に使用している者にとって、税負担が大きくなる制度である。政府は「環境負荷の低減」を根拠に制度を正当化しているが、排出ガス削減や燃費向上のための支援制度は乏しく、負担軽減と両立する姿勢は見られない。
環境性能割についても、制度全体の見直しや廃止には踏み込まず、既存の特例措置を延長するにとどまった。環境性能割は、消費税増税時の一時的措置として導入された経緯があるが、現在では恒常的な課税手段となっている。税率は燃費や動力源の種類により複雑に区分されており、納税者にとって理解しにくく、課税の公平性にも疑問が残る。
課税構造の簡素化と負担軽減を訴えている自工会
自動車所有者は、購入時、保有時、使用時のそれぞれで複数の税負担を強いられている。購入時には消費税や環境性能割、保有時には自動車税または軽自動車税と自動車重量税、走行時にはガソリン税や軽油引取税が課されている。税負担が重層的であり、制度は非常に複雑である。
重複課税の状態が続くなか、日本自動車工業会(自工会)は2024年9月に提出した要望書において、課税構造の簡素化と負担軽減を訴えている。環境性能割を廃止し、消費税に一本化すること、自動車税と重量税を統合することが求められている。両税は車両重量を基準に課税されており、課税根拠が重複しているという問題を内包している。
要望の核心は、税制度を簡素にし、車の購入・保有の負担を軽減することにある。だが、令和7年度税制改正大綱では、これらの要望が制度に反映された形跡は見られない。環境性能割は継続、自動車税と重量税の統合も実現されていない。税の簡素化ではなく、制度の維持と一部における負担増が目立つ内容である。
話が前に進まないガソリン税も重大な課題
自公国で減税が決まったものの、話が前に進まないガソリン税も重大な課題である。現在、ガソリン1ℓあたりには、本則税率28.7円に加え、暫定税率25.1円が上乗せされており、合計で53.8円の税負担が存在する。さらに、この税金を含んだガソリン価格に対して10%の消費税が課されている。税に対して再び税がかかる構造は、いわゆる二重課税であり、批判の根拠となっている。
政府はこの課税を、環境対策や道路整備のためと説明している。だが、実際に税収がどこに使われているのか明確な説明はなく、かつて道路整備専用であった税収は現在、用途が限定されない一般財源とされている。使途が不透明なまま税負担のみが維持されている状態が続いている。
地方自治体にも課税構造の維持を望む要因がある。自動車税や軽自動車税は地方税であり、地方自治体にとって安定した財源となっている。住民の自動車依存度が高い地域ほど、自動車課税を維持する動機が強くなる。自家用車を必需品とする地方において、課税強化が逆進的負担を生む構図となっている。
問題は税収の用途が不明瞭である点
政府や自治体は、課税を正当化する理屈として「環境負荷の内部化」を掲げている。環境に悪影響を与える行動に対してはコストを課すという考え方である。理屈としては一定の整合性を持つが、問題は税収の用途が不明瞭である点にある。環境目的で徴収した税収が、実際に環境保全に使われているとは限らない現状が存在する。
制度見直しの議論では、環境保護や地域活性化の文言が並ぶが、具体的な政策効果の検証は不十分であり、代替案も示されていない。導入時期や国民生活への影響についての説明が行われないまま、制度だけが先行して変更される構図となっている。
自動車は、地方での生活や通勤、育児、介護などに欠かせない存在となっている。自動車所有者の多くは、いわゆる「ぜいたく品」の利用者ではなく、生活必需品として使用しているのである。生存権がかかっているのだ。
『積極的な逆進性:貧乏人をより貧しくする「罪税」』(クリストファー・スノードン著、2013年)は、アルコール・燃料といった消費財に課される税金が、いかにして低所得者層を圧迫し、貧困を悪化させているかを明らかにした論文である。この「罪税」は表向きは健康や環境のためと言われながらも、実質的には政府が手軽に財源を得る手段となっている。とりわけ、自動車にまつわる税金──燃料税、自動車税、自動車取得税、重量税、さらに消費税──は、その悪質性において最たるものである。
燃料税の逆進性は極めて深刻だ
まず、燃料税の逆進性は極めて深刻だ。これは単にガソリン代の話ではない。日本においても、地方に住む人々や長距離通勤者、配送業に従事する人々など、生活や仕事で車を必要とする人々ほど、その負担は重い。車は「贅沢品」ではなく「生活必需品」であるにもかかわらず、課税は容赦がない。しかも、ガソリンには消費税が二重課税(本体価格+ガソリン税に対しての消費税)として上乗せされる仕組みになっている。
さらに、車を所有するだけで毎年かかる「自動車税」や「重量税」は、車の使用頻度や所得に関係なく一律に課される。これは、公共交通の便が悪く、車がなければ生活できない地方の住民にとってはまさに「罰金」に等しい。にもかかわらず、環境負荷の名のもとにこれらの税金が正当化される風潮がある。しかし、環境保護と税収確保が混同された結果、政策の本質は「弱者からの収奪」に変質している。
表向きは環境対策でも、実態は「取りやすいところから取る」
スノードンは、間接税の負担が低所得層ほど重くのしかかる「逆進性」の問題を指摘し、特に燃料税やたばこ税が貧困層の生活をさらに苦しめていると訴える。そして、その根底にあるのは「道徳的な懲罰」ではなく、財源確保という冷徹な意図である。車に対する課税もまた、似た構造を持つ。表向きは環境対策でも、実態は「取りやすいところから取る」ことに終始している。
このような車関連税制は、都市部に住む高所得層よりも、地方の低所得層に不利に働く構造的差別である。スノードンが指摘したように、政府が特定の財やサービスに対して「罪」のレッテルを貼り、高率の課税を課すことで、貧困層により重い負担を課している現状を放置してはならない。ましてや車のように、生活を支える手段にまで罰金的課税を課すことは、政策として破綻している。
結論として、車にまつわる税金は、「環境保護」や「道路整備費」といった名目を超えて、貧困層に重くのしかかる構造的な逆進税である。スノードンの論文を参考にすれば、こうした税制の見直し、特に燃料税や自動車関連税の大幅な軽減こそが、真の税の公平性を取り戻す第一歩であるといえよう。
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